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罪喰らいの聖女  作者: ジータ
第二章 最強聖女と偽りの聖女
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第1話 聖女会合

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 『聖女会合』。それは年に一度行われる全ての聖女が一堂に会するものとは違い、三ヶ月に一度行われるハルバルト帝国にいる五人の聖女を集めて行われる会合だ。

 その内容が外部に伝わることはない。だからこそ何も知らない贖罪官達はきっと人類の未来についての高尚な話し合いが行われているに違いないと聖女達への憧れをまたより一層強くするのだ。

 しかし、現実は常に非情なものだ。

 音が漏れないように【防音魔法】の施された部屋の中にいる五人の少女。その中の一人が勢いよく立ち上がり叫ぶ。


「なぁっっとくできませんわぁ!!」


 バンッと机を叩いて立ち上がったのは輝くような金髪を持つ美しい少女。聖女の一人であるミューラだった。相当怒っているのか、眦を吊り上げ紅い瞳に怒りの炎を宿してユースティア達のことを睨みつけている。その手に持っていたのは帝国の新聞社が出版している新聞だった。


「なんでわたくしの活躍がこんなに小さくて、あなた方の活躍は一面記事になっているんですの! 妬ましいですわ!!」


 ミューラが怒っていたのは帝国新聞の記事についてだった。ビシッと指さしたのはつい先日のユースティア達が魔人と戦った際の記事だ。大きく一面で取り上げられており、ユースティア達の功績について長々と称賛の言葉が書かれていた。そしてその記事と別のページに、小さくミューラの記事が書かれていた。ユースティア達と比べればあまりにも小さい記事である。そのことにミューラは怒っていたのだ。


「それを私達に言われても……書いたのは帝国新聞の記者の方ですし」

「あはは、だよねー。アタシ達が一面にしてーって頼んだわけじゃないもん」

「私は目立ちたくないからむしろ迷惑」

「迷惑ですって!? よくもまぁそんなことが言えますわね!」

「私はミューラみたいな目立ちたがりとは違う。必要以上に目立っても面倒なだけ」

「わたくしは目立ちたがりではありませんわ!」

「いや、十分目立ちたがりだと思うけど……そんなに一面記事が良かったの?」

「わたくしを差し置いてあなた方が一面記事を飾っているのが妬ましいだけですわ。わたくしだって任務で魔物を討伐し、咎人を救い、人々を救済したというのに。この扱いの差は妬ましさのあまり爆発しそうですわ」

「うわ、清々しいまでの嫉妬だね。同じ聖女なんだし、そこまで目の敵にしなくてもいいじゃん。仲良くやろうよ仲良く」

「お断りしますわ。わたくしは仲良しごっこをするために聖女をしているわけではありません。罪に苦しむ人々の救済、それこそがわたくしの使命。まぁ、その過程で名声を得られるならば悪い気はしませんけど。人々の称賛の声というのは心地よく嬉しいものですもの」

「ほんとミューラって自己顕示欲の塊だよね」

「欲の塊女」

「聞こえてますわよ」


 キッとフェリアルとカルラのことを睨みつけるミューラ。そしてミューラはそのまま視線をユースティアへと移す。キツイ視線を向けられてもユースティアはどこ吹く風といった様子で、のんびりお茶を飲んでいた。


「ユースティアさん。わたくしあなたにだって負けるつもりはありませんわよ。今はあなたの方が人気かもしれませんが、今に私があなたのことを抜いてみせますわ。人気も実力も含めて」

「それを私に言われても反応に困るのですけど……それに、私達聖女はどちらが実力が上かなんて比べる必要ないじゃないですか」

「いいえ、必要ありますわ。わたくし、あなたに負けたことまだ忘れてませんわよ」


 それはミューラが聖女になった直後のこと、自分こそが一番強いと思っていたミューラは当時から最強と謳われていたユースティアに勝負を挑み、完膚なきまでに敗北したのだ。その時の屈辱をミューラは一日も忘れたことはない。

 それ以来ミューラにとってユースティアとは超えるべき壁にして、ライバルなのだ。もっとも、そう思っているのはミューラだけでユースティアはミューラのことなど歯牙にもかけていないのだが。


「あなたのことだけは必ず超えてみせますわ」

「はいはい。ミューラ落ち着いて。せっかくの美人さんなのに怖い表情ばっかりしてたら損だよ? ほら笑顔笑顔。ティアだって笑顔の方がいいと思うよね?」

「えぇ、そうですね。ミューラの笑顔はとても魅力的ですから。私でも思わず見惚れてしまうくらいに」

「なっ!? あ、あなたにそんなこと言われても別に嬉しくありませんわ!」


 口ではそういいつつも、ミューラは顔を真っ赤にしているせいで全く説得力がない。ミューラはふんっとそっぽをむいて椅子に座る。ミューラのこうした態度はいつものことなのでユースティア達もすっかり慣れてしまっているのだ。

 しかし慣れていない人物が一人だけいた。聖女達の中で最年少のサレンだ。一年前に聖女になったばかりの十三歳の少女だ。聖女としての経歴も実力も、他の四人に比べてはるかに劣ることを自覚してる彼女はミューラの剣幕の呑まれてオドオドとしてしまっていた。


「ほらもう、ミューラが怖い顔してるからサレンが怖がってるじゃん」

「う……も、申し訳ありませんわ」

「い、いえ。サレンが怖がりなだけですから。ミューラさんが怒っているのなんていつものことですから、いい加減慣れないといけないことはわかってるんですけど」

「別にいつも怒ってるわけではありませんわ!」

「ひぅっ! ご、ごめんなさいです!」

「ほらほら。そういうとこだよミューラ」

「慣れないうちは確かにミューラのこと怖いかもしれませんね。カルラも最初の頃はミューラの事を怖がって——」

「怖がってない」

「そうでしたか? 最初の頃は怖がってずっと私かフェリアルの後ろに——」

「怖がってないから」

「ふふ、それじゃあそういうことにしておいてあげます」

「……わたくしそんなに怖いんですの?」

「そりゃミューラは迫力ある美人さんって感じだからね。怒った顔してたらそりゃ怖いよ。まぁでもサレンもそのうち慣れるよ。ミューラってこう見えて結構可愛い所あるからさ」

「そ、そうなんですか?」

「ちょっとフェリアルさん。サレンさんにあまり変なことを吹き込まないでくださいまし」

「ごめんごめん。あ、そうだ。サレンは最近どう? 聖女の活動には慣れてきた?」

「は、はい。少しずつですけど。贖罪官の方たちも優しいですし、仕事にも少しずつ慣れてきたです」


 サレンはハルバルト帝国の北側に位置するダバラル州を担当している。まだ聖女になってから一年しか経っていないということもあって、まだまだサポートが必要なのだ。


「そ、それの……その……」

「その?」

「聖女の仕事って想像してたよりもずっとお金貰えるですし、美味しいご飯食べれますし、やっててよかったなぁって思うのです。ふへ、ふへへ……」


 新米聖女サレン。その趣味は働いて稼いだお金を夜な夜な数え、貯蓄を増やしていくことと美味しいお菓子を食べることである。聖女を始めてから稼いだお金のことを思い出して、サレンは先輩達の前であることも忘れてニヤニヤと笑っていた。


「うわぁ……俗物的だぁ」

「俗物的ですわね。高潔であるべき聖女としては考えものですわ」

「はっ! ご、ごめんなさいです!」

「いいじゃないですか。私達も生活している以上お金は大事なものですし。それは私達聖女も同じですよ」

「ユースティアさん……」

「あー、何いい感じのこと言ってサレンちゃんの好感度稼ごうとしてるのさー、アタシもサレンちゃんの好感度稼ぎたい! サレンちゃん、このお菓子あげる!」

「く、先輩としての好感度までユースティアさんに負けるわけにはいきませんわ!」

「ふぇあっ?! そ、そんなにお菓子は食べれないですぅ!」

「あはは……しばらくは話し合いできそうにないですね」

「あほくさ……寝る……」


 こぞってサレンに詰め寄るフェリアルとミューラ。そんな二人を見てユースティアは苦笑し、カルラは呆れて眠り始める。

 外では高尚な話し合いが行われていると思われている『聖女会合』。その実態はただの雑談に近いものであることを世の人々は知る由も無かった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!



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