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罪喰らいの聖女  作者: ジータ
最強聖女と従者の秘密
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第33話 魔人の最期

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 それは十年前の記憶。レイン・リオルデルの始まりの記憶の、その続きだ。村が魔人に襲われたあの日レインの人生は一度終わっている。

 魔人や魔物に襲われ満身創痍だったレインはあまりに多くの血を流し過ぎていた。ユースティアの手により、緊急措置を施されたもののレインの傷を治しきることはできなかったのだ。どんどんと意識が朦朧となっていくなかで、ユースティアは悩んだ末に苦渋の決断を下した。

 それが、レインを魔人化させるということ。魔人化によって身体能力を向上させ、傷を癒すという手段。しかしそれは禁忌ともいえる手法だ。成功するかどうかもわからないなかで、ユースティアはレインの魔人化を実行した。

 薄れゆく意識の中で、レインはユースティアの言葉を聞いていた。


「ゆるせとは言わない。恨んでくれてかまわない。でも、それでもお前は生きるべきだ。だから私はお前を救う。これからさき、ずっと、お前の罪は……私のモノだ」


 そこで一度レインの意識は途絶えた。そして次に目を覚ました時にはもうレインの体は半人半魔とも呼べる体になってしまっていたのだ。

 レインは奇跡的に一命をとりとめた。しかしその代償として魔力が使えなくなり、そして誰かにバレれば人生が終わりかねない秘密を手にしたのだ。





□■□■□■□■□■□■□■□■□


「ん……」


 少しずつ浮上してくるレインの意識。ひどく懐かしい夢を見た気がしながら、レインはゆっくりと目を開く。そして目にしたのは、間近にあったユースティアの顔だった。


「っ!?」


 驚愕に目を見開くレイン。長い睫毛が一本一本ハッキリ見えるほど近くにユースティアの顔が近くにあった。そしてそれだけではない、レインの口を覆う柔らかい感触。レインはユースティアのキスされているのだという現実を認識した。

 目を白黒させながら慌ててユースティアから離れようとするが、ユースティアの圧倒的な力でがっちり抑えられているせいでそれもできない。

 それからどれほどの時間が経っただおうか。十秒程度だったかもしれないし、一分ほどだったかもしれない。どちらにせよレインにとっては永劫に感じるほどの長さだった。

 ユースティアの唇の柔らかさやほのかに感じる甘さ。それと同時に体の中から何かが吸われるような感覚。


「……ぷはっ」


 少ししてユースティアがレインから口を離す。狼狽しているレインとは対照的にユースティアはレインのことをジッと見つめていた。


「な、なんだよティア」

「……ふん、その様子だとやっと正気に戻ったみたいだな」

「正気? ……って、あ、そうだ! 魔人は! つぅ」


 慌てて起き上がろうとするが、全身に痛みが走って上手く起き上がることができない。


「無理するな。魔人化して無理に体を酷使したせいで全身筋肉痛になってるだろ。封印ついでにある程度治したけど、それでも反動は完全には無くなってないはずだ」

「そっか魔人化……それで俺にキスしてたのか」

「はぁ? キスじゃない。封印だ。一緒にするな。そうするしかなかったからあぁいう手段を使っただけだ。それを勘違いするなバカ、馬鹿、大馬鹿め。あれだけ使うなって言ったのに」

「それは悪かったけど……で、でもしょうがないだろ。そうしないと皆のことを守れなかったんだから」

「それでも力に呑まれてたら意味がないことはレインが一番よくわかってるはずだぞ」

「……悪かったよ。ティアの言う通りだ。また迷惑かけた」

「ふん、私は寛大だからな。許してやる。それにお前が暴走した時に止めるのは私の役目だ」

「できればもう少し別の手段があると助かるんだけどな。心臓に悪いから……って、そうじゃなくて、魔人だよ魔人! あいつはどこにいった!」

「あそこでボロ雑巾みたいに転がってる奴のことか?」


 ユースティアが指さした先にはケルジィが倒れていた。レインとユースティアの戦いの余波に巻き込まれたのか、吹き飛ばされて転がり、まさしくボロ雑巾のようになっていた。


「死んでる……のか?」

「……いや、まだだな。いつまでそうやって狸寝入りしてるつもりだ? それともそうやっていれば私の目を誤魔化せると本気で思ってるのか? まぁそのままいるならそれでもいい。そのまま死ね」


 ユースティアは躊躇なく銃の引き金を引く。弾丸がケルジィに直撃する直前、バネのように飛び上がったケルジィは高速で動き、ユースティアの弾丸を避ける。


「あーあ。残念。誤魔化せるかなーなんて期待してたんだけど」

 

 起き上がったケルジィは口元の血を拭うとニヤリと笑う。レインのつけた傷はほとんど治っているようで、胸にぽっかりと空いていた穴もすでに塞がっていた。


「その割には殺気を隠せてなかったぞ。あれで隠せてると思うならお粗末な話だな」

「ふぅーん、じゃあ聖女サマは気付いてたってわけだ。僕が起きてることに。それなのに放置して僕に怪我を治す時間をくれたんだ。聖女サマは人間だけじゃなくて魔人にも優しいってことかな? まぁそんな魔人もどきみたいな人間を従者にしてるほどだしね。人類の希望である聖女サマの従者が魔人でした、なんてスキャンダルだよねー。もしこれが世に知れたらどうなるか……想像するだけで笑えるよ」

「レインは魔人じゃない。れっきとした人間だ。ただちょっと魔人の力を使えるだけのな。それにしてもお前はその魔人もどきにボコボコにされたわけだが……どんな気分だ? 取るに足らないと思ってた人間に、あっさり負けた気分は」

「まだ負けたわけじゃない」

「いいや、お前は負けた。レインに、カラ達にな」

「なんだと」

「お前の勝利条件は私が来る前にレイン達を殺すことだった。だが現実はどうだ? お前はカラ達を殺せず、レインにいいようにやられた。殺せるチャンスは何度もあったはずなのに、お前はことごとくチャンスを逃し続け、こうして無様に敗北した」

「まだ負けてないって言ってるだろ!」


 激昂して叫ぶケルジィだが、ユースティアはどこまでも冷ややかだった。


「いいや負けてる。こうしてここに私がたどり着いた時点でお前の負けだ」

「うるさい、うるさいうるさい!」

「お前みたいな弱い魔人がどうしてこんな成功な影の世界を構築できるのか不思議だtったんだが。そうか、その手に付けた道具か。お前に興味はないが、その道具には興味がある。もらうぞ」

「お前お前って……僕はケルジィだ! お前なんて名前じゃない!」

「お前はお前で十分だろ。名前なんて覚える価値は無い」

「お前ぇ!」

「うるさい」


 ユースティアはケルジィの言葉をにべもなく切り捨てる。そのユースティアの目が、ケルジィの自尊心を激しく傷つける。


「私はもうお前に興味がない。終わりにしてやる」

「どいつもこいつも僕のことを馬鹿にして……僕は僕だ! 僕だって役に立てるんだ!」


 ケルジィが再び魔物化する。全てを破壊しつくしてやろうと残りの力の全てを振り絞った魔物化だ。この場にいる全てを破壊するという意思を持ってケルジィはユースティアに向けて突進してくる。巨大な鉄の塊が突進してくるようなものだ。しかしユースティアに焦りなど全くなかった。


「怒ってしてくるのがただの突進だけ。芸がなさすぎるな」

「ガァアアアアアアアッッ!!」


 ケルジィは確かにユースティアに向かって突進した。人間には防げるはずもない速度と威力だと思っていた。しかし、次の瞬間にはケルジィは壁に叩きつけられていた。


「ガ、ハッ……」


 理解が追い付かない。許容を一瞬で超えたダメージにケルジィの魔物化が一瞬で解ける。地面に倒れ伏すケルジィは起き上がろうとするが体が上手く動かなかった。


「な、なんで……」

「レインに勝てなかったお前が私に勝てるわけないだろ。つまらん、全く持って面白くない。久しぶりの魔人だから期待したのに。この程度の小物だとはな」


 剣を一振りするだけで巻き上がっていた土煙を吹き飛ばし、呆れた顔をしながらユースティアが近づいて来る。


「く、そ……」


 勝てないと判断したケルジィはその場から逃げることを決意する。レイン達をこの影の世界に引きずり込んだ時と同じように、影の中に逃げようとするケルジィ。しかし、その体は不意に動かなくなった。


「逃げようとしても無駄だぞ。種がわかれば対処もしやすい。お前はもう逃げられない」

「ひっ……」


 ゆっくりと近づいて来るユースティアの姿が死神のように見えて、ケルジィは引きつったような声を出す。必死にもがいて逃げようとするが、ユースティアによって拘束された体はビクともしない。


「あ、ぁ……」

「お前に救いは訪れない。私達に手を出したことを後悔しながら終われ」

 

 無慈悲に告げたユースティアに両断され、ケルジィの命はあっさり刈り取られるのだった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!

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