第26話 レインvsグラトニータイガー
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
時は少し遡り、レインとフォールがカラを探していた時のことだった。
グラトニーシャドウの群れを切り抜けたレイン達だったが、状況が改善されたわけではなくむしろ他の魔物がどんどんとその姿を現すせいで思う様に進めないでいた。
「くそっ、フォール! 俺からあまり離れるなよ!」
「は、はい!」
この場所にやって来た当初とは打って変わって怒涛のように押し寄せてくる魔物の群れ。先ほどのグラトニーシャドウだけでなく、普通のゴブリンやコボルドなどの低級の魔物も多くいた。本来ならば避けて通りたいのだが通路の広さゆえにそれも難しい。このままではジリ貧なのは明白だった。
(《紅蓮・双牙》の弾数には限りがある。今はまだ余裕があるけど、この先のことを考えたら弾は温存しておきたい。こうなったら多少強引にでも押し通るしかない)
自身の持つ弾丸の残弾数とこの後の状況を考えたレインは魔物の壁が薄い場所を狙って一点突破することに決める。
「フォール、右側の魔物の群れを無理やり突破する。ついて来い!」
「わかりました!」
「お前らいい加減しつこいんだよ。少しの間大人しくしてやがれ! 【怠惰】!」
レインは【怠惰】を魔物達に向けてではなく、魔物達の足元の地面に向けて撃つ。そして弾丸が地面に着弾すると同時、魔物達の動きが一斉に静止する。まるで縫い留められたかのように。
「今の内だ、抜けるぞ!」
レインとフォールが動きの止まった魔物達の頭上を飛び越える。そんなレイン達のことを追いかけようとする他の魔物達だが、動きが止まった魔物が邪魔をして上手く追いかけることができないでいた。
「お前らはそこで止まってろ!」
魔物を飛び越えたレインは【暴食】を使って天井を撃ち、崩壊させる。天井から落ちてくる瓦礫に押しつぶされる魔物達。それだけではなく、その瓦礫でさらに道を塞ぐことに成功する。
そうしてレイン達は魔物の群れを切り抜け、脱出することに成功するのだった。
「はぁはぁはぁ……ここまでくれば大丈夫だろ」
「そ、そうですね……」
必死に走り続けたせいでレインとフォールは肩で呼吸するほどに疲弊していた。特に魔物と戦い慣れていないフォールは精神的疲弊も相まってかレイン以上に汗を流していた。
(無理もないか。まだ魔物と戦うのは二回目で、助けも望めないこの状況で戦い続けてるんだから。むしろよく持ってるほうだ。普通ならとっくに折れてても不思議じゃない。本当なら休憩させてやりたいところだが……そんな余裕もないか)
「フォール。疲れてるところ悪いけどもう移動するぞ。ここで止まっててもまた魔物に追いつかれるだけだ」
「は、はい……大丈夫です。いけます」
フォールは無理やり呼吸を整え、レインの後に続く。
「また魔物の群れに囲まれたら面倒だ。そうなる前にカラ達のことを見つけたい」
「そうですね。でもこの状況じゃどこにいるかなんてわかりませんよ。ここがどれだけ広いかもわかりませんし」
「そう。それが問題だ。このまま闇雲に探してても一生見つからない。何か手がかりになるようなものがあればいいんだが……」
「カラ、ユミィちゃん……」
「心配なのはわかるけど焦るなよ。俺達が焦ったらそれこそ見つかるものも見つからない」
「はい」
(とはいえどうするか……俺達じゃ探索手段がない。ティアがいたら話は早かったんだけどな……いや。この場にいない奴に頼ろうとするな。俺がしっかりしないでどうする)
無意識にユースティアに頼ろうとした自身の心の弱さを叱咤するレイン。レインは冷静に物事を判断しなければいけない立場にあるのだ。自分の頬を軽く叩くと、レインはカラ達を見つける方法を考えようと頭を働かせる。その時だった。遠くから爆音が鳴り響く。
「っ! 今の音は」
「きっとカラです! カラの持ってた爆音石だと思います!」
「爆音石か。なるほどな。ってことはカラはあっちにいるのか! 急ぐぞ、今の音で他の魔物もあっちにあつまりだすかもしれない!」
「はい!」
レイン達に聞こえたということは周囲を動き回っているであろう他の魔物にも確実に聞こえている。爆音石を使ったということは何かと交戦中の可能性が高く、そんな状況で他の魔物達がカラのところにたどり着いてしまったらそれこそ最悪の事態だ。レイン達は他の魔物よりも早くユースティアのいる場所にたどり着かなければいけないのだ。
そして音のした方向へと走り出すレインとフォール。そして案の定というべきか、レイン達の向かう先に魔物達が向かっているのを見つけた。
「くそ、あれに先にいかせるわけにいくか! 【怠惰】!」
先を行く魔物達の群れに向けて【怠惰】を放つレイン。動きが止まった隙に【暴食】を撃ち、群れに隙間を作る。その合間を縫ってレインとフォールは先へ進む。
音がした方に近づくにつれて、何かが暴れるような激しい音と唸り声が響いて来る。
「ここだ、開けるぞ! 構えとけ!」
音のした部屋にたどり着いたレインは、その部屋の扉を蹴り開ける。そうして目にしたのは、巨大な虎——グラトニータイガーに食われそうになっているカラの姿だった。
「【嫉妬】!」
とっさに【嫉妬】の弾丸を放つレイン。その弾丸はグラトニータイガーの目を穿ち、グラトニータイガーは狂ったように叫び声を上げる。
「大丈夫か、助けに来たぞ!」
「カラ、無事か!」
部屋の中に飛び込んだレインとフォールは素早くカラとグラトニータイガーの間に割って入る。
「フォール、こいつは俺がなんとかするからカラを連れて隣の部屋に行け!」
「わかりました!」
傷だらけのカラを見てこれ以上の交戦は不可能だと判断したレインは穴の開いた壁を見て、隣の部屋へ行くように指示する。追いかけようとしたグラトニータイガーだったが、その前にレインが立ち塞がる。
「よう。俺の後輩をずいぶん可愛がってくれたみたいだな」
「グルルルゥ……」
「今度はこっちの番だ。かかってきやがれ猫野郎!」
「ガァアアアアアアアッッ!!」
言葉がわからずとも、挑発されていることは理解したグラトニータイガーは怒り狂ってレインに襲いかかる。
「動きが単純なんだよ! おらっ!」
怒り狂って動きが単純になっているグラトニータイガーに弾を当てることはそう難しくない。レインは攻撃を避けて、至近距離で【暴食】を撃つ。しかしカラのナイフを圧し折ったように、グラトニータイガーの表皮の硬さは尋常ではなく、【暴食】も弾かれてしまった。
「くそ、硬すぎだろお前。こっちは銃使ってんだぞ」
予想以上の硬さにレインは舌打ちしつつ、グラトニータイガーの反撃を躱す。表皮で弾丸が弾かれてしまった以上、無駄撃ちしても意味は無い。【暴食】の攻撃力では足りないということをレインは理解した。【暴食】以上の攻撃力を持つのは【傲慢】と【憤怒】だけだ。しかし【憤怒】も【傲慢】も威力が高すぎて部屋の中で放つには向いていないし、反動も大きい。
(さっき【嫉妬】が効いたのは目を撃ったからか。全部硬いってわけじゃないんだな。目とか一部は柔らかいってことだ。ならその部位を狙うしかないってことだ)
戦い方を決めたレインは左側の銃に【嫉妬】を、右側の銃に【暴食】の弾丸を詰める。滅茶苦茶に動き回るグラトニータイガーの目だけを狙うというのは難しいが、【嫉妬】を使えばその難易度はぐっと下がる。魔物を追尾するという効果を持つ【嫉妬】の弾丸だが、効果はそれだけではなく使用者の狙った箇所に着弾するという効果もある。それを使えば目を狙うのは簡単なのだ。
レインはグラトニータイガーの目を狙って【嫉妬】を放つ。奇妙な軌道を描きながらも、その弾丸はレインの狙い通り狂いなく目を穿つ。これでグラトニータイガーは両目を失った。痛みと視界を奪われたことに対する怒りでさらに暴れるグラトニータイガーだが、見えていないため避けるのは造作もない。
「目を失ったら今度は嗅覚に頼る。嗅覚で俺の位置を探り、お前は攻撃を仕掛けてくる」
レインの言葉通り、グラトニータイガーは嗅覚でレインの位置を探り攻撃を仕掛けてくる。しかし、見えていないせいかその動きはさきほどまでよりも遅かった。なかなか攻撃が当たらないことに業を煮やしたグラトニータイガーは噛みつこうとレインに飛び掛かって来る。それこそがレインが狙っていた瞬間だった。
「跳んでる瞬間なら、避けれないだろ」
レインが狙ったのは口の中。大口を開けているからこそ狙うのは簡単だった。
レインの放った【暴食】がグラトニータイガーの口の中で炸裂する。その一撃で、グラトニータイガーの頭が消し飛び、散る。
「お前がもっと賢かったらこんなに簡単には勝てなかったんだろうけどな」
物言わぬ骸となったグラトニータイガーのことを一瞥して、レインはフォール達のもとへと向かうのだった。
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