第23話 レインとフォール
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「っ……くそ、どこだここ……」
「うぅ……」
陰の中へと引きずりこまれたレイン達。そうしてたどり着いた先は全く見たことのない場所だった。どこまでも続く一本道。高い壁には窓も隙間もない。レインが軽く壁を叩いても、返ってきたのは固い感触だけだった。
「これじゃあ壁を壊すのも無理か。どこなんだここ……この廊下のでかさとか城に似てるけど。ここまでボロボロじゃなかったしな」
壁を壊して脱出する、ということを考えたレインだったがこの壁の硬さではそれもできそうにないとため息を吐く。
「……レ、レインさん……」
「フォール大丈夫か!? どっか違和感ある部分とかないか?」
「それは、大丈夫です……で、でも……ここは? なんですかこれ」
朦朧としていた意識を晴らすように頭を振りながら起き上がるフォール。周囲を見渡しながら先ほどまでとは一変している景色に驚きを隠せないでいる。
「俺にもわからない。影に吸い込まれて気付いたらここだ。場所も時間も、何もかもわかってない。見た所どっかの建物の中だとは思うんだけど……っておい、ちょっと待て。カラとユミィはどこだ」
「え? あ、い、いないっ!」
「探せっ!」
カラとユミィがいないことに気付いたレインはフォールと一緒に周囲を捜索するが、影も形も見当たらない。
「くそっ、どこに行ったんだ。さっきまで確かに一緒にいたはずなのに」
「まずいですよレインさんっ! もし二人があの魔人に狙われてたりしたら……」
「わかってる! 考えろ……考えろ俺。後で二人を守れませんでしたじゃ話にならないぞ」
焦って対策を考えるレインだが、焦れば焦るほどに思考は狭まってしまう。しかし迷っている時間も無い。こうしている間にもカラとユミィが魔人に狙われているのかもしれないのだから。
「とにかくここに居てもしょうがない。あの二人を探して動くしかない」
「わ、わかりました。それじゃあ俺は反対側を——」
「ダメだ! こんなわけもわからない状況で一人で行動していいわけないだろ。一人になる瞬間を狙われてる可能性だってあるんだ」
「で、でもこうしている間に二人に何かあったら……オレは、オレは……」
「……大丈夫、とは言い切れないが、その可能性は低いと俺は思ってる」
「どうしてですか?」
「もしあの魔人が俺達を殺す気なら……いや、殺す気なんだとは思うけどな。でもすぐには殺さなかった。悔しいが、あの魔人と俺達との実力差は明白だ。それはわかるだろ」
「は、はい……見ただけでわかりました。あの寒気がするくらいの殺気……オレとカラが戦った魔物なんかとは比べ物にならなかったです」
「そうだ。比べ物にならないくらい強い。あいつが俺達をすぐに殺す気ならもう終わってた。つまり、遊ばれてるんだ。俺達は」
「遊ばれてる? あの魔人にですか?」
「あぁ。格下の俺達のことを玩具だと思ってるんだろうよ。でもだからこそ俺達にもチャンスはある。あの二人を見つけ出して、ここから逃げる。それが俺達の勝ち筋だ。」
「でも二人がどこにいるかもわからないですよ」
「そこで焦るのをあいつは見てるんだろうよ。二人がまだ無事なら一緒に行動してるはずだ。その時に俺とフォールが分かれて動いてたらまた探さないといけなくなる。だからこそ俺達は一緒に行動しないといけないんだ」
「なるほど……そうですね。すみません、焦ってました。レインさんの言う通りです」
「いや、俺も冷静さを失いかけてたからな。悪い。こんな時こそ俺がしっかりしないといけないのにな」
「そんなことありません! 俺一人じゃきっと焦って無茶苦茶に動いてただけだった。レインさんが一緒に居てくれて心強いです」
「はは、そう言ってくれると嬉しいよ。っと、このままここに居ても時間がもったいない。探しに行くぞ」
「はい!」
カラとユミィを探して歩き出すレインとフォール。薄暗い道のりを周囲を警戒しながら歩く。急いで二人のことを探したいレインだが、それで焦って相手の罠にかかっては本末転倒だ。ここは相手の領地。地理的有利など全くないレイン達は慎重に慎重を重ねて行動するしかないのだ。
「あの……レインさん、聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「なんだ? こんな状況だから手短にな」
「はい。こんな時に聞くことじゃないのはわかってるんですが、その……オレの先輩がレインさんのことを嫌っていたので……どうしてなのかと思いまして」
「ずいぶん直球で聞いて来るなぁ、おい」
「す、すみません……」
「……まぁいいけどよ。本当だよ。俺は同僚の贖罪官からは嫌われてる」
「……本当のことなんですね。でもどうして」
「俺は魔無しだからな」
「え? そんな、そんなはず。だってレインさんは魔物を倒してたじゃないですか!」
魔無し。魔力を持たない者達の総称だ。魔無しは悪いことではない。むしろ魔無しの人間の方が総数としてははるかに多い。しかし贖罪官となれば話は別だ。魔物を倒すには魔力が必要不可欠だ。魔法で攻撃する。魔力を身に纏って攻撃する。方法は様々あれど、魔力を使わない方法は存在しない。だからこそ魔力を持たない者は贖罪官になれないのだ。普通であれば。しかしレインは魔力を使えないにも関わらず贖罪官になった。それが反感を買う始まりだった。
「確かに魔力が無かったら魔物は倒せない。でも魔無しでも魔物を倒す方法はある。これを使えばな」
そう言ってレインが取り出したのは魔蓄石。ナミルに入る前、魔物と戦った際にも使った魔石の一種だ。
「それ、もしかして魔蓄石ですか!?」
「そうだ。これを使えば魔力を持たない人でもこの石に蓄積された魔力を使って色んなことができる。それこそ戦ったりもな」
「で、でもそれ……めちゃくちゃ高いって……」
「そう高い。この大きさの魔蓄石なら平民の給料一ヶ月分が余裕で吹き飛ぶ。これが俺が嫌われる理由その二だ」
「どういうことですか?」
「俺は前の戦いで、この石を四つ使った」
「四つも!?」
「普通に魔力を持ってたらこんなの使う必要はない。ただ高いだけの嗜好品。それが魔蓄石。それを使ってまで大して強くもないのに魔物と戦う。そんな奴がいたら嫌だろ。金と資源の無駄遣いだって何回も言われたよ。しかもこの金は俺が出してるんじゃない。ユースティア様のお金だ。だからこそ嫌われる。なんでお前ばかりユースティア様にってな」
「それは……」
「気を使わなくていいって。俺だって同じような境遇の奴がいたらそう思う。無理は無いって話だ。従者に選ばれたことをそれに拍車をかけてるんだろうな」
「……ですが、ユースティア様はレインさんのことを信用しています」
「っ!」
「短い間ですが見ていてわかりました。ユースティア様はレインさんのことを心から信頼しています。すごいことだと思います。だからこそ、オレにとってレインさんは尊敬すべき先輩です」
「……ありがとよ。それじゃあなおのこと、ユースティア様からの信頼に応えられるように頑張らないとな」
「はいっ!」
「あんまり大きい声出すなよ。もしなにかいたら——っ! フォール、構えろ」
「は、はいっ」
嫌な気配を感じたレインがフォールに警戒するように指示を出す。互いの背中を守るようにして周囲を警戒するレインとフォール。しかしどれだけ待っても何も起きない。だからこそフォールは気を抜いてしまった。その一瞬を待ちわびていた存在がいることに気付かずに。
「な、何も起きな——」
「っ! そこを退けフォール!」
とっさにフォールのことを突き飛ばすレイン。その直後だった。壁の中から魔物が飛び出してくる。とっさに剣で応戦するレインだが、反応が遅れてしまったせいで剣身を食われてしまう。その魔物の名はグラトニーシャドウ。影と影を移動することができる魔物。壁に映る影に潜んでいたのだ。レインの剣を食ったグラトニーシャドウはそのまま再び影の中へと戻る。
「こいつ、剣食いやがった!?」
「レインさん!」
「気をつけろ! もう近くにいるぞ」
「わかりました!」
レインの言葉で立ち上がり、再び周囲を警戒するフォール。しかしグラトニーシャドウは再び隠れてしまったせいでどこにいるかもわからない。
(くそっ、この状況で剣を奪われたのは痛い。かといってフォールの剣を借りるわけにもいかない。こうなったら使うしかない。使いたくないなんて言ってられる状況じゃない。こんな所でやられるわけにはいかないんだ)
「レ、レインさんっ、武器が!」
「大丈夫だ。武器ならまだある。影に引きずりこまれた時に落とさなかったのは幸運だった」
魔物と戦った際、使わなかったレインの武器。それを使うことをレインは決意する。
「使わずに済むならそれが一番だったんだけどな。そんなことを言ってる場合でもない。使わずにやられたら死んでも死にきれねぇ。行くぞ——」
「そ、それは……」
レインが取り出したのは二挺の銃。血のように赤い真紅の銃身。そこに牙を思わせるような装飾が施されている。見ている者を引き込むような、不思議な魅力のある銃だった。
「——《紅蓮・双牙》。さぁ、狩りの時間だ」
ユースティアと同じような笑みを浮かべ、レインはそう宣言した。
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