第22話 魔人の少年
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
ユースティアがリエラルトの屋敷に行った後、レイン達は服屋へと向かっていた。
「だいたい私は女の子だぞ。こんな服普通買ってこないだろ」
「だから、悪かったって。それでも一応お店の人に聞いたんだけどな……」
「なんて言ったらこんな服おススメされるんだよ!」
「えーと、とりあえず十歳くらいの子供に着させる服ないですかーみたいな感じで」
「もしかしてそれ、売れ残りの服を進められたんじゃ……」
「えぇ!?」
「絶対そうじゃねーか! 少し考えればわかるだろ! この馬鹿!」
「ユ、ユミィちゃん。あんまり失礼なこと言っちゃダメだよ。ダサくても」
「そうだぞユミィ。まずは感謝だ。服を買ってきてくれたことを感謝しなければいけないんだ。ダサくても」
「お前らもダサいって思ってんじゃねーか!」
少しずつではあるが、レインとカラ、フォール達は打ち解けつつあった。同年代から嫌われているレインとしては普通に話してくれるだけでも、ありがたい存在なのだ。
そうして気を抜いてしまったせいで、レインは近づいて来る存在があることに気付くことが出来なかった。
「ずいぶん楽しそうだねぇ~。こんな状況なのにさ」
「っ!!」
反射的に振り返ったレインだが、そこには誰もいない。
「反応が遅いよー。それで聖女の従者できるの?」
その声は再びレインの後ろから聞こえた。持っていた剣を抜き放ち声のした方向へ振ったレインだが空を切るだけだ。
「あぁ怖い怖い。いきなり剣を振って来るなんて。怪我でもしたらどうするのさ」
「レ、レインさん! 急に何を」
「気をつけろ! 何かいる!」
「え?」
「カラはユミィを守れ。フォールは周囲の警戒!」
「「は、はいっ!」」
「ユミィちゃん、こっち」
レインがとっさに出した指示に、緊急事態だということを理解したカラとフォールは指示された通りにユミィを守り、周囲を警戒する。
「いい判断だねぇ。気付くのが遅すぎて話にならないけど。まぁいいんじゃない」
「っ! お前は……」
陰からにじみ出るようにして現れたのは黄金色の瞳を持った少年。見た目だけはユミィとさほど変わらない年齢に見える。しかし、その体から放たれる圧力は本物だった。見ているだけで体が芯から冷えてくるような感覚。
「この感覚……魔人!」
「あはは、せいかーい。でもちょっとストップね」
「お、お前……この間の……」
「久しぶり、ユミィちゃん。また会ったねぇ」
圧倒するほどの威圧感を与えながらその態度はどこまでも普通。それがなおのことレイン達に恐怖を与える。動こうとするレインだが、どういうわけか足が一歩も動かない。それはフォールも同じようで、必死に体を動かそうとしているが全く動かせていない。
(この……なんで動けないんだ。動け、動けっ!)
「無駄だよ。聖女ならともかく、ただの人でしかない君達じゃこの呪縛は解けない」
「このっ……」
「あはは、もがくねぇ。でも君達は後でいい。今はそこの二人だ」
「ひっ……」
「さ、さがってユミィちゃん!」
「逃げるな」
「っ、カラ! 武器を——」
「抵抗していいの? こんなに、人が多い所でさ」
「っ!」
そう言われてレインは周囲を見渡す。そこにいるのは何も知らない普通の住人達。もしここでレイン達が暴れれば周囲の住人も無事ではすまないだろう。
「ね? その気になればここにいる全員を殺すことくらいわけないんだよ。でもそれをしないのはひとえに僕の優しさなわけ。だからさぁ……大人しく、しろ」
それはケルジィからの命令だった。しかしその命令にレイン達は逆らうことができない。下手に抵抗してケルジィが暴れ出せばそれこそレイン達では止めようがないのだから。
「はーい。そうそう。それでいいの。それじゃあ四名様ごあんな~い」
「うっ! なんだこれ!」
「足が……沈むっ!」
「カラ、ユミィを離すなっ!」
「は、はいっ!」
とっさにユミィに手を掴むカラ。しかしそれでも沈むのが止まるわけではなく。必死の抵抗もむなしく、レイン達はケルジィの生み出した陰へと吸い込まれてしまうのだった。
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「伏せなさいっ!」
『傀儡操』によって操られている使用人はユースティアの声に従って体を伏せる。ユースティアはそれに合わせて銃を撃つ。続けざまに三発。それだけで使用人に襲い掛かろうとしていた魔物を仕留めた。
ユースティアが魔物と交戦を初めてからすでに二十体以上の魔物を倒していた。
「あまりにも数が多すぎる。どれだけ罪が深ければこれだけの数を生み出せるんですか」
罪が深ければ深いほどに魔物の数は増え、その力は増していく。ユースティアが相対した魔物達は今まで戦ってきたなかでも上位に入るほどの強さだった。
「それでも私の敵ではないですが……このまま生み出し続けられるのは面倒ですね。こうなったら元を叩くしかない」
このまま客室で戦い続けていてもキリがないと判断したユースティアはその元を叩くことを決断する。
「仕方ないですね……こっちに集まってください」
『傀儡操』で使用人を一か所に集めたユースティアは【防護魔法】をその場に展開する。
「これでしばらくは大丈夫でしょう」
使用人達の安全を確保したユースティアは魔物の発生源へと向けて走り出す。
「ちっ、外はまた魔物だらけだな」
部屋の外にいたのは廊下にひしめく魔物、魔物、魔物。右を見ても左を見ても魔物だらけだった。
「グラトニー系統、咎人は暴食堕ちした奴か」
「ルゥアアアアアアッッッ!!!」
「ギシャアアアアッッ!!」
「喚くな。あいにくと、貴様らに付き合っている時間は……ない!」
『失楽聖女』を手に駆け出すユースティア。先ほどまでは使用人がいたため威力の高い攻撃は控えていたが、一人になってしまえば関係ないとニヤリと笑う。
「私の展開した【防護魔法】はお前達の攻撃から守るために使ったんじゃない……私の攻撃から守るために展開したんだ。さぁ血の雨を降らせろ!——『血雨銃奏』!」
『失楽聖女』。漆黒の銃と純白の剣からなる武器。その漆黒の銃が司る能力は《加速》と《減速》。撃った銃弾の速度を上げる、下げる。それだけじゃなく自分自身の速度を上げることも相手の速度を下げることも可能。レインはこの能力を知った時「反則すぎるだろその能力!」と叫んだほどだ。
『血雨銃奏』はその能力を使い、撃った銃弾の速度を限界まで下げ連射。そして銃弾が溜まったところで今度は逆に限界まで速度を上げる。そうすることであらゆる方向から襲い来る銃弾の雨を降らせる技だ。
ダレンですら避けることが出来なかった技。それを図体がでかい魔物が避けれるはずもない。無数の銃弾が魔物に襲い掛かり、魔物達が悲鳴を上げる。
「あはははははっ! いい悲鳴だ! もっと聞かせろ。もっと私を楽しませろ有象無象!」
魔物の群れに飛び込んだユースティアは右から襲い来る魔物を斬り、左から襲い来る魔物を銃で撃ち倒す。絶え間なく襲い来る魔物の群れ。それを見てユースティアは心底楽しそうに笑う。
「私のことが喰いたいか? 私の力が欲しいか? ならもっと足掻け! そして——」
連携をとろうとしたわけではないだろう。しかし結果としてそうなった。魔物達は飛び込んできたユースティアを囲み、一斉に飛び掛かって来る。それでもユースティアは笑顔を崩さない。
「私に喰われろ」
剣を一閃。それだけで魔物達は消しとんだ。跡形もなく。まるで最初から存在していなかったかのように。
ユースティアの攻撃範囲から逃れていた魔物達は近づいて来るユースティアに怯えたように後ずさる。
「どうした? こないならこっちから行くぞ!」
そこから始まるのは戦いではなく、一方的な蹂躙だった。ユースティアの視界に入った魔物は撃ち抜かれ、隠れた魔物は斬り裂かれた。ユースティアの通った後に生きていた魔物は一体もいなかった。
そうして魔物の群れを切り抜けたユースティアは咎人のいる部屋へとたどり着く。
「ここか。後は咎人を浄化すれば……って、なんだ……これ……」
部屋の中に入ったユースティアは一瞬言葉を失った。
部屋の中に散乱している大小さまざまな骨。それが何の骨であるかなど、考えるまでもなかった。
「ウゥウウウ、アァアアアアアッッ!!」
その部屋の中心に咎人はいた。ただ、その咎人は普通ではなかった。様々な箇所に肉が張り付き、一つの巨大な肉塊になっていた。その中心に咎人は捉われていた。
ユースティアの存在に気付いた咎人が叫び声を上げると、肉塊の一部が剥がれ落ち、グニョグニョとその形状を変化させる。
「気持ち悪いものを……だが、咎人がいるなら私のやることは変わらない。お前の罪は……私が喰らう」
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