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罪喰らいの聖女  作者: ジータ
最強聖女と従者の秘密
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第13話 最悪の邂逅

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 昼食を食べに向かったレインとユースティアは人で賑わっている『蒼柳』という名の食堂に入っていた。道行く人に声を掛け、おススメの店を教えてもらった結果この店にたどり着いたのだ。


「すごい人だな」

「まぁ人気の店らしいからな」

「運良く入れただけラッキーってことだな。さっきの人、なにがおススメって言ってたっけ?」

「『蒼柳』はなんでも美味い。でも一番美味いのはミートパイだ! って言ってたな。確かにミートパイだけメニューにデカデカと書かれてるし、有名なんだろうな」

「ふーん、じゃあそれにするか」

「結構でかいみたいだぞ。大丈夫なのか?」

「ふふん、私を誰だと思ってる。聖女ユースティアだぞ。この私に不可能はない!」

「いや、ご飯食うのに聖女も何も関係ないだろ」

「よーし、食べるぞー!」


 意気揚々とミートパイを注文するユースティアにレインは一抹の不安を覚え……その不安はわずか三十分後に的中することになった。

 ミートパイを頼んだユースティア。最初こそ意気揚々と勢いよく食べていたユースティアだったが、次第にその勢いは弱くなっていき、やがて——


「もう食べれない……」

「おい早すぎるだろ! まだ半分以上残ってるんだぞ!」

「無理……もう吐く」

「おいおい止めろよ! っていうか食べれないならなんで頼んだんだよ!」

「……食える予定だった」

「明らかに無理なサイズだっただろ。っていうかお前いつも全然食わねーじゃねーか」


 ユースティアは大食らいかといえば決してそんなことはなく、むしろ小食の部類だった。それなのにユースティアの頼んだミートパイのサイズは直径約三十センチほどの代物。ユースティアに食べきれるはずがなかった。


「今日は行ける気がしたんだ……」

「どこからその自信が湧いて来るんだよ」

「うぅ……代わりに食べろレイン」

「いや、俺も普通に自分の分があるんだけど」

「でも残すのは私の主義に反するからな……仕方ない」


 しばらく唸っていたユースティアだったが、少ししてナイフとフォークを手に取ってミートパイを切り分け始める。何をしているのかとレインが疑問に思っていると、切り分けたミートパイの一つをフォークに刺してレインに差し出してくる。


「ん」

「?」

「ん」

「えーと……もしかして俺に食べろって言ってるのか?」

「もちろんその通りだ」

「いやだから、俺も俺で注文した分が残ってるんだが」


 レインの注文した魚介の定食もなかなかの量があった。定食だけでもお腹いっぱいになるほどの量があるのだ。そこにユースティアのミートパイまで追加されるのはさすがに無茶があった。


「もちろんそれは理解している。だからこそこうして私が手ずから食べさせてやろうというのだ。この私が食べさせてやるなんて一生に一度あるかないかだぞ。さぁこの幸運を噛みしめながら食べるがいい」

「断る」

「なんだと!?」

「別にお前から食べさせてもらうことにありがたさを感じないし、嬉しくもないからな」

「なっ……この私が食べさせてやろうって言うんだぞ。いったいこの世でどれほどの人が私に手ずから食べさせてもらおうことを夢見ているか……お前はその幸運を棒に振るっていうのか!」

「じゃあそれを望んでる人に食わせりゃいいだろ!」

「なんで私が他の奴に食べさせないといけないんだ! 私はレインに食べろって言ってるんだ!」

「無茶言うな!」

「私の従者だろ!」

「従者だからってなんでもできるわけじゃねーよ。無理なもんは無理だ!」

「えぇいこうなったら……『傀儡操』!」

「んなっ!?」


 断固として拒否し続けるレインにしびれを切らしたユースティアがとうとう魔法まで駆使してレインの動きを封じる。


「おま、何を」

「お前が最初から大人しく食べてたらこんなことはしなくて良かったんだ。お前が悪いんだからな。さぁ、私が食べさせてやる」


 食べきれないからレインに食べてもらうという当初の目的から、自分の手でレインにミートパイを食べさせるということに目的がシフトしてしまっていることに気付いていないユースティア。魔法で動きを封じられたレインに抵抗することもできない。


「“口を開け”」

「っ!」

「ふふん、最初からそうやって大人しく口を開ければ良かったのだ。ほら、あーん」

「むぐっ」


 ミートパイを口に入れられたレインは反射的に口を閉じて咀嚼してしまう。外の生地はサクサクとしていて、中はとてもジューシーだった。口の中に肉の旨味がいっぱいに広がってレインは思わず目を見開く。今までに食べたミートパイの中で一番美味いと言っても過言ではなかった。この商品がこの店のおススメだと言われて納得できるだけの完成度だ。


「美味いな」

「そう美味いんだ。さぁもっと食べろ。遠慮するな。ほらあーん」

「いや別に遠慮してるわけじゃ——むぐっ」


 依然として魔法で操られているままのレインは自分の意思に反して口を開いてしまい、そのまま二度三度とミートパイを食べさせられるレイン。


「んぐ……おいティア」

「なんだ?」

「あとどんだけ食べさせる気だ」

「まだ残ってるぞ。あと四切れだ」

「全部食べさせる気かよ!」

「私はもう食べれないからな。それにレインだって美味しそうに食べてるじゃないか」

「お前が魔法で無理やり食べさせてるんだろうが!」

「まぁそう文句言うな。美味いんだからいいだろ」

「俺もそろそろ腹がいっぱいなんだが」

「いいかレイン。このミートパイは普通のミートパイの四倍は美味い」

「? だから?」

「そして私のような完全無欠の美少女に食べさせてもらうとさらにその五倍美味くなるわけだ」

「すげぇな。俺普通よりも二十倍美味いミートパイを食ってたのか」


 特に深く考えることなく発言したレインだったが、それを聞いたユースティアは目をぱちくりとさせる。


「どうしたんだ?」

「いや。なんでもない。レイン、お前って結構アレだと思うぞ」

「アレってなんだよ」

「わからないならいい。ほら、それよりも食え!」

「お、おい! むぐっ、きゅ、急にふっほむな!」

「うるさい。黙って食え!」


 その後もレインは、なぜか急に顔を赤くしたユースティアに推定二十倍は美味いと言われるミートパイを食べさせられ続け続けるのだった。

 ちなみに、この時レインとユースティアは全く気付いていなかったが、二人はかなり騒いでいたせいで周囲の客の注目を集めていた。その中でミートパイを食べさせ続けるユースティアと食べ続けるレインは、イチャイチャするカップルのようにしか見えていなかった。この日、以降この店のミートパイはカップルで食べると仲が深まるという噂が広まることになるのだった。





□■□■□■□■□■□■□■□■□


「うーん、お腹いっぱい。やる気全開だ!」

「……うぷっ……もう食えねぇ」

「なんだレイン。情けないぞ」

「……誰のせいだと思ってんだ」

「さぁ、誰のせいなんだろうな」

「ちくしょうめ」

「せっかくなら名産だっていうワインも飲んでみたかったんだけどな。まぁさすがに無理か」

「まだ仕事が終わってないのに飲んでいいわけないだろ」

「今日の仕事が終わったら飲んでもいいのか?」

「ダメだ」

「ケチめ」

「なんとでも言え」

「まぁ仕方ないか。ワインは帰りに適当な理由で買って帰るとしよう。さ、それじゃあ予定通り男爵の屋敷に行くか」

「その恰好のまま行くのか?」

「バカか行くわけないだろう。この恰好はご飯を食べるために着替えたんだ。もう一度宿に戻るぞ」


 宿に戻ろうと歩き始めたちょうどその時だった。遠くから女性の悲鳴が聞こえてきた。


「きゃぁああああああっっ! 泥棒よーーっ!!」

「「っ!」」


 即座に反応し、声の方のした方へ走るユースティアとレイン。駆けつけると、そこでは女性が蹲るようにして倒れていた。


「大丈夫ですか!」

「うぅ……はい。でも、私のカバンが……あの子に」

「あの子?」


 女性の指さした方を見ると子供が鞄を持って走り去る姿が見えた。


「追いかけてくださいレイン!」


 ユースティアに言われてレインは慌てて子供を追いかけて走り出す。足の速さはレインの方が上だったが、人が多すぎて上手く追いかけられない。対する子供はその小柄さを生かして人と人の間をするすると縫うようにして走っていた。


「あぁもう。くそ!」


 このままでは逃げられると思ったレインは地面を蹴って高く跳ぶ。人々の頭上を飛び越えて子供に近づくレイン。


「っ!?」


 予想外の方法で追いかけてきたレインに子供はギョッと驚いた表情をする。その隙をついて子供の前に降り立ったレインは子供のことを捕まえる。


「よし、捕まえた」

「あ、くそ。離しやがれっ!」

「ダメだ。ほら、あっちに戻るぞ。さっきのお姉さんに鞄を返すんだ」

「嫌だ!」

「嫌だって……お前なぁ」

「だって、だってこのままじゃ……」

「? 何か事情でも——っ!」


 その瞬間だった。全身の毛が逆立つような、冷たい気配を感じて子供を抱えたまま飛び退く。直後にレインと子供の立っていた場所を衝撃波のようなものが通り抜ける。


「な、なんだこれ……」

「ひっ」


 もしレインが飛び退かなければ二人ともまとめて吹き飛ばされていただろう。その事実にゾッとしながらレインは衝撃波の飛んできた方向を注視する。ざわつく人波をかき分けて現れたのは、フードを被った背の高い人物とレインと同い年くらいの少女だった。その少女の姿に一瞬引っかかりを覚えるレインだったが、今はそれどころではないと警戒心をマックスにする。


「子供が一人と聞いていたが……お前も仲間か?」

「違う。俺は——」

「言い訳は聞かん。貴様は咎人を庇った。その時点で同罪だ」


 フードの人物の低い声に、男であるということに気付くレイン。子供の仲間であるということを慌てて否定しようとするレインだったが、男は聞く耳を持たなかった。

 男は剣を抜き、レインに向ける。どんどんと増していく男の圧力にレインは冷や汗が止まらなくなる。

 男はレインと離れた位置にいるにも関わらず剣を構える。それを見て先ほどの衝撃波を思い出したレインは子供を抱えたまま動く。


「舌噛まないようにしっかり捕まってろ!」

「え、う、うん!」

「はっ!」


 剣を振り下ろす男。あまりにも早すぎてレインには剣先を捉えることすらできなかった。そしてレインの予想通り飛んできた衝撃波が二人のことを襲う。周囲のことなど全く気にしていない攻撃。今の一撃で舗装された地面が抉れあがっていた。


「他の人巻き込む気かよ!」

「私の仕事は咎人の断罪……それだけだ」

「断罪? あんたまさか——」


 その時、男の被っていたフードが脱げる。その下の顔を見てレインは自分の運の悪さを呪いたくなった。

 男の顔を見てレインは忌々し気に呟く。


「ダレン・スタンダル……」


男の名前はダレン・スタンダル。贖罪教と対立する存在である断罪教の断罪官。その断罪官の最高峰である【聖騎士】だった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!

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