2、アイス
透き通るように光り輝く満天の星空を見上げる。煌めく星々が凍りついてしまうんじゃないかとさえ思う。そんな夜は音が消え去って、「シーン」という音が聴こえてくる。そして歩み始める足元で雪が鳴く。
ボクはこの静寂で清楚な孤独に泣きそうになる。理由のわからない哀しみが心から溢れ出す。
ボクは生きることにしがみつくように、歩き続ける。
先生「何だかんだ言っても、やっぱり水炊きが一番なんだよな。」
野乃花「昆布が良い働きしてるよね、センセ。」
先生「あぁ確かに。そう考えると、こないだの湯豆腐もシンプルだけど美味かったな。」
野乃花「でも昨日食べたラムの蒸し鍋も、新たな世界が開かれたと、ボクは思いました。」
先生「ラムつながりだと、先週食べたラムシャブの旨さにも驚いたよ。」
野乃花「驚きつながりだと、長年石狩鍋だと信じて食べていたものが三平汁だったことを、ボクは最近知りました。」
先生「そうなのか?」
野乃花「うん。年末にセンセと札幌に行って食べた時に「あれぇ?」と思ったから、帰ってきて母さまに言ったら「知らなかったの?」って、二重に驚いたよね。ウチの鮭鍋はいつも三平さんだったのかと。」
先生「でもまあ、美味そうだけどな。」
野乃花「当然、三平さんでも美味しいんだけどね。」
先生「さて、シメは雑炊にしようかウドンにしようか。」
野乃花「ボクはシメにアイスを食べるので……、でもウドンは一口食べたいと、ボクは思うのです。」
先生「もうちょっと、少しだけ食べたい、って鍋あるあるだよな。特にシメは。」
野乃花「なのでセンセの分、一口だけください。」
先生「なんというか、ストーブをガンガンたいて部屋を暑くして、Tシャツで過ごしつつ鍋食べて、心身共に暖まってからアイスを食べるって、けっこうな贅沢だな。外は極寒の吹雪なのに。」
野乃花「それが北海道流の、冬の過ごし方なのです。」
先生「北海道なだけに。」
野乃花「いやー、今日もなまら冷えたから鍋にしましたが。」
先生「いい具合に暖まった。暑いぐらいだべや。」
野乃花「んだしょ? したっけアイス食べたくなるっしょ。」
先生「なるほど。俺も食べたいな、一口だけ。」
野乃花「ボクの一口食べる? さっきのお返し。」
先生「なんかわるいな。」
野乃花「なんもなんもー、ボクはもう一つ食べるから大丈夫なのです。」