「人生」と言う名のマルチエンディングのゲームでも、俺は見事にハッピーエンドを迎えたいと思っています!!
「お前は、人生に困っていないか」
俺は栗色の老婆の言葉に足を止める。他の人も通るような大道理で、他の人たちは見向きすらしない。
「おや、お兄さん困ってるのかい?」
恐る恐る声の方を見ると薄汚い老婆がこちらを見ていや。ビニールシートの上にボロボロの服で座っている。突然何を言っているのかわからないがつい足を止めてしまった。
「おっしゃってる意味が...」
「困っているお前に、いいものをやろう。ほれ」
唐突にその老婆から手渡されたそれはゲーム機のようなものだった。黄色いボディに赤いボタンが付いたもの。一体こんなもので何ができるというのか。
「これは...?」
「スタートボタンを押してみるといい。真ん中にある赤いボタンだ」
真ん中には、たしかに赤いボタンが付いている。半信半疑で言われるがままに押してみる。だが、特に変わった様子はない。一体何を言っているのか...。
「お前は今から、ゲームに挑んで貰う。人生というゲームにな」
「と、おっしゃいますと...?」
「お前にはこれからハッピーエンドに向かって進んでもらう」
「は、はぁ...?」
何を言ってるのかは分からずキョトンとする。ハッピーエンド?ゲーム?一体この人は何を言ってるんだか。
「エンディングは3つ。これから女が登場し、お前に選択肢を与えるだろう。うまく良い選択肢を選べば、その女と結ばれてお前はめでたくハッピーエンドにたどり着く。そうでなければ...」
「そうで..なければ?」
「まあそうならなければいい話だ」
「は、はあ...」
「あと、リセット、といえばここからやり直すことができる。ハッピーエンドに辿り着かなかった場合、活用するといいぞ」
選択肢のあるゲームのように、これから選択肢を突きつけられて選ばされるのだろう。そしていい選択肢を選べばハッピーエンド、そうでなければバッドエンドというわけか。まあ信じてるわけではないがそれはそれで面白そうではある。
「そうですか...あの!」
そう言おうとした。だがそこにはもう老婆はいなかった。灰色のコンクリートが敷き詰められているだけだった。狐につままれたような気分で突っ立っていた。老婆がいて、変なものをつかまされ、ゲームをやることになった。きっと疲れているのだろう。そう思いまた歩き始めた。
「きゃ!」
俺は女性とぶつかってしまった。さっきの老婆のことを考えていて不注意だったのだ。その女性を見るととびきり美人ではないか。
「すみません...」
その女性が謝る。すると目の前に二つの文字が現れた。
▶︎すみません
▶︎どこ歩いてんだよ
ははあ、これが選択肢という奴か。こういう風に選択肢が現れ、正しい方を選んでいくと、ハッピーエンド、そうでないとおそらくバッドエンドに行くのだろう。バッドエンドに行かないように気をつけなければ。
「大丈夫ですか?」
「ええ....」
「すみません、少し考え事をしていて」
「いえ、こちらこそ」
その女性がにこやかに笑う。もう一度言うがなんと言う美人だ。栗色の髪にすらっとしたスタイル、ピンクのパーカーがとても似合っている。
▶︎失礼ですがお名前を
▶︎急いでいるので
またもや選択肢だ。ここで名前を聞かないことはないだろう。もちろん選ぶのは、「失礼ですがお名前を」だ。
「失礼ですがお名前を...」
「名前は...」
名前を告げる。とてもいい名前ではないか、こんな美人と幸せになれるハッピーエンドという奴がとても楽しみになってきた。
「あ、突然すみません!!お名前なんて聞いて失礼でしたよね?」
「いえ...」
向こうも気があるようなそぶりだ。今のところ順調だろう。
▶︎好きです!!
▶︎よ、よければメアドを...
また選択肢だ....ってどちらも大体じゃないか。さすがに上は 色々な過程をすっ飛ばしすぎている気がするし、まあ下が妥当だろう。
「よ、よければメアドを...ってアレ俺何を言って...!すみません!!」
「いいですよ」
快く承諾してくれた。この時の笑顔は忘れられないものだった。
「おい聞いてんのか?」
「あ、ああ悪い」
俺は友人の家でぼーっとしていた。あの笑顔が忘れられない。例えるならば、天使のような笑顔だ。
「このゲーム面白いぞ。お前もやってみろって!!」
そのゲームは、「カレーを上にかけるか」軍と「横に添えるか」軍という2つの軍のどちらか一方の軍の戦国武将を操って戦乱の時代を生き抜くというものだった。いまは人生というゲームでとても美人な女性を攻略していて忙しい。
「あー後でな」
「お前なんか変だぞ。どうした?」
「別に」
こいつに言ってもわからないだろう。気晴らしに小説でも読むか。
スマホで「小説家になろう」と検索をする。すると様々な小説がずらりと並んだページに飛んだ。
「何だよこれ」
スマホの下の方にいかがわしい広告が現れたのを見て、顔をしかめる。
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こんな広告を見て、誰が押すのだろうか。馬鹿馬鹿しい。そう思いながら広告を無視してスクロールしていく。小説が上から下に次々と現れては消えていくのを見ながら、一つの小説が目に止まった。
「『恋愛の仕方』?そんなもん今は読む気にはならないな」
とにかく、あの女性が気になって仕方がない。早く次なる選択肢よ来てくれ。そして俺を幸せに導いてくれ。
▶︎家を出る
▶︎家を出ない。
なんだ、ここに来て選択肢か。気になって仕方がない。もちろん、出るだ。
「ああ悪い、急用を思い出しちまって」
「えぇ?」
そういい荷物を持って友人のところを出る。家はマンションで、エレベーターに乗り1階へと向かい自動扉を出て歩き出す。向かい側から楽しそうに会話している2、3人の子供の姿。なにか楽しそうな会話をしている。
「インヴォーガーヒーローズ新しいカードが出たらしいぜ!!!」
「それまじ!?!?
インヴォーガーヒーロー。そういえばそんなカードゲームがあると聞いたことがある。この辺では結構流行っているのか。
「きゃっ!」
「あっ」
彼女のことが気になりすぎてまた見ていなかった。デジャヴのような気もするが早く行かない....
「すみません」
「これまた美人だ。美人という以外に何というか」
▶︎すみません
▶︎急いでいるので
選択肢。これはやばいかもしれない。あの女性のことを考えると。立ち去った方がいいのだろうが美人でつい見惚れてしまう。いやいや、俺にはもうすでに決まった人がいるのだ。
「急いでいるので...」
残酷だがこれが最適解だ。これで会話が弾んでバッドエンドにでもなったら元も子もない。
「待ってください!」
「え、えぇ...?」
呼び止められた。普通ならいい展開なのだが頭によぎるのは「バッドエンド」の文字。このままうまくいくとバッドエンド直行な気がしてならず、とりあえず選択肢が出ないようだしここから離れないと...!
俺は走り出した。青信号を確認し、走り出す。だが車が突っ込んできた。俺はそれにはねられ...。
「居眠り運転らしいわよー」
「怖いわねー」
向こうでそんな声が聞こえる。目の前には赤い文字でBADENDという文字が表示されている。俺は最後の力を振り絞りこう呟く。
「リ..リセット」
そう呟き目を開く。すると目の前には老婆がいた。
「あと、リセット、といえばここからやり直すことができる。ハッピーエンドに辿り着かなかった場合、活用するといいぞ」
「あれ?ここは、ゲーム始まった直後?」
「おや、早速使ったのかい。リセット使えばいつでもここに戻ってこれるからな」
本当に戻ってこれたのか。これは便利ではないか。これで心置きなくハッピーエンドを迎えられる。嫌なエンディングにたどり着いてもゲーム同様、これでやり直せるわけだ。
俺は友人の家まで進めた。そこまでの道のりは一度やったので省略させてもらう。中間セーブのようなものがると良かったが、まあ贅沢言ってられない。
しかしバッドエンドが交通事故とは。てっきり。彼女に浮気と勘違いされて刺されるまでがデフォルトのようなものだと思っていたが。
「お前なんか変だぞ。どうした?」
「別に」
ここで、家を出るかどうかの選択肢が出てくるはずだ。
▶︎家を出る
▶︎家を出ない。
でた。残りの選択肢的に、おそらく出ること自体がバッドエンド直行ルートなのだと思う。気にはなるがここは大人しく家にいよう。
「んーなんかやってないのかなあ?」
テレビをポチポチと押してチャンネルを変える。テレビにはニュースが映し出された。
「今朝、×●アパートで、男性の死体が発見されました。その男性は、デゾニーランドの模造品を作っていたという...」
そういえば最近そんなニュースをよく聞く気がする。デゾニーランドというアミューズメントパークを真似したものが次々と不審死する事件だ。物騒な世の中のなったものだ。
▶︎彼女と遊ぶ約束をする
▶︎彼女と遊ぶ約束をしない
選択肢だ。もちろん、遊ぶ約束はする。遊ぶ約束と言っても、どこがいいのか。そうこう考えているとまたもや選択肢が登場する。
▶︎動物園
▶︎近くのカフェ
動物園というのは地雷だろう。どうせライオンが逃げ出して襲われるとか、そんなオチに決まっている。
そうと決まればメッセージアプリに登録した彼女のところに約束を書き込む。もちろん向こうはオーケーと返してくれる。
文字なので表情は読み取れないが。きっと喜んでくれているだろう。俺は笑みを浮かべた。
「ええと、待ちましたか?」
「いえ」
当日、待ち合わせ場所で落ち合った。ああ、今日も綺麗だ。俺は彼女とカフェやゲームセンターなど、色々なところに寄った。選択肢はそこから出ていないが、きっといいルートを辿っているに違いない。そして気が早いとは思うが、告白をしよう。
「あ、あの!!」
人気のないところで彼女の方を向いた彼女は不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「付き合ってください!!」
突然の告白に、戸惑いながらも頭を下げた。
「ごめんなさい。友達同士でいた方が...」
「えっ...」
ごめんなさいと言いながら何処かに行っしまった。だが、そこまで悲しい気持ちにはならなかった。
「友達かあ....友達」
友達というワードを連呼する。それも悪くない。これはこれで良かったのかもしれない。ダメ元だったし、また出会いはきっとあるだろう。
NORMAL END
「あぶない!!」
その時だった。こちらに暴走してきた車が突っ込んできた。おれはそれにぶつかり、跳ね飛ばされる。
「な、なんで....」
ノーマルエンドだというのに、どうしてこんな目に会わなければならないのか。
「リ..リセット」
そう呟き目を開く。すると目の前には老婆がいた。
「あと、リセット、といえばここからやり直すことができる。ハッピーエンドに辿り着かなかった場合、活用するといいぞ」
またこの光景。今度こそは、と意気込む。
それから俺の戦いは始まった。バッドや、ノーマルを繰り返し、最高の選択肢を選び続けた。そしてついに、その瞬間が訪れるー。
その場所はカップルが訪れると結ばれるといい噂の場所だ。ハート形の岩がありいかにもという感じの場所だった。
近くには電車の通る線路があり、告白するときに音でかき消されないかが一番心配だ。
「好きです!結婚してください!!」
「喜んで!!!」
ついにきた。これで結婚し、めでたくハッピーエンド。正直ほかのエンディングはどうしょもなかったが、これできっと幸せな運命にー。
「あぶない!!」
その声がし横を向くと、脱線した電車がこちらに向かって来る。
俺は跳ね飛ばされその場に転がる。
「け...き...」
俺は最後の気力を振り絞って俺はこう叫ぶ。
「結局、エンディング全部同じじゃねええええええええええええええかあああああああああああああああああ!!!」
おしまい
突然ですが!
この小説の中に、黒豆パン小説の小ネタが入っているのはお気づきでしょうか?
え?「お前みたいなマイナーな小説家の作品なんて呼んだことないって?」
まあまあそんなこと言わずにお気に召していただける(と思うので)是非読んでくださいね(宣伝)
①冒頭の地の文
①友人のやっていたゲームの内容
そのゲーム機に入っていたゲームは、
「カレーを上にかけるか」軍と「横に添えるか」軍かを選武将を操って戦乱の時代を生き抜くというものだった。
2019/02/23投稿
16XX年、カレーは「ご飯の上にかける」か、「ご飯の横におくか」ということで、大きな戦いが起こったそうです。
②歩いている時の子供の会話
「インヴォーガーヒーローズ新しいカードが出たらしいぜ!!!」
「それまじ!?!?」
2018/12/22投稿
世界で大熱狂したカードゲーム、インヴォーガーヒーローズの熱き戦いを見逃すな!!!
③主人公が小説家になろうを見ていた時の広告
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2018/10/24投稿
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④友人宅のニュース
「今朝、×●アパートで、男性の死体が発見されました。その男性は、デゾニーランドの模造品を作っていたという...」
2018/02/10投稿
ようこそ!マッキーマウスの夢の国、デゾニーランドへ!! 黒く秘めたるマッキーの楽園
よかったら読んでみてください(宣伝)