風呂
シエラさんが突拍子も無い事を言い出した。
「正確には、賢者の石を作るための材料です」
「賢者の石って何ですか?」
「この世界に存在する、あらゆるモノを作り出す力です」
あらゆるモノを創造できる石ころ・・・・確かに、世界統一くらい出来てしまいそうだ。
「そんな物本当に存在するんですか?」
「ダンジョンに存在するのは事実です」
「ピーちゃんもそのうち会えるよ~」
俺はそんな凄い物に会えるらしい……。
「どうやら冒険者達も、第5フロアから撤退が終わったようですね」
俺達が話をしている間に、戦闘は終了したようだ。
「本当だね~、じゃあこれで講義は終了―」
どうやら講義は終わりらしい。他のフロアの事を色々知る事が出来た。
「この後は如何なさいますか?」
「んーと、後はピーちゃんの部屋に案内するだけだよ~」
どうやら墓城内は、粗方案内が終わったようだ。この次は何をするのだろうか?
「キキさん、だったら俺が案内しとくぜ!明日の訓練の時間までは自由時間ですよね?」
テトが俺の案内を買って出てくれた。どうやらこの後の予定は特にないらしい。
「えー、私もっとピーちゃんと遊びたいー」
あれ?俺達遊んでたっけ?
「キキさん、あなたはまだ今日の仕事を終えていません。ここはテトに任せるべきでしょう」
「うー、……そうだね。じゃあテットンお願いね」
「任せてください!確りピットを案内しますよ!」
こうしてテトと俺は、個人に割り当てられる部屋へと向かった。キキさんは最後まで名残惜しそうにしていたが、仕事では仕方がない。仕事が割り振られると、やはり忙しいのだろう。
それと、シエラさんが去り際に「テト、今日は許しますが、明日は確り講義を受けてもらいます。覚悟してください」と言い残し去って行った。テトの野郎、俺をダシに逃げようとは中々抜け目がない。
ただ爪はあまいが……。
こうして、テトと俺は居住区へと戻って来た。
「ここがピットに割り当てられた部屋だぜ」
そこは俺が想像していたよりも遥かに広い部屋だった。人が百人は平気で入れるのではないだろうか?
「結構広い部屋だね。殺風景だけど」
「家具なんかは自分で揃える決まりだからな」
部屋の中には簡素なテーブルが一つ、これまた簡素な椅子が二つだけ置いてあった。
「俺達みたいな霊体だと、横になる必要も無いから、申し訳程度の机と椅子だけなんだよ」
「家具はどうやって揃えればいいんだ?」
流石に自室が殺風景すぎてどうにかしたい。
「製造区で注文できるぜ。まあ、給料が入ってからになるけどな」
そう言えば、今の俺は無一文だ。これは給料日まで何も出来ないのではないだろうか?給料日がいつか分からないが。
「給料は基本月払いだな、当分先になるぜ」
「それまで無一文で、生活しないといけないのか?」
「一応、アルバイトすれば金は稼げるぞ」
「そこんとこ詳しく」
俺は、無一文を脱する為に、テトからアルバイトについて聞きだした。アルバイトとは、工房などで人手が欲しいときに、募集している仕事のようだ。因みに、フロアマスターの任命した仕事は、アルバイトとは言わないので、テトの雑用は正式な任務とのこと。内容は守秘義務があるからと、教えてくれなかった。雑用のくせに。
「ん?今何か言ったか?」
「いや、何も言ってないぞ。アルバイトは何処で受けられるんだ?」
テトのくせに中々勘が鋭い。
「確か、統括区でまとめて管理してたはずだぞ」
統括区となるとシエラさんが管理しているのかな?
「まあ、今日は俺が奢ってやるから、施設の使い方なんかも教えてやるよ。さっきは施設の説明しかしてなかったしな」
なんだかんだテトは、細かいところにも気が付く男である。
「よし、まず俺達霊体の身体を持つ者には、欠かせない場所に連れて行ってやるよ!」
「おう、よろしくたのむ」
こうして俺達は殺風景な部屋を後にした。
「ここが我らが癒しの場所、風呂だ!」
連れてこられたのは風呂。テトの推しが凄い。
「霊体でもお風呂に入ると癒されるのか?」
「ああ、多分ピットが想像してる風呂とは違うぜ。霊体専用の風呂だからな」
そう、風呂と言えば、湯を張った場所で、身体を清める所だ。地域によって蒸し風呂なんて場所もあるが、普通、お湯の中に浸かるのがお風呂だ。
しかし、テトが連れてきた場所は、一面真っ白な部屋だった。床や壁が白いわけではない。部屋の中には視界いっぱいに、白い煙が充満していた。それこそ1メートル先も見る事が出来ない程濃密にだ。
「おーい、テト何処にいるんだー?ここは何だよ?」
「へっへっへ、ここが俺達霊体用の風呂だぞ!お香の煙が充満してるんだ」
蒸し風呂ならぬ、燻し風呂ときた。他の霊体の者たちも結構居るみたいで、偶に目の前を通過する。丁度今も目の前に一体の霊体が通り過ぎ・・・・ようとして満足した顔をして消えていった!?
「お、おい、テト。今一人満足して、天に召されていったぞ!?」
「大丈夫、だいじょうぶ~、綺麗になってー、別の場所に~転移しただけだから~」
綺麗になると勝手に移動するのか?
「ふへへへへへ、ピット~どうだ~?き~もち良いだろ~?」
なんだかテトの様子がおかしくなってきたぞ?しかしテトが言うようになんだか気持ちよくなってきたぞ。まるで身体から疲れが溶けていくようだ。全身をマッサージされてるような、なんだか・・・・フワフワしてきたぞ~。
「おーう、テト~。ここは気持ちがいいなぁ~」
「イッヒッヒッヒッヒ、だろー。俺は~そろそろ~召されそうだ~」
テトが何か言っているが、もう何も考えられないな~
「ピットォ~、先にイってるぜ~」
その言葉を最後に、テトが話しかけてくることは無くなった。
おや~何だろうか、突然目の前に可愛い女の子が立ってるぞ~、何か喋ってるけどきこえないよ~あはははは、楽しい~。ああああああイッイクゥゥゥゥゥゥゥ……。
「よお、風呂はどうだったよ」
俺のことを待っていたのであろう。テトが出迎えてくれた。
「……おい、あれは何だったんだ?」
「何って風呂だよ」
テトのやつは分かりきったことを言ってくる。
「違う!あんなの普通の風呂じゃないだろ!」
「まあまあ、落ち着けよピット。俺も詳しくは知らないんだけど、俺達みたいな霊体の身体だと、周りから悪いものを拾って不調をきたすことがあるんだと」
俺の剣幕に、テトが真面目に説明してくれた。
「だから定期的に、魂の洗浄?ってのを、したほうがいいらしい」
「魂の洗浄ね……それは誰から聞いたんだ?」
「俺はアイリス様から聞いたぞ!だから間違いない!」
情報の出どころはアイリスさんらしい。流石に嘘ではないであろう。
「それで、魂の洗浄ってのは、どのくらいの周期でしないといけないんだ?」
「さあ?俺は毎日入ってるけど、墓城の外に住んでる連中は、一月とか半年とかに、一回くらいじゃないかな?」
「かなりアバウトなんだな?」
「実際、よく分かって無いしな。俺は気持ちいいから入るだけだし」
魂の洗浄をしないと不調になると言われて、不安になったが、それ程頻繁に洗浄する必要も無さそうだし一先ず安心だな。まあ、入れるときは出来るだけ入るけどね。
「で?結局、風呂はどうだったよ?」
テトには顔がないのに、ニヤニヤしているのが分かるのが……ムカつく。
「……気持ち良かったよ」
俺達は風呂で、名実共に魂を洗濯した後、俺達は製造区にやって来ていた。製造区で、は直接工房の赴いて、注文をすればいいと言われた。そのほかにも、店で取り扱っている商品の、サンプルが工房先に展示してあるから、それを見て周るだけでも面白そうだ。俺の中にある知識で言うところの、ウィンドショッピングだ。
他にも、工房は配置されている場所で、善し悪しがある程度分かるらしい。基本的に、キキさんの様に『○○長』と役職ある人が構える工房に近いほど、優秀な職人が店を構えているとか。
テトと連れ立って色々見て周っている時に、いくつかの工房で買い物をしている客も見て取れた。ただ彼らが受け取った商品が突然消えることが有る。
「なあ、客が受け取った商品が、消えることが有るんだがどうしてだ?」
「ん?ああ、あれは収納の魔道具に入れてるんだよ。後々ピットにも支給されると思うぜ」
なんと彼らが使っている便利道具が支給されるらしい。テトが言うにはランクによって容量が違うらしいが、最低でも小部屋ほどの収納ができるとか。特に、俺達みたいなアイリス様直属だと、結構高いランクの物が支給されるらしい。
「多分、次の給料が支給されるときに、一緒に貰えるんじゃないか?」
まだ働いてもいないが、給料日が待ち遠しくて




