ダンジョン防衛戦・・・又の名を高みの見物
「はーい。到着―、ピーちゃんここが統括区だよー」
先頭を歩くキキさんに付いて行く、後ろに居るのは、俺とテト、そして何故かシエラさんも付いてきた。辿り着いた場所は、今までとは毛色の異なる場所だった。一際大きな水晶を中心に、大小様々な水晶が沢山置かれている。その水晶には何か映像が映し出されていて、メイドさんが忙しなくそれを捜査している。
「なぜメイドさんなんだ?」
「ここはシエラさんが統括している場所なんだ。統括区って言っても、この一部屋だけなんだけどな。」
補足マスターの説明で、メイドの部下はメイドだと言うことが判明した。今までの補足と違って、なんだか聞いたことしか返ってこない……?
「ここでは第9フロアと、それに関わる全てを管理しています」
今度はシエラさんが答えてくれるらしい。
「情報を扱うのもメイド稼業の一環なのです」
その後も、シエラさんの説明は非常に分かりやすく、聞きたかったことや知っておくと便利なこと、色々と教えてもらえた。流石メイドを統括しているだけあり、内情には詳しい。先程案内された場所の不足分まで補っている。それこそ後を付けていなと分からないのではなかろうかと疑問を覚えるほどだ。悪いことはできないな……。
打てば響く、そんな心地よい会話をしているは楽しいものだ。テトの補足マスターの座はシエラさんに移譲だな……。なんて思っていた時期もありました。
「もう!なんでまた私だけのけ者にするの!」
どうやら先程のように、かまってキキちゃんが発動してしまったようだ。テトはこれを意図的に回避したのだ。その結果皺寄せがシエラさんに行ったみたいだが……。
なんだかシエラさんの気まずそうな顔が印象的だった。
なんとか、かまってキキちゃんを鎮めることに成功した。これからは、まずキキさんに質問する事にしよう。余談だが、鎮めるのにシエラさんの尽力が非常に大きかったとだけ伝えよう。
俺達は当初の目的である実践の見学をするべく、中央にある大きな水晶へと集まった。水晶に近づくほどその大きさには驚かされた。一つの水晶が体高3メートル近くある、思わず見入ってしまうほどの水晶に、突然映像が浮かび上がって来た。そこに映し出されたのは、平原だった。遠く彼方には地平線すら見えた。
「シーちゃん、お願いね」
「畏まりました」
そう言って、シエラさんが水晶に手を翳すと、映し出されている景色が動いて、いくつもの小さな影が見えてきた。そこは正に戦場だった、二つの陣営が激しくぶつかり合い、至る所で土煙が上がっていた。
「よかった~、間に合ったねー」
「はい、今回の冒険者達は、中々優秀なようです」
二人の言い方からして、普段は直ぐに終わってしまうのだろうか?
「ピーちゃん、あれがダンジョンの防衛だよー。対応してるのはケン・タウロス達だねー」
「彼らは、第5フロアマスターの直轄守備隊ですね。動きが洗練されています」
そこには、人間の上半身に馬の身体を持った“ケン・ダウロス”と呼ばれる種の戦士たちが、陣形を組んでいる冒険者たちに突撃するところが映し出されていた。土煙を上げて猛スピードで敵に突撃していく様は、恐れを知らないのかと思わせるほど勇猛な姿だった。
「久しぶりに見たけど、やっぱりケン・タウロスの戦いは迫力がすごいぜ」
「これ、冒険者が来たら俺達もやるのか?」
俺はその苛烈な戦いを見て、少し恐ろしくなった。
「んー、第5フロアは守護者の特性と、地形に合わせた戦術を使って防衛してるから~、私達が同じことをするわけじゃないよー」
「各フロアには防衛方法においてコンセプトがあります」
「コンセプトですか?」
「はい、第5フロアのコンセプトは“団”を、我々第9フロアのコンセプトは“個”を重視しています」
なんと各フロアには、それに合わせた戦闘方法があるようだ。
「因みに~、第6第7第8フロアも、私達と同じだよ~」
このダンジョンの特性なのだろうか?個人の強さを重んじる傾向にあるらしい。
「てか、第5フロア以外、団体戦の指揮を取れる人がいないだけなんだけどな」
テトの補足により、人材不足疑惑が浮上した。自己紹介の時に、人は足りていると言っていなかっただろうか?
「あはは、テットンが言う通り、他のフロアはみんな好き勝手にやるからね~」
「それって大丈夫なんですか……?」
思わず不安が口に出てしまう。
「確かに、他の方々は団体戦には向きませんが、各フロアの特徴に合わせた防衛を行っているので、何も問題ありません」
俺の不安を拭う様に、シエラさんが補足を入れてくれた。どうやら俺の心配は杞憂なようだ。
「そうだよ~、もし敵がきても半ちゃんが倒してくれるから大丈夫ー」
キキさんの言葉に、思わず力が抜けてしまったが。半蔵さんなら何とかしてしまいそうだ。
「はい、我々の防衛に不備はありません」
シエラさんからも、自信に溢れる一言が頂けた。
「そもそも、侵入者来ないから無用な悩みだろ」
テトからは、防衛意識の低さが窺える。
「テト、あなたは後で防衛の重要性を、一から教育する必要がありそうですね?」
シエラさんの一言で、テトの体内の気泡がまた忙しなく動き出した。流石にこれは俺もフォローすることは出来ない。
テトには、後で確り教育を受けてもらうことにして、俺は再び水晶へと視線を移した。そこには戦況が大きく動く瞬間が映し出されていた。
「ありゃりゃ、大盾持ちが崩れちゃったかー、冒険者君達はここまでかなー」
「先程の突撃で、裏に隠れていたヒーラーが、崩れたのが敗因ですね」
そこには陣形が崩れ、冒険者達が撤退しようとしていた。ただそこには先程の様な連携は無く、各々の判断で逃げているようだ。その後ろから態勢を整えたケン・タウロス達が更に追い打ちを掛けようとしている。
「これで終わりだな。結局フロアの一割も進めてねーな」
「そだねー、でも珍しく第5フロアまで来てるのを、ピーちゃんに見せれて良かったよ~」
どうやら本当に第5フロアまで侵入者が入ってくるのは、珍しい事のようだ。
「そういえば、第1フロアから第4フロアまではどうなっているんです?」
俺は皆が話題に出さない数字の若いフロアについて気になっていたのだ。
「それはね~、知能が余り高くない種族が、色々配置されてるよ~」
俺、キキさんの説明はザックバランだと思うんだ。
「キキさん、ここは私が掻い摘んでご説明いたします」
すかさずシエラさんの援護が入る。先程の事を踏まえて、ワンクッション入れることも忘れないのは流石だ。
「そっかー、じゃぁシーちゃんお願いね~」
キキさんは、自分が輪の中に居る時は寛容だ。
後顧の憂いが無くなったところで、シエラさんは説明を始めた。それによると、第1フロアから第4フロアまでは、比較的に増えるのが早い“鬼種”と呼ばれる思考することより、欲望を優先する種族が縄張りとしているようだ。
所謂、脳筋共だ。他にも、元は野生の魔物だったものが、ダンジョンに入り自らの縄張りとして住み着いていたりするらしい。
一応、各フロアにフロアマスターは存在するのだが、フロアマスターも鬼種なので一人を除いて自分勝手に過ごしているとのこと。なので貧乏クジを引いた一人が、他のフロアの分まで管理している状況だとか。ちなみ第2フロアのフロアマスターだ。
「それでよく侵入者に対応できますね?」
「フロア一つ一つは非常に広大で、兵站を確保しながら攻略する必要のある人間には、それだけでも脅威になるのです」
言われてみれば全くもってその通りだ。ダンジョンにはダンジョンの住民のみ使える転移陣が至る所に有るが、侵入者達は徒歩でしか移動する事が出来ない。この差は想像以上に大きいのだろう。
「しかし、そんなリスクを冒してまで、彼らは何故上のフロアを目指すんですか?」
「あははー、お宝が欲しいからだよ~」
キキさんが言うにはお宝目が当てで、確か上のフロアに進むほど、良いものが置いてあるらしい。ただ本当にそれだけであんなに犠牲者を出すものだろうか?とてもリスクに見合うリターンが有るとは思えない。
「理由は幾つか御座います。キキさんの仰る通り、ダンジョンから得られるアイテムは、外では貴重品なので富を求める者も一定数います」
ダンジョンに潜るのは、それほど儲かるのだろうか?
「しかし、彼らがダンジョンの攻略を進める最大の理由は、我々が流した情報に依る所が大きいと思われます」
「情報ですか?」
「はい。それを手に入れたら、世界を手中に収める事が出来ると、言われている物の存在です」
一気に壮大な話になったよ。
「それはどんな物なんですか……?」
「あらゆるモノを創造できる、賢者の石です」




