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自己紹介です

「良かったわ~。断られたらどうしようかと思っちゃった」


 心底安堵したようにアイリスは喜んだ。


「因みに、俺が断った場合はどうなったんですか?」


「そうね、(いく)ばくかのお金を渡してお別れかしら?」


「え?元の場所に戻すとかでは無いんですか?」


「それは無理よ、元の場所に戻す方法を知らないもの」


 召喚って実は、身勝手な手段で人を勧誘しているんじゃ……。


「そ、そうなんですか。はははは」


 思わず乾いた笑いが出てしまった。


「ふふふ、召喚には色々条件を付けられるから、お互いに悪いことに成ることはまず無いわ」


 そんな俺の心の内を察したのかアイリスさんはフォローを入れてきた。


「それよりも新しい仲間が出来たのだから、早速みんなに紹介しないとね」


 暗にこの話はもう終わりとでも言うように話を変えてきた。そうして彼女は徐に一辺10cmほどの正立方体の物を取り出すとそれに向かって話し始めた。


『みんな、新人君が私の部屋にいるわ。一同集まってちょうだい』


 俺は彼女が取り出した正立方体の物を見ているのに気が付いたのか


「これ?これはフロアマスターだけが持つダンジョン内だけで使える便利道具よ。このフロアに関しては殆ど何でもできるわ」


「へー、不思議な道具ですね。無制限に使えるんですか?」


 何でも出来る道具、そんな物が有るのなら是非とも今まで蓄えてきた知識を使って色々やりたいのだが……。


「無制限にはできないわ。月毎に使える限度が決まっているの。それにこのフロアは侵入者も来ないから他のフロアより限度が低く設定されてるのよね」


 そう言いながらアイリスは困った顔をしていた。フロアの管理者として限度の低い中での遣り繰りに四苦八苦しているのだろう。


「本当、美味しいお菓子はコストが高くて困っちゃうのよね」


 ……遣り繰りってのは、俺には予想出来ないくらい難しいんだな。今度俺の持っている知識の中にあるお菓子を再現してもらおう。


そんな話をしていると外から声が聞こえてきた。


「こんにちはー、アイリスちゃん、来たよー」


どうやら先程呼び出した人たちが到着したようだ。


「あら、来たわね。入ってらっしゃい」


 そう言って彼女が招き入れると四つの影が入って来た。


「やっほー、おまたせー、キーちゃん惨状!」


 最初に入って来たのは、俺を探していた二人組の白鳥型の帽子を被り、熊野着ぐるみ姿の見た目10代前半の少女、彼女のファッションには疑問が残るが、なかなか可愛らしい少女だ。


「お待たせいたしました。失礼します」


 次に入って来たのは、俺を捕まえようとしていた女性、グレーを基調とした皺一つないメイド服を乱れ一つ無く着こなしている妙齢な女性。その佇まいは真面目が服を着て歩いているようなそんな印象を受けた。


「アイリス様の忠実なる僕テト、ここに馳せ参じました!」


 続いて入って来たのは、他の人たちとは一味違い、人の姿をしていなかった。その姿は、雫型を逆さにしたような青白い俺と同じ霊体の身体、顔と言えるものは何も無く、その変わり内部には常に気泡の様なものが流動していて忙しなく動いている。最も人間離れしている人(?)だ。


「……」


 そして最後に入って来たのは、あの時俺と視線が重なった鎧、彼?彼女?は相変わらず左手に頭、右手に鍬を持っていた。頭部からは前回同様視線を感じる。ただ落ち着いている今なら分かるが、嫌な視線は感じない。


 入って来たのは全員で四人のようだ。







「みんな集まってもらってありがとう。」


 アイリスはそう言って、俺の事を全員に紹介してくれた。


「みんな、新しい仲間が増えたわ。スピリットのピット君よ、仲良くしてね」


 彼女はそう言いながら俺を皆の前に勧めた。


「こんにちはみなさん、今日からお世話になることに成ったピットです。みなさんと共に働けることを嬉しく思います」


 お辞儀をしながら俺は挨拶をした。少し緊張してしまい、固い挨拶になってしまった。


「わー君が新しい人だねー、私はキキモーラのキキ、よろしくね!」


 最初に自己紹介してくれたのは、着ぐるみと帽子を被っている少女だった。


「彼女は貴方の教育係になるわ。彼女の言うことを確り聞いてね」


「はい」


「分からないことは、何でも聞いてねー」


 どうやら彼女、キキさんが俺に色々と教えてくれるらしい。少しだけ不安だ……。


「次は私ですね。シルキーのシエラと申します。墓城の家事全般を担当していますので、何かあればお申し付けください」


 次に紹介してくれたのは、シルキーのシエラさん、彼女はメイド服を着ているだけあって家事が仕事らしい。あの只管長い廊下の掃除とか考えただけでも寒気がする……。


「次は俺だな。種族はスプライト、名前はテトだ。アイリス様の忠実なる僕にして側近!第9フロア期待の新人だ。よろしくな!」


 続いたのは、スプライトのテトさん。側近が新人って大丈夫なのだろうか?


「あははーテットン、何時から側近になったの~?」


「新しくピットさんが入られたのに、期待の新人はおかしくありませんか?」


 側近はどうやら『自称』が付くらしい、それにシエラさんの突っ込みも的確だ。


「ぐぬぬ、しかしアイリス様の忠実なる僕であることは事実だ!」


「あはははは、テットンは一途だもんねー」


「確かに第9フロアの下僕は貴方にしか務まりませんね」


 あれ?シエルさんって、結構毒吐くみたいです。


「ちっ、違う!俺はアイリス様専用なの!!」


 どうやらテトさんは弄られキャラみたいだ。そんな三人で盛り上がっている中、唯一人沈黙を保っている存在がいた。俺がそれを気にしているのに気が付いたのかアイリスさん教えてくれた。


「彼はデュラハンの半蔵君よ。寡黙で誰も声を聞いたことがないわ。でも強くってとっても頼りになる子なのよ」


「半蔵さんは第9フロアのボス役ですからね」


 寡黙で強い半蔵さん。いくら寡黙でも誰も声を聞いたことないなんて有るのだろうか?強さは透明状態の俺を見る事が出来たのだから他の三人より強いのだろう。フロアボスらしい。


 それより、今この場が俺の抱える疑問を解消するのに打って付けのタイミングではないだろうか!


「あの、半蔵さんはどうして鍬を持っているんですか?」


今俺が抱える最大の謎に迫る!


「ああ、半蔵君は畑仕事が趣味なのよ。それに私たちが保管している武器の中で一番強いのよね」


「あははー、半ちゃんは暇さえあれば畑を耕してるからねー」


 ハイ、趣味と実益を兼ね揃えた万能道具でした。半蔵さんは何を思ったのか持っている鍬を天高らかに掲げた。


「あらあら、半蔵君一番のお気に入り道具に、興味を持ってもらって嬉しいみたね」


 まるで赤子がおもちゃを自慢するかの様に鍬を見せつけてくる。彼は意外と可愛い一面を持っているようだ。







 こうして俺達が自己紹介をしていると、アイリスさんの忠実なる僕であるテトさんが別の話題を切り出した。


「アイリス様、こうして新人が入ったのですから、俺にも雑用以外の仕事を貰えないでしょうか?」


 どうやらテトさんは俺が此れから就く雑用の仕事をしていたらしい。


「あら?そうねぇ、ピット君に雑用をしてもらうとテト君の仕事がなくなっちゃうわね」


「えー、でもアイリスちゃん。今はどこも人手は足りてるよ?」


「はい。キキさんの仰る様に、今このフロアでは人手は十分に足りています。それにテトさんは他者より優れた物を何も持っていないので、専門の仕事を与えるわけにもいきません」


 ここにきて炸裂するシエラさんの毒舌、余りに辛辣なお言葉にテトさんの体内の気泡が動きを止めた。


「ぐぬぬ、認めたくない、この事実……」


 自覚が有るのか?……テトさんはそこから先の言葉を紡げないようだ。


「あらあら、そんな事は無いわよ。でも仕事が無いのは事実ね。取り敢えずテト君には今まで通りの仕事をしてもらいましょう。ピット君には、まずここでの暮らしに慣れてもらいます。それまでは通常業務を熟してもらえればいいわ」


 そんな訳で、俺は暮らしに慣れるまで通常業務(訓練と侵入者の排除)のみ(こな)せば良いらしい。


「はーい、それでは自己紹介も終わったし、各自持ち場に戻ってもらって良いわよ。キキちゃんはピット君の事をお願いね」


「はい「まかせてー」「畏まりました」「了解です!」「……」」


 こうして俺は新たな居場所を手に入れた。あの何も無い空間と比べると、ここには色々なモノが有る。俺はこれからの生活に大いに期待を膨らませた。


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