表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/29

同行者との交流

 ゴトゴトと馬車が凹凸の激しい道を進む。


 俺達は冒険者のような恰好をした四人組の隣の席に腰を下ろした。


 この馬車は、二人掛けの椅子が対面に設置されたブースが四か所設置されている。席一つ一つはそれ程大きく無いので、体格の大きな男性などは非常に窮屈そうに座っている。正直彼一人で席二つ分を確保した方が良いのではないかと思う。


 そんな風に出来るだけ視線を送らないように彼らを観察していると、彼らの方から声を掛けてきた。


「あの、随分軽装なようですが、ダンジョン攻略に行ってらしたのですか?」


 声を掛けてきたのは、神職であろう女性だった。どうやら俺達の姿がダンジョンに挑むには余りにも軽装だった為、疑問を覚えたらしい。それに俺達は荷物も非常に少ない。ダンジョン最寄りの集落から離れるには少し違和感のある格好なのだろう。


「いえ、我々は見識を広める為の旅をしています。こちらにはその一環で赴きましたのでダンジョンへは挑戦していませんよ」


 彼女の質問に答えたのはシエラさんだ。こういった時の対応を事前に決めていたのだ。この任務が初めての俺では、何処かでヘマをし兼ねないので、彼女の対応を見て勉強することにしたのだ。


 シエラさんの答えを聞いた女性は納得したようで、深く頷いている。パーティーの後衛だけあって、そういった些細な違和感も見逃さない目を持っているらしい。普通は斥候職の者が気付きそうなものだが、この双子はまだ若いようなので、年の功といったところだろうか。


「旅人とは珍しいですね。何方からいらしたのですか?」


「ここより遥か南方のテイーゼル王国からです」


 このテイーゼル王国とは、俺達のダンジョンがある場所から遥か南にある小国の名前だ。小さな国なのだが、周囲の地形が天然の防壁になっていて、遥か昔にあった大国の侵略をもものともしなかった国である。その為、今では一種の不可侵領域となっていて、不仲な国同士の会談の場所としても使われている。


 距離で言えばここから寄り道をせずに一直線できても三カ月はかかる。それも結構無理な工程が前提だ。普通の人であればその倍の半年はかかるだろう。


「それはまた随分遠くからいらしたのですね。よければ旅の道中のお話をお聞き願いませんか? あ、失礼しました。私は冒険者のティートと申します」


 その後、他のメンバーも自己紹介をしてくれた。神職であろう女性がマリナ、レンジャー女性がクリム、レンジャー男性がクリスと言う名前だ。


 俺達もそれに続いて名前を名乗る。これは特に偽名などは使う予定はないので通常通りだ。その方がヘマをしにくい。


 そして設定上、俺達はかなりの長旅をしてきたことになっているから、本来であれば話題に事欠かないのだろうが、飽くまでも設定上なので大した話は無い。現に俺達が出発してから何一つイベントも無くこの場に居るのだ。寧ろこの冒険者達との会合が初イベントとも言える。


「ええ、構いませんよ。それではあれは——」


 しかしそこは優秀なシエラさん。俺の様に外出童貞を脱したばかりの新人とは違う。彼女はこれまでにも様々な経験をしているので、それを繋ぎ合わせて摩訶不思議ストーリーを作り出すのだ。


 因みに、ここまで俺とキキさんは挨拶以外の言葉を発してはいない。一応何かあれば俺も喋るのだが、キキさんは完全に寡黙キャラを作ってもらう事になっている。


 一応、俺達一向はテイーゼルの商人のお嬢様とお付人としての設定がある。これは見た目的な事を加味した上での設定だ。ただ、キキさんの喋り方は独特なので、出来るだけ喋らない方が、信憑性があると本人からの自己申告で決まったのだ。


 少し言葉を濁していたが、以前ボロを出した事があったらしい。


「——となって、無事に切り抜ける事が出来たのです」


 シエラさんの見事な物語に、四人の冒険者達は完全に聞き入っていた。


 一見すれば嘘くさい話だが、そこに真実を織り交ぜる事で信憑性を跳ね上げている。ちょっとした小物を使う事でその効果も倍増だ。


 いつしか彼らは感心したような顔をしている。正直横で聞いていた俺も思わず納得してしまいそうになった。ここまで上手く誤魔化しているのに俺がボロを出すわけにはいかない。


「凄いです。我々も冒険者なんて職業をしていますが、そこまでの冒険はしたことがありません」


「本当ですね。私達なんてダンジョンに潜ったり、町の周辺で魔物を退治するくらいです」


「物語みたいだねー」


「冒険譚だねー」


 兼ねがね彼らからは好意的な印象を持たれたようだ。真実を知っている俺ですら納得しかけたのだから彼らが信じるのは当然だろう。


「もし宜しければそちらのお話もお聞かせ願えませんか?」


「ええ、今の話を聞いた後ではお恥ずかしいのですが——」


 一通り語り、区切りの良い所で相手へ要求する。非常に自然な流れで相手の情報を聞き出す手段として有効な手だ。それに此方の情報を極力出さないようにするのにも一役かっている。あまり設定を増やし過ぎると後で矛盾がでたりする恐れもある。


掻い摘んで彼らの話を纏めるとこうだ。


 、今のメンバーとして活動する切っ掛けとなるゴブリンの大規模討伐に関する話だった。


 元々双子を覗いて、皆違うパーティーで活動していたらしい。特にティートは結構有名なパーティーに所属していて、多少名前が売れていたようだ。


 しかし、冒険者ギルドが主体となって行ったゴブリンの大規模討伐は、当初予定していた数よりも遥かに多く、予想以上の損害を出してしまったらしい。


 勿論その中には多くの人死にや行方不明者を出した。


 そして、この四人のメンバーは、本来であればその行方不明者のリストに載っていても可笑しくない状況にまで追い込まれたようだ。いや、寧ろ一度行方不明者リストに載ったらしい。


 個々で理由は様々だったが、ティートは撤退時に殿を務めて敵地に取り残され、マリナは一度ゴブリンに捕まり攫われ、双子レンジャーのクリムとクリスは当時の仲間に囮にされて孤立してしまったようだ。


 ただ、何の偶然か、ティートが奮闘していた場所に偶然マリナを攫ったゴブリンが通りかかり救出し、逃げまどっていたクリムとクリスがその現場に遭遇。その場で臨時のパーティーを組んでなんとかその場をやり過ごしたようだ。


 広範囲を守れるティートに、簡単な怪我であれば即治せるマリナ、後方から匠な射撃でゴブリンの群れを戦術的に誘導できるクリムに、ティートがカバー出来ない範囲を罠を駆使して防衛できるクリス。


 偶然に偶然が重なって、一見チグハグなバランスに見える即席パーティーだったが、火事場のなんとやら、自分たちのスタイルを確立したことで、無事に生き残ることができたのだ。


 そして今もこの四人でパーティーを組んでいるのは、ティートの元パーティーメンバーは、多くの人を救うために無茶な作戦を実行した結果全滅。マリナは所属していた教会から、一度ゴブリンに攫われた事で処女性を疑われて追放。双子は裏切り者と同じパーティーは組めないと、当時のメンバーを訴えた後脱退したらしい。


 そして一度解散した臨時パーティーだったが、偶然冒険者ギルドの中で再開し、お互いがフリーだったので正式にパーティーを結成するにいたった。


 俺は彼らのパーティー結成ストーリーに聞き入ってしまった。


 正直、シエラさんの用意したものとそん色ないストーリーだった。これが現実に起こる偶然にも驚きである。


 実際、今のメンバーで活動するようになって、以前ティートが所属していたパーティーよりも名前が売れているらしい。


 因みに、彼らのパーティーネームは『運命の絆』


 これは捻りも何も無いと感じた。彼らには悪いが、これは俺の率直な意見だ。


 そんな風に俺達は互いの事を話していると、馬車の外が少し騒がしくなっている事に気が付いた。


 俺達は外の異変に確認しようとした時——。


「敵襲!」


 どうやら次のイベントが始まったようだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ