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これも一つの出張のカタチ

ついにダンジョンから外に飛び出します!

 ダンジョンで生活をする中で最大の敵は時間である。基本的に寿命と言われる概念を自覚する事が希薄な第9フロアは余計にそう感じる。その中で、いかに自分で何をするか考える事が重要になる。このフロアで暇を持て余したが最後、大抵は長期間の眠りに入ってしまう。新人である俺にはあまり関係ないが、キキさんの同期にはそういった者が多いらしい。


 それ故ここの住民は、チャンスは絶対に逃さない。そうこの俺の様に。


「——って訳で、ダンジョンの外にある町まで調査に行ってきて欲しいの」


「わかりました。お任せください」


 ダンジョンでは定期的に周辺の町の調査をする。今の流行りや、需要を調査するのだ。ダンジョンから齎される資源は、彼らにとって無くてはならない物だが、必要以上に与えると各国のパワーバランスが変わって争いだす。


 そうするとダンジョンを攻略しに来る者達が減って、結果的にダンジョンの収益にも関わってくるらしい。それを防ぐために市場調査をして、過不足を確認し、世界のパワーバランスをコントロールする。なんとも壮大な話だ。


「それでね。今回のメンバーはピット君に集めてもらいたいの」


「俺がですか?」


「ええ、外への偵察だからある程度人員は決まっちゃうけど、それを見極める力も重要なのよ」


 流石に町の中に溶け込むのに、人の形を取れない者をメンバーに加える訳にはいかないだろう。それに市場調査に適した能力を持った者を選ぶ事も、観察眼を見極める為に試されているのだと思う。


「わかりました。調査を行うのに至って、必要な物は至急されますか?」


「それは安心して、必要な物資と調査案件を記した書類を準備してあるから、後で確認してちょうだいね」


 流石に何もなしで放り出すことは無いようで、調査に必要なものは揃えてくれるらしい。


 アイリスさんの部屋から出るときに調査に向かうための資料を貰う。取り敢えず準備をするにも、何が必要でどういった状況が考えられるかを知らない事には、準備のしようがない。


 落ち着いて資料を読むために自室へと向かいながらどんなメンバーで向かうかを考える。


 まず前提として、人間に擬態出来る事が必須条件となる。この時点でテトは除外せざるをえない。そういった意味では半蔵さんもメンバーに選ぶには相応しく無いだろう。鎧姿だけでも目立つのに、彼は頭をよく忘れる。完全に首なし騎士であることはバレるとみて間違いない。


 こうなってくると選択肢はキキさんとシエラさんになるのだが、シエラさんはともかく、キキさんはいつも着ぐるみを着ているので調査のメンバーに選ぶのに多少抵抗がある。一般的な服を着てくれるのであれば同行をお願いしたいが、普段の格好であれば不可能だろう。


 そういった意味ではシエラさんは是非とも同行を願いたい。彼女が普段から取り扱っているのは情報である。そういった意味でも彼女の目線は調査する上で非常に有用だろう。それに見た目も殆ど人間と変わらないので、今回の調査に最適だ。それにこれだけの条件が揃っているとなると、過去に調査の経験があってもおかしくない。


 自室へと戻り、買ったばかりの椅子に腰かける。以前まで殺風景だった俺の部屋も、今では文化的な生活を営める、優れた機能美とデザイン性を両立した部屋へと変貌している。


「さて、どんな事を調査すればいいのかねぇ」


「なにかやるのか?」


「にゃんにゃう?」


 俺の部屋なのに別の住民の声が聞こえる。まあ、犯人はわかりきっているのだが……。


「何故俺の部屋に居座っている?」


「勿論、暇だからに決まっている」


「にゃん」


 部屋を整えてからというもの、テトルリが俺の部屋によく入り浸っているのだ。部屋主が不在でも気にすることなく入ってきて戦略チェスゲームで遊んでいる。このゲームを買うにはそこそこ大金が必要になる為、テトはまだ手に入れていない。いや、俺の所で遊んでいる所を見ると買うつもりもないのかもしれない。


 基本的には二人で遊んでいるのだが、稀に他の人も勝手に招いて遊んでいる。そのうちの一人はだいたいキキさんだ。あの人忙しそうに見えて実は暇なのだと思う。


 因みに、ゲームの勝率は9割ルリが勝ち越している。残り1割もルリの慈悲ではないかと予想している。テトは実力だと言い張ってはいるが信憑性はない。


「それで、何をするんだ?」


「ああ、アイリスさんに外の町の調査をお願いされたんだよ」


「ああ、偶にやるやつか。残念ながら俺は参加できないんだよな~」


「人間への擬態が必須条件だしな。テトの場合相当格を上げないとこの依頼には参加できないな」


 実際テトのような霊体種でも、人間に擬態する事は可能なのだが、相当実力を備えてからでないと不可能だ。


「まあ、それは仕方ないさ。それで、誰と行くか決めたのか?」


 テト本人も自覚があるようで、特に気にした素振りは無い。


「まずシエラさんにお願いするつもり。他に誰か適任の人っているかな?」


「それならキキさんが良いと思うぞ。その調査基本的にキキさんとシエラさんの二人で行っていたし、慣れてると思う」


 なんと、あのキキさんが元々担当していた仕事だったらしい。


「それって着ぐるみ着てたか?」


「それはないだろ。普通に旅人風の格好だったぞ。確かにあの姿は珍しいがあの人もTPOは弁える……だろ?」


 何故疑問形なのか聞きたいが、取り敢えずキキさんをメンバーに誘う候補に入れる事にする。寧ろ経験者二人に今回の仕事を教えてもらうつもりで頼んだ方がいいだろう。


 取り敢えず二人を誘いに行く前に資料に目を通すことにする。テトルリにはそのままゲームで遊んでいてもらう事にして、俺は自分の事に集中する。


 資料を見る限りでは、大きく分けて、食料、鉱石、人の流れを調査する。又町に潜入している人員がいるので、その情報を受け取りつつ、自分達でも情報を集め、現在の世界の状況を調べてくるのが主な仕事に成るらしい。特に今回向かう町はそういった情報を持った人間が集まりやすい場所らしいので、色々情報を集めるには打って付けの場所らしい。


 いままでは女性二人が担っていた仕事だから、女性では入りにくい場所にも俺であれば入りやすいので、そういった所も俺に依頼が回って来た一つの要因なのだと思う。


 一通り資料に目を通した所で、早速二人を誘いに向かう事にする。テトルリはそのままゲームを続ける様なので、二人の残したまま部屋を出る。


 普段二人は決まった場所に居ないので探すのは大変なのだが、今日は俺が協力した新作お菓子の発売日なので、だいたい居場所は分かっている。お菓子の販売は食堂横に売り場が設けられているので彼女達も食堂に居るだろう。


 実際、彼女達二人を見つけるのはそれ程苦労することは無かった。二人の姿は並んでいる者達の中でも非常に目立っていて、簡単に見つかった。基本幹部である彼女達は目立つのでこういった時は楽で良い。俺やテトなんかは殆ど風景に溶け込んでしまうのでこの違いは何だろうか? 最近はルリのお陰でテトも悪目立ちしているので幹部の中では俺が最も影が薄いかもしれない。


「キキさん、シエラさん、こんにちは」


「あ! ピーちゃん、やっほー」


「こんにちは、ピットさん。どうされました?」


 楽しそうに談笑している二人の間に入っていく。この二人、なんだかんだと仲が良くて一緒に居る事が多いので、探すときには非常に助かる。


「実はアイリスさんから調査の依頼を受けたので、そのメンバーにお二人を誘いに来たんですが、よければいっしょ——」


「「わかった!行くよー(分かりました。行きましょう)」」


 被せ気味に答える二人に面食らうと——。


「「料理長!調査隊物資優先権を主張します!」」


 話し方の違う二人の声がユニゾンする。


 そう言えば資料の最後の方にそんな権利が書いてあった気がする。二人の即答はそのためか……。


 兎に角、これで調査メンバーは揃った。この後はお茶をしながら作戦会議をしよう。勿論、お菓子は俺の持ち出しだ。




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