キャスパリーグ
少し短めです。
進化、それは特定の条件を満たすことで辿り着く、種としての存在そのものを格上げする特殊な現象。
本来、滅多な事では進化など起こることは無い。どの位珍しいかと言えば、百年に一度あるかないかの現象だ。しかも、それを目の前で見る確率など、いったいどれ程の確率なのか想像もできない。
俺の手の中では、今だ自分に起こったことを何一つ自覚することなくスヤスヤと眠る小さな生き物……。そう、この子は生きているのだ。ケットシーとして生を終え、ケットシー型の霊体種となり、そして進化することで猫又(仮)へと至った。
いや、猫又って確か普通のネコが、三桁の年月を生きて初めてたどり着けると聞いたことが有るから、他の何かかもしれない。
進化をしても指をチュパチュパ吸っている姿が変わらないのが、いまだ赤子のような存在なのだと訴えかけてくるようだ。
「……どうする?」
それは俺が聞きたいのだよテト。
俺達が、この小さな猫又(仮)をどうするか悩んでいると、扉がノックされた。
「ピットさん、こちらにテトが来ていませんか?」
どうやら俺達に一筋の光が差したようだ。
「はい、居ますよ。入って来てください」
そうして入って来たのはシエラさんと、キキさんだった。この局面にキキさんが居るのは多少不安に思うが、この際仕方がない。
「ちょうどよかった。少し困っていたんです」
そう言って、腕に抱いている猫又(仮)をシエラさんに差し出す。未だ指の吸いつきから解放されない俺は自然と抱いたままだ。
「これは……進化ですか……」
「へー、可愛い子だね~。え?進化したの?」
各々違った反応を示してくれるが、やはり進化とは相当珍しいのだろう。
「ええ、それもあるんですが。そもそもこの子はどうしたんですか?」
そう、確かに進化した事には衝撃を覚えるが、この元ケットシー現猫又(仮)ちゃんがどちら様のお宅の子なのかも知らないのである。
「この子はルリちゃんです。もとはケットシーだったのですが……、これは……キャスパリーグに進化したのでしょうか?」
シエラさんが疑問形で答えてしまっては困る。キャスパリーグとは聞いたことのない種族だが、とにかく状況が変わってしまったのは違いない。この子受肉しちゃってるし。
「ねーねー、私にも抱かせてー」
空気を読まないキキさんは、このルリちゃんを抱っこしたいようだ。確かに可愛くて愛でたくなる気持ちは分かる。
俺はそっとキキさんに引き渡すと、自由になった手でキキさんのもう片方の手を取り、ルリの口元に運ぶ。そして吸われている指を素早く引き抜くと、キキさんの指を瞬時に挿入した。完璧である。
「おわぁ!この子指吸ってくる!!」
初めてキキさんの間延びしない言葉を聞いた気がした。取り敢えずルリから解放された俺は本来の問題に対処することにした。
「それで、この子をどうするんですか?」
「ええ、本来であれば、同じ種族であったピットさんに、ルリちゃんの世話を任せようと思ったのですが……」
なんとルリは進化前スピリットだったらしい。この子が進化しなければ個性が一つ奪われていたかもしれない。自分のキャラが薄くなるのを、未然に防げたのは僥倖だ。
「それじゃあ、今度は誰が世話するんですか?キャスパリーグなんて種族聞いたこともないですよ?」
テトが言うことも最もだ。そもそも霊体の俺達じゃ生活スタイルが違いすぎる。
「キャスパリーグとは、力を象徴する猫の精霊の事です。私の知る限り、ここ数千年は居なかった種族ですね」
なんとも壮大な話だ。数千年ぶりの顕現とは正直付いて行けないほどの話に膨れ上がっている。
そんな時、先程まで大人しく寝ていたルリが目を覚まして、辺りをキョロキョロと見回した。俺は先程の事もあり、少し警戒したが、それは杞憂に終わった。
ルリはテトを見つけると、キキさんの腕の中から飛び出して頭に着地した。
「にゃぅ♪」
お尻をテトの頭にペタンと着けて座り込む。何が楽しいのか、テトの頭を引き延ばしたりして遊びだした。
「え?え?え?ちょ、どうなってんすか!?」
突然の出来事に、テトも言葉が乱れ気味だ。どうやらルリはテトの事を気に入ったらしい。引き延ばしたテトの頭を口に咥えてチュパチュパと吸い出すほどお気に入りだ。あのままテトはルリに全部吸われてしまうのではないかとちょっと思った。シエラさんが「バッチいですよ」なんて言って止めさせようとするが、ルリはその手を巧みに避けて、テトを吸引し続ける。ちょっとしたカオスな光景だ。
「あー、取り敢えずルリの世話係はテトで良いんでは無いでしょうか?一応実体を持っている人をサポートにつけて」
ルリが気に入ってしまったものは仕方がない。下手に引きはがして機嫌そ損ねられてもこちらが大変だ。
「おい、ピット!俺に押し付ける気だろ。お前が面倒みろよっ」
「いやいや、適材適所でしょ。ルリはテトが良いみたいだしね。お二人もそう思いませんか?」
俺はここで選択を上位存在に投げかける。俺とテトがどれだけ言い争っても、何時まで経っても決まるものでもない。
「そうですね。一旦テトに任せましょう。私の部下からサポートを回します。後の事はフロアマスターの意向を伺うしかありません」
「テットン、ラッキーじゃん~。そんな可愛い子と一緒だなんて~」
「にゃん♪」
二人の意見を聞いてテトは覆らないだろうと項垂れた。そんな傾いた頭の上でも、ルリは器用に座っているのだから不思議なものだ。
そこからシエラさんがアイリスさんに相談しに行くと言うと、テトも勢いよく自分も行くと立候補。それには勿論ルリも付いて行くことに成るわけで、ルリが行くなら私も行くと言い出したキキさんも部屋を出て行った。
なんだか、あっと言う間の出来事であったが、なかなか濃い内容だったと思う。結果的に極玉は一つ無くなってしまったが、色々と珍しい物を見られたので差し引き0ってとこだろう。
俺は気を取り直して、再び格玉の吸収をする事にした。途中で中断された為、格玉はまだ半分も残っているのだ。彼らがアイリスさんの所に行っている間当分落ち着いて格玉の吸収を行えるだろうし、はやく仮想実体構築の訓練にも取り掛かりたいのだ。
それから俺は残りの格玉を全て吸収し終わると、更に二段階ほど質が向上していることを感じられた。
本来ルリが登場する予定は無かった。
アニメって怖い( ^ω^)・・・




