ここは何処?貴方達だれ!?
初めて連載に挑戦してみます。
ここは凄く心地良い。ストレスは無く、義務も無く、罪すら無く、自我も無い・・・・事も無い。ただ希薄な意思が無数の情報として漂う個が認識されることもないそんな場所。ただどんな場所でも変わり者は居るもので
「あー暇だー」
本来、自我を持つ者が存在しない筈の場所で、彼は暇を持て余していた。
「色々なことが分かるのは良いんだけど、分かったからって何か出来るわけでは無いんだよねー、あー暇、暇」
彼は暇を潰す為に、漂う情報を覗いていたのだ。それこそ本を読むかのように。
「かといってここでは何も出来る事がないし……ん?」
そんなある時何もない空間に突然、何の前触れもなく一つの扉が現れた。
「おお!何だこれ?こんな所に扉なんてあったか……?」
彼はその扉を訝しげに観察した。見た目は凝った装飾も無く、シンプルなデザインでドアノブが付いているだけの変哲もない扉だった。
「何だろう、扉ってことはこの先に何かあるのか……?って、なっ何だこれれれれれれぇぇぇぇぇぇぇ~~~~!?」
それは彼にとって無意識の動作だったのだろう。彼がドアノブに手を触れた瞬間突然
扉が開き彼は扉の向こう側へと吸い込まれていった。彼の叫び声がどんどん遠ざかって行く中、扉は静かに閉まり何事も無かったかのように静寂に包まれた。そしてその扉は現れた時と同じように何の突然消えていった。
ここは凄く心地良い。ストレスは無く、義務も無く、罪すら無く、自我も無い。ただ希薄な意思が無数の情報として漂うだけの、それだけの場所。
「うーん、いったいここは何処だ?」
彼は扉に吸い込まれた後、気が付けば薄暗い場所に居た。そこは石を積み上げて建てられたであろう大きな建築物の屋上のような場所であった。
「おー、でっかい建物……かな?しかし、周りには何もないな」
彼が眺める先には只管に広い荒野が広がっていた。正確には色々なものが建っているのだが、彼が立っている場所はそれらが見えない程の高所であり、小さなものは視界に入っても気が付く事が出来なかった。
「さっきの扉もいつの間にか消えているし、ここが何処かも分からないな」
彼が途方に暮れていると遠くから誰かを探しているような声が聞こえてきた。
「ねぇシーちゃん、見つかった~?」
「いえ、キキさんの方ではどうでしたか?」
「全然見つかんないよー。アイリスちゃんはこの辺りに居るって言ってたんだよね?」
「はい。フロアマスターは墓城の最も高い場所に現れると仰っていました」
影に入って姿は余り良く確認出来なかったが、声色から成人前の少女と妙齢な女性だと思われる。
(おお、第一村人(?)発見!しかし誰か探しているのか?もしかして俺のことを探してたり……そうだとしたら俺を探す理由はなんだ?)
彼があれこれ考えていると、二人の女性は探し人の探索に戻ろうとしていた。
「兎に角ここには居ないみたいだから~、別の場所探してみよっか」
「分かりました。早く目標の人物を捕まえましょう」
そう言って彼女達は背を向けて歩いて行った。
(捕まえる!あの人捕まえるって言った!おいおい、マジかよ俺捕まったらどうなっちゃうの)
彼が考え込んでいると、二人の女性の姿は何処にも見えなくなっていた。
(何にしてもこのまま留まるわけにはいかないな……とにかく捕まらないようにしないと……)
かといって彼が持っている情報はそれ程多くない、その為彼は彼女達の姿が見えなくなった方に慎重に向かうことにした。進んでいくと程なくして下に降りる階段を発見した。
(おお、ここから降りられるのか。兎に角ここが何処なのか分かりそうな手掛かりを探そう)
こうして彼は薄暗い階段を下りて行った。
階段を下りた先は廊下が三方に伸びていて、明り取りの為なのか等間隔に蝋燭が設置されていた。何方に進むか一瞬悩んだ彼だったが、何も情報を持っていない状況ではどの道を選んでも変わらないと思い、真っ直ぐ伸びている道を選んで進んでいった。そこからは非常に長い只管一本道の廊下が続いた。
「なんでここは部屋一つなく只管廊下が続いているんだよ」
そんな代わり映えの無い状況が続いたせいか思わず愚痴をこぼした時だった。
「あれ?今声が聞こえなかった?」
「本当ですか?私には何も聞こえませんでしたが」
なんと先程の二人がいつの間にか近くに来ていたである。
(しーーーまったーーーーー。さっきの人達が近くにいたのか!?)
「絶対聞こえたよ!そこを曲がった先から声がしたんだよ!」
後悔してももう遅い。彼女たちは思いの外、近くにいたのである。彼は存外抜けているようだ。
「そうですか。この先は当分一本道ですから、やっと捕まえられそうですね」
(やばい!やばい!こんな所かくれる場所も無いじゃないか!)
自らの不注意で危機に陥った彼は思わずその場で蹲ってしまった。そんな事をしていると彼女たちが姿を現した。
「見つけたよー、君が今日召喚され……あれ?」
「……誰もいらっしゃいませんよ?」
しかし、彼女たちには目の前で蹲っている彼のことが見えていないのか辺りを見回している。
「あれれ~?声がした筈なんだけどなー?」
「やはりキキさんの気のせいではないですか?」
「あははーごめんね~聞き間違いだったみたい」
「仕方ないですね、此方には来ては居ないみたいですから別の場所を探しましょう」
「はーい」
そう言って彼女達は彼が来た道を進んでいった。
(あ、あれ?目の前を通り過ぎて行ったぞ?もしかして俺の姿って見えないのか?)
彼女達が目の前の彼に気が付きもしないで通り過ぎて行ったことに彼は疑問を覚えた。
(そういえば俺も自分の姿って見たことないな……あれ?俺ってどんな姿をしているんだ?)
彼は今更ながらの疑問を抱きながらも前に進むことにした。
(まぁ今は姿が見えないのは都合がいいか、考えるのは後にしよう)
こうして彼は自分のことは一旦考えることは止めて、先程よりも大胆に進み行くのだった。
暫らく廊下を進んでいくと扉の開いている部屋を見つけた。その扉は一際大きく重厚感のある、見ているものに威圧感を与えるような装飾がされていた。
「お、不用心な人も居るものだ。これじゃ泥棒に入られちゃうぞー入っちゃうぞー」
不安を誤魔化すかのように、彼は軽口を叩きながら扉の開いている部屋に入って行った。扉を潜ったその先には、広々とした殺風景な空間が広がっていた。
「やたら広い割に何もない寂しい場所だな」
壁の装飾は非常にシンプルな造りであった。ただシンプルであっても非常に頑丈な作りをしているように見て取れた。それこそ、この中でどれだけ暴れてもビクともしないと思われるほどに。
そんな部屋の真ん中には重厚で作りが確りしている武骨な全身鎧が一つだけ鎮座していた。左手には鎧の頭部を脇に抱えるように持ち、右手には洗練されたでデザインの得物が握られていた。
「何だよコレ……部屋に一つだけ置いてある鎧も気になるけど……鎧が鍬を握ってる事に疑問を感じざるを得ない」
彼は本来ありえない組み合わせの鎧に近づき、繁々とその鎧を観察した。
「そもそも、どうやって鍬を握っているんだ?まるで人が中に入っているような……え?」
そんな時だった、彼が鎧の頭部に視線を移したときに目が合った。彼がジロジロと鎧を観察している時に、鎧もまた彼を観察していたのだ。
「ぎっ」
「?」
「ぎゃあああああああああああああああああ」
「!?」
そんな本来有るはずの無い事に、彼は思わず叫び声を上げてしまった。
(やばい、やばい、やばい、こいつ俺の事見えてる!と、兎に角ここから逃げないと!)
そこからの行動は非常に迅速で、その場を脱兎のごとく逃げ出した。あとに残された鎧が思わず左手を伸ばしてしまったのであろう。空を切る左手と、転がる頭がそこには残された。
来た道を必死に戻り無我夢中で走り続けた。途中先程の女性二人が前を歩いていて、抜き去って行ったことに気が付きもしないで。
「あれ~?今何か通らなかった?」
「いえ、私は何も感じませんでしたが、また気のせいではないのですか?」
「そうかなぁ~?私疲れているのかな?」
「そうかもしれませんね。目的の人物も見つかりませんし、一度休憩を挟みましょうか」
「賛成~♪、今日のおやつは何かな?」
「ふふふ、今日は先程焼いておいたアップルパイですよ」
そんな彼女達が呑気な会話をしている間も必死に彼は走り続けた。
どれだけ走り続けたのだろうか、先程から状況が二転三転している彼は何時の間にか雰囲気の違う場所に立っていた。そこは先程まで居た場所とは違い、装飾の凝った品のある場所だった。
「はー、さっきの鎧はいったい何だったんだ?」
自分が置かれた状況が全く把握できず、疑問ばかりが湧いてくる。
「それに結局此処は何処なんだ?」
そんな彼の疑問に初めて答えが返ってきた。
「ふふふ、ここは私の私室ですよ」
「え?」
そこには、美しい女性が立っていた。長いシルバーブロンドに切れ長の目、整った顔立ちをしていて正にお姫様のような人だった。ただ、只者で無い事は直ぐに理解した。いや、理解させられた。放たれる気配が圧倒的な強者だと雄弁に物語っていからだ。逃げることなど考えもしなかった。もはやどうにもならないと捕まる覚悟をした時————。
「あらあら、貴方は召喚に応じた新人君ね。私達第9フロアの新たなメンバーとして歓迎します♪」
「はい?」
どうやら俺は歓迎されるらしい。
初の連載投稿なので、不備があればその都度変更していきます。




