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宇宙戦争 2234年  作者: レッサーパンダ
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第五話 自由浮遊惑星シュファラウシア沖の戦い

「間もなくシュファラウシアです」

「分かった」

本木艦長の報告に、司令の足立が答えた。

ここは戦艦「狭義(せぎ)」の艦橋。狭義はシュファラウシア攻略戦に参加している戦艦の一隻だ。このシュファラウシア攻略戦には戦艦6隻、重巡洋艦12隻、軽巡洋艦20隻、駆逐艦32隻、哨戒艦4隻が参加している。

(まさか…こんなことになるとは……)

足立はそう考え、一週間前のことを思い出した。


~一週間前~


「なにぃぃぃぃ!?」

「落ち着いて下さい、影村参謀長!」

「しかし……大変なことになったな……」

大声で叫ぶ影村を押さえるオールディスを見ながら、グロシンは呟いた。

ここはフーヴェルにある軍総指令部の一室、第二会議室だ。ここには参謀長、参謀を始め、重要な役職の者が集まっている。昨日、自由浮遊惑星シュファラウシアに厳重に隠蔽された敵の前線基地が確認された。数年前からこの宙域を航行する艦船に攻撃があったが、全てこの星から発進していたものらしい。それだけなら基地がある、というだけの問題なのだが、それ以上に重要な事が発見されたのだ。

「シュファラウシア自体が浮遊要塞、ですか……」

影村を落ち着かせたオールディスが言った。

「うむ。何らかの方法でガスを発生させ、回りにまとわりつかせてガス型の自由浮遊惑星に隠蔽していたらしいな。しかもそれが此方の前線基地がるヴァリーア恒星系へ向かっている……」

この事にいち早く気が付いたのは軽巡洋艦「ジェーリス」の乗組員だ。最近、妙に加速しつつあるシュファラウシアの調査のため派遣された。その際に最新スキャナーを使い、基地があることを突き止めた。そのデータを解析すると、基地が不自然に建築されていることと、想像以上にエネルギー放射が起きていることをを技士が発見、更に調査すると、中心部分に構造体が見つかったのだ。また、このまま加速を続けると一ヶ月後にヴァリーア恒星系へと侵入することも分かった。

(これは何とかしないとな……)

その場に居た足立はそう考えた。


~~~~~~~~~~~~


「全艦に通達、戦闘配置!」

「全艦に通達、戦闘配置!」

足立の命令に無線士が答えた。

(しかし、狭義に帰ってくることになるとはな……)

足立は10年ほど前、狭義の航海長であった。このような形とはいえ、狭義に帰ってくることを少し嬉しく思っている。あの頃はまだ平和だったが……。

「敵艦確認!距離18光秒!数70!」

「総員、戦闘配置!」

レーダー士がそう言うと、足立はすかさず命令を下した。艦内の戦闘配置を合図するサイレンが鳴り響き、警戒灯が付く。

「フラーセイン、アドミラル・フチャリモフ、戦闘準備完了。第二戦隊も準備完了。」

無線士が報告を上げる。フラーセイン、アドミラル・フチャリモフ、狭義はフラーセイン級宇宙戦艦の一隻で、防御より機動を重視して作られた。また、主砲を前方上部に二基、艦橋やや後ろの左右両舷に二基搭載しているため、前方への全門への斉射が可能なのだ。そのためやや古いながら、数々の戦役に参戦してきたベテラン艦だ。主砲に324mm収束圧縮型光線砲を四基十二門搭載している。戦艦以外の艦も収束圧縮型光線砲だが、口径に対してのエネルギー圧縮の桁が違う。そのため、足立は砲戦では絶対の自信がある。

「目標、射程に入った……照準良し、精度よし、発射角よし」

「主砲、射撃を開始せよ」

「撃てっ!」

砲術長がそう命じると、12門の主砲が敵艦目掛けて飛んでいく。

「巡洋艦、駆逐艦、雷撃を開始」

「哨戒艦、妨害波弾発射」

レーダー士、無線士がが随時味方の状態を報告する。

「着弾!敵艦二隻撃沈!」

砲術長が、少し高ぶった声で報告をする。しかし、そういった頃には更に主砲が発射される。

有那波(ありなわ)被弾!戦列を離脱!」

敵艦も黙っておらず、攻撃を開始し、第三水雷戦隊二番艦の軽巡「有那波」を被弾させた。しかし、戦況はかなりこちらが有利で進んでいる。数の上ではほぼ同じだが、乗組員の熟練具合や艦の能力で敵を上回っているようだ。

「新手の敵艦確認!数1、艦種識別不能!新型艦のようです」

敵が残り10隻程度になったところで新たな敵艦が出現してきた。だが一隻しかこない。

「新型艦か……とはいえ一隻とは舐められた物だな」

足立が苦笑して言った。

「前方の水雷戦隊に雷撃をさせろ」

「了解」

「水雷戦隊、前方の新型艦を雷撃せよ」

『了解』

(これで終わりだ)

足立はそう思い、水雷戦隊と敵新型艦を見つめた。しかし、あと少しで魚雷が当たるその瞬間、敵新型艦から青色の衝撃波のようなものが艦首から放たれ、魚雷が木っ端微塵に砕け散った。

「何っ!?新手の迎撃システムか!?」

足立が大声を出した。そしてその衝撃波は魚雷を撃破した勢いそのままに水雷戦隊へ向かう。

(流石に艦船なら耐えられ……)

そう思った足立だったが、隊の一番前に位置していた駆逐艦が、艦首から見えざるハンマーを喰らったかのように、魚雷と同じく木っ端微塵に砕け散った。

「水雷戦隊へ退避を命じろ!」

「間に合いません!」

「なっ……!」

その瞬間砕け散った駆逐艦の後方にいた他の駆逐艦、巡洋艦計4隻も次々に爆発し、あるいはバラバラになってしまった。それ以外の艦は喰らったものの、威力が落ちていたのか沈没は免れたようだ。しかし、敵艦はその大きさからは考えられないようなスピードで突っ込んで、余程硬い艦首装甲を持っているのか味方の砲撃を弾き返し、重巡洋艦の横腹に衝突し、その重巡洋艦を中央から真っ二つに折って撃沈してしまった。しかも敵艦の方は無傷のようだった。

「なんだあいつは……」

足立が唸るようにして声を発した直後、

「敵艦こっちに向かってきます!」

レーダー士が悲鳴のように叫んだ。

「な……撃沈しろ!何としてもだ!」

足立も悲鳴のように叫び、直後、十二門の砲が発砲した。

「命中!……しかし変わらず突っ込んできます!」

戦艦は砲撃力が高いのでダメージを全く与えていない訳では無いようだが、それでもほぼ無傷だ。そして距離はあっという間に詰まる。

「回避!回避ぃぃ!」

本木が血相を変えて叫ぶ。しかし、その前に敵が艦首に衝突してきた。

(総員離艦……!)

足立はそう考えたが、それを命じる機会は永遠に来なかった。

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