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宇宙戦争 2234年  作者: レッサーパンダ
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第四話 討伐作戦三

「…さて、撃破した奴らの戦艦の残骸を拝んでやるか」

ブラードはそう言うと、副官であるバスディールに

「奴に接近せよ」

と命じた。


「ここまで来ると良く見えるではないか!」

「しかし、流石フーヴェルの戦艦ですね。原型を留めて…というかほぼ無傷では?」

「……であるな……しかし、動かぬようであるし……ん?」

ブラードはそう言って首をかしげた。今、動いた気がするのだ。そしてその瞬間、軌道修正用ノズルから勢い良くジェットが噴射され、気付いた時には艦首が此方を向き、6門の砲身がデトリスを、ブラードを捕らえた。


「撃てぇぇぇ!」

ハイデンが珍しく大声を上げて命令すると、目の前の敵艦に向かって6門の砲身から勢い良くエネルギー砲弾が飛んでいき、あっという間に着弾した。

「着弾確認!」

レーダー士はそう言ったが、それでもミサイル艦は沈まない。当たりどころが悪かったのか、そもそもミサイル艦の防御力が高いのか。

「敵艦発砲!」

「衝撃に備えろ!」

艦長が命令した瞬間、右舷から衝撃が襲ってきた。

「右舷第二デッキ被弾!損害軽微!」

被弾はしてしまったが、損害はひどくない。

「ミサイル以外の兵器も積んでるんだな」

「そりゃそうだろ」

フェスカの言葉にハイデンが反応した。

「両舷最大戦速!回頭右舷5度!」

リッターが航海長であるフェスカに命じた。

「しかし、目の前には……」

「命令の復唱はどうした!」

「は、はい!両舷最大戦速!回頭右舷5度!」

そう言うとフェスカは握っている操縦桿を目一杯押し倒した。

ただでさえ目と鼻の先だった敵艦との距離があっという間に詰まる。

「砲術長、左舷全対艦ロケット発射菅用意!」

「左舷全対艦ロケット発射菅用意!」

リッターの命令にハイデンが復唱した。フェスカと違い、聞き返したりはしなかった。その間にも距離は迫っている。しかし、こちらが減速しないので驚いたのか砲撃はしてこず、左舷……敵側からみたら右舷側に回避行動をしている。

「敵艦左舷80度、距離500m!」

宇宙空間での500mは目の前だ。海上でも陸上でも同じだが。

「対艦ロケット、発射!」

ハイデンが命じると左舷8ヶ所から煙を吹きながらロケット弾が飛んでいき、直ぐに敵艦へ着弾した。とその途端、ミサイル艦が大爆発し、沈没した。

「敵艦の撃沈を確認!」

レーダー士がそう言うとリッターが

「戦闘配置解除」

を命令した。

「さっきは危なかったですね」

ハイデンがそう言うと、リッターが笑みを浮かべた。

「あの魚雷はそういう魚雷なんだよ」

少し前、このミサイル艦と戦う前に5、6番発射菅に詰めた魚雷は粒子拡散魚雷といい、回りのエネルギー等を分散、減エネルギー化させ破壊力を無くすというものだ。そして先程はこれを発射し、魚雷のエネルギー波を見事分散させたのだ。

「艦長、艦長!」

艦内電話から突然声がした。この声はロシュだ。

「想像よりずっと早く回復したようで、目を覚ましましたよ!」

「そうか。今行く」

リッターはそう言うと指揮を副長のゾエに任せてハイデンとフェスカをつれて艦橋を出ていった。


コンコン、と医務室のドアが鳴った。

「どうぞ」

ロシュがそう言うと、リッター、ハイデン、フェスカが入ってきた。そしてベッドの上で頭や腕に包帯を巻いた一人の人物が座っており、口を開いた。

「助けて頂き、ありがとうございます。その……私以外の者はどこに?」

「残念ながら、君しか生存者はいなかった」

リッターがそう言うと彼は、そうですか……、と静かに呟いた。

「君の名前や所属は?」

「失礼しました。私の名前はヴェルナー・マーフィーといいます。重巡洋艦ラウヴィッツの艦長です」

「二佐か…若くみえるが」

「一ヶ月ほど前に前艦長殿が急病で退役なさることになりまして、その際に臨時昇進という事で三佐から二佐になりました」

「なるほどな」

年と階級は特に関係なく、50歳でも三佐の者もいれば20歳で三佐の者もいるので別に珍しくは無かったが、若くて艦長は珍しいのでリッターは気になって聞いてしまった。

「では、私も」

といい、リッターが

「私はテオフィルス・リッター。この戦艦ブレーケン・シュナイツェウツァウィーンの艦長だ」

それに続きハイデン、フェスカも名を名乗った。それからリッターは、ゆっくり休め、といい出ていった。

「あの……」

リッターが去った後、マーフィーが静かな声でハイデンとフェスカに話しかけた。

「生存者がいないと言うことはラウヴィッツや、他の艦も……?」

「ええ。残念ながら。」

何故か階級が下のハイデンとフェスカに敬語だが、それには触れず、ハイデンは話を続けた。

「例のミサイル艦は二隻撃沈し、対ミサイル兵器にも目処が付きましたよ。」

「それは良かった……」

そう言うとマーフィーは先程気が付いたばかりなので体調が優れないのか、少し寝ます、といって布団に潜っていった。

「では、我々もこれで」

フェスカがロシュにそう言い、二人とも医務室から出ていった。


それから三日経ち、さらにその三日間にミサイル艦だけでなく、駆逐艦、巡洋艦を十数隻撃沈しブレーケン・シュナイツェウツァウィーンは帰路に着いた。ブレーケン・シュナイツェウツァウィーンだけでなく、その他の戦艦や巡洋艦も哨戒に出たため、ミサイル艦は十分撃沈したと指令部は判断、ブレーケン・シュナイツェウツァウィーンに5日間の休暇を与えた。しかし、指令部やブレーケン・シュナイツェウツァウィーンの乗組員は気が付いていない。更なる危険が迫っていることを……。

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