第三話 討伐作戦二
「暇だなぁ。」
「任務ですから。」
「航海長くないか?」
「任務ですから。」
「お前は任務ですからしか言えないのか?」
ここは哨戒艦「ゾンネンブルーメ」艦橋。現在僚艦「サンフラワー」と共に敵のミサイル艦捜索に当たっている。このゾンネンブルーメ及びサンフラワーには「SUQ-2/C」という超長距離探知レーダーを搭載している。最大有効探知距離は180光秒と大変遠くまで探知できるが、範囲は前方の上下左右25゜程度しかない。
「それしか言えない事は無いですけど、任務なのは事実ですから。」
艦長の問いに副長は答えた。
「何で我々が駆り出されないといけないんだよ。」
「いやいやいや、"哨戒"艦じゃないですか。」
「私が言いたいのは、なんでこんなに危険な任務に駆り出されないといけないのかを……」
「超長距離レーダーに感あり。」
「なに?」
艦長と副長が話していると、レーダー士が口を開いた。
「艦種識別……例のミサイル艦です。」
「まじかよ……」
艦長が思わず呟いた。
「近くに友軍艦がいないかを探せ!」
艦長が大声で命令を下した。
「……いました。戦艦ブレーケンシュナイツェウツァウィ……」
「そいつに任せろ!我々では敵わん!面舵いっぱーい!」
(こんなんだから昇進できないんだろこのバ艦長)
副長はそう思いつつ、
「通信士、ブレーケンへ伝えろ。『虎を見つけた、狩りを始めろ』。航海士、このまま距離を保って追跡続行。」
逃げ腰の艦長に代わり、副長が命令を下した。虎とはミサイル艦、狩りは攻撃を意味する暗号だが、敵の言葉など分からないので暗号が有効かは分からない。
「副長!なんて命令を……」
「レーダーの探知範囲ではこちらが優位です。ばれませんし、我々が逃げたらブレーケンは正確な敵のいました位置を把握できませんよ。」
「そ……そうだな。うん。そうしよう。」
やっぱり駄目艦長だな、副長はそう思った。
「ゾンネンブルーメより通信、『虎を見つけた、狩りを始めろ』方位130度、距離121光秒!」
「見つけたか!」
リッターが呟いた。ラウヴィッツを発見して二日、出港してから六日も経っている。やっと見つけたか、という思いがあった。
「航海長、面舵いっぱい、第一戦闘速力。砲術長、主砲一番二番射撃用意、魚雷発射菅一番から四番通常魚雷装填、五番六番は粒子拡散魚雷装填。」
リッターが航海長であるフェスカと砲術長であるハイデンに矢継ぎ早に命令した。
「了解。第一戦闘速力!おもーかーじいっぱーい!」
航海長が復唱し、舵を右へきる。
艦長は正体不明が大好きだ。この時を楽しみにしていたのかもしれない。ハイデンはそう思った。
「敵艦、射程に入った!」
ハイデンが叫んだ。
「敵はまだこちらに気付いて無いらしいな。」
フェスカが言った。確かに反撃してこない。
「主砲一番二番、射撃開始!魚雷一番から四番発射!」
そうハイデンが言った瞬間、一番二番主砲が発砲を開始し、魚雷が発射された。敵もやっと気付いたのか、反転してきた。だが、敵は気付くのが遅すぎた。
「主砲、魚雷着弾!」
ハイデンがそう言った瞬間、レーダー士が、
「敵艦沈没!」
と叫んだ。
「結構楽でしたね。」
ハイデンがリッターに話しかけた。確かにあっさりと沈んだ。
「思ったより強くねぇみたいだな」
フェスカが余裕ぶって答える。
「ふっ、ミサイル艦はあれだけではないわ!高速粒子ミサイル、発射ぁぁ!」
そう彼が叫ぶと、懸吊されていた全長30m程のミサイルが目の前の戦艦目掛けて飛んでいく。
「着弾!」
レーダーを担当していた者が言った。
「フフフフフッ、ハ~ハッハッハッハ!」
彼は大声で笑った。
「思いしったか!フーヴェルの戦艦よ!」
「さすがです。ブラード総督閣下。」
副官のバスディールが言った。
「バスディール、もっと強いのを探しだせ!」
「御意。」
「まあ、このミサイル戦艦デリトスに敵う敵などおらんと思うがな、ガ~ハッハッハッハッハ!」
ブラードはまだ笑っていた。