第一話 船団襲撃
「そろそろか」
「ええ」
護衛部隊司令ムターの問いに、船団護衛艦隊旗艦「ラウヴィッツ」艦長のマーフィーが答えた。そろそろ味方の制宙権か……とムターは前方の船団を艦橋から見渡し、そう思った。この船団は輸送船22隻、護衛の哨戒艦2隻、駆逐艦6隻、軽巡洋艦4隻、そして旗艦の重巡洋艦「ラウヴィッツ」の計35隻で構成されている。空間船団護衛艦隊司令には護衛艦が少なくてすまない、言われたが、例の敵は一度も襲って来なかった。偶然この船団がバレなかったのか、バレたが諸般の事情で襲って来なかったのか……そんな事をムターが考えていると、
「レーダーにワープアウト反応!」
レーダー士が叫んだ。
「敵味方識別信号送信。主砲射撃用意!」
マーフィーはすぐに通信士に伝え、敵であった場合に備え砲撃準備を命じた。しかし、先手を打ったのは相手だった。
「目標よりミサイル発射を確認!かなりの大きさです!」
レーダー士が叫んだ。敵だった。
「迎撃用意!迎撃用魚雷を一番、二番発射菅に装填!」
「了解!」
マーフィーは砲術長に命令した。
(妙だ)
マーフィーはそう、思った。一発なら迎撃が容易であること位分かるはずだ。しかもたった一隻。輸送船団とはいえ、一隻で来たらただではすまないことも分かっているだろう。なのに何故?
「迎撃魚雷発射!着弾まで、残り10秒!」
砲術長が叫んだ。
「9……8……7……6……5……」
マーフィーは自分が変な汗をかいている事に気付いた。
「4……3……2……1……着弾!」
どうやら無事に着弾したようだ。と、思った瞬間、
「迎撃地点より、謎のエネルギー放射を確認!」
「なんだ?」
「エネルギーがジェット噴流のようにこっちに流れて……」
その瞬間、轟音と共に艦首が、『溶けた』
「艦首魚雷発射菅室、応答無し!」
「火器管制室!どうした!応答しろ!」
「電力室、状況知らせ!」
様々な声が飛び交う。艦前方の部屋が全て応答しない。
「な……なにが……」
ムターが絞り出したように呟いた。
「レーダーに味方艦の反応ありません!」
レーダー士がそう言った瞬間、敵艦の砲撃が艦橋に飛んで来た。
「全て撃沈したようです。」
「これで、奴等も思い知っただろうなぁ。」
そう言い、彼は不適な笑みを浮かべた。