プロローグ 新型宇宙戦艦
「目標捕捉、数二、距離15光秒、艦種Hクラス戦闘艦。」
レーダーを担当しているグラウンが言った。
「主砲一番二番射撃用意。艦型識別急げ!」
艦長のリッターがすかさず命令する。
「距離14光秒、艦型BB-2!」
(フフッ)
グラウンの言葉を聞いて、リッターは軽く笑った。「この戦艦」相手に二隻しか送ってこないとは、中々舐めた真似をするな……と言いたげだった。
「先手を取る。ハイデン、長射程魚雷装填せよ。」
「了解!一番から六番発射菅、STP-21装填開始!」
リッターの命令を受け、砲術科のハイデンが長射程魚雷を装填させた。
「魚雷発射菅STP-21装填完了!」
「目標敵一番艦、発射雷数四、って!」
「了解、目標敵一番艦、発射雷数四、って!」
そう言った瞬間、艦首から四本の魚雷が飛んでいった。
「敵戦艦距離15光秒!間もなく主砲射程内!」
「主砲一番二番、目標敵二番艦!」
グラウンの報告を受け、リッターが命令した。この戦艦の主砲は最大射程14.5光秒(約435万km)、有効射程9光秒(約270万km)だ。ただし、普通はこんなにも遠距離から発砲したりしない。
「敵艦射程に入った!」
グラウンが言った。
「もう少し近づく。両舷前進強速。」
「両舷前進強速。」
フェスカが復唱し、艦は速度を増した。
「距離4光秒」
「射撃開始!」
「って!」
リッターが叫ぶと、ハイデンは主砲発射を命じた。その直後、青白い光線が主砲から放たれた。
「主砲連続射撃、準備完了次第射撃を許可する!」
次々に主砲が放たれる。
「魚雷着弾!敵一番艦轟沈!」
不意にグラウンが叫んだ。離れているのでまだ爆発光は見えないが、レーダーからは消えたのだろう。
「主砲着弾!」
またグラウンが叫んだ。有効射程外から放ったものだから沈んではないようだ。だが次々に弾は着弾する。四斉射目が当たると、
「敵艦沈没!」
グラウンが言った。すぐに艦長は砲撃中止を命じ、通信手に通信を司令部へ繋げさせた。
「あれの何処が『手強い相手』なんですか?」
リッターが言うと、通信相手のビーレルが笑った。
「君ならそう言うと思ったよ。」
「次はもうちょっとマシな演習ポットをくっつけて下さいよ。」
リッターも笑みを浮かべた。そう、今のは演習だ。このフーヴェル星では、恒星系内に無数にある小惑星に「演習ポット」と呼ばれる物を付け、それを演習母艦が無線操縦するのだ。小惑星の方はバラバラになってしまうが、ポット自体は大分頑丈に作られており、直撃や至近弾でも無い限り壊れないので回収、再利用が出来る。そして艦に傷を付けない程度のビーム/エネルギー砲撃を加えてくる。
「これより本星に帰投する。面舵40、第二巡航速力。」
通信を終えると、リッターは航海長のフェスカに命令した。
「了解。面舵40、第二巡航速力。」
そして、この新型戦艦「ブレーケン・シュナイツェウツァウィーン」は帰路についた。