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逃げ回ります!

 まずい!まずい!まずい!

 あきらかにあのゲル爺とかいう老人のいっていることは、僕の正体が何者であるかとかを調べる気満々じゃないか!

 しかも、なんでか医術がそんなに珍しい術式なんて!

 僕が使っていた術式は中級だぞ!一人前の薬師なら使えるはずの術式なのに、あの反応からすると、厄介ごとに巻き込まれるのが目に見えている!

 魔道具『導きの羽箒(はねぼうき)』を使って別の場所に避難したいのだが、一日一回しか使えない魔道具なので、逃げるのには使えない。最低でも、明日の昼過ぎまでは魔力が回復しない。


 足の速さと体力は少し自慢だ。従弟君よりも足の速さは上だったし、うちの城はそこそこ広いから、動き回っていたら、体力がついていた。お爺様とか、高齢の家臣は空飛ぶ絨毯とか、転移魔法とかそういった手段でも使わないと、動きが取れない。

 朝は大広間で朝議(ちょうぎ)、その後は執務室(しつむしつ)で、書類仕事、合間に視察や来客対応など。趣味の研究の時間をなんとか作るのも大変だ。


 母上の収集したどこかの国の昔話を絵本に直して、翻訳したものを乳母が読んでくれた。その絵本で、王様は贅沢に遊んで暮らしていたとか書いている物語があったが、そんなことはないだろう。

 なにせ、遊んで暮らしていたら父上がもっと遊んでくれただろう。


 ちなみに、母上の蔵書がよく翻訳されているのだが、時々とんでもないものが混ざっていた。小さかった頃にお昼寝がてら、僕が従弟君に読んであげた本は、どうも皮肉で翻訳してあったものなのか、父上の部屋にあった絵本だから、面白いと思って読んだら、今でも悪夢と思えるような内容だった。

 勇者に倒される魔王のおとぎ話で、号泣された。読んでるうちに僕も号泣したけど。父上を浮かべて僕は泣くし、従弟君は僕が魔王になって勇者に倒されると思って大泣きしちゃって。

 懐かしいな。あの本は禁書(きんしょ)焚書(ふんしょ)したけどね。


「あはは。懐かしいなぁ。魔王を倒しに勇者がくるとか怖いよね。うん、今も勇者いるとかいうもんね!逃げるが勝ち!」


 勇者の称号は神授(しんじゅ)称号だったらしいけど、今では国で認められた英雄が勇者ということになっているようだ。どこそこの何代目の勇者という代替わりでいたり。何度かうちの国に戦争をふっかけた国の将軍が勇者だったり、逆にうちがふっかけた時の王様が勇者だったり。

 でも、自国の王様がわざわざ戦うこともないので、講和条約を結んで終わりだったんだけど…ノーマンの国はよく滅ぶから…そういう戦争がもとであのお伽話ができたのかもしれない。他にも似たような絵本がゴロゴロでてきたけど…勇者に倒された魔王は確かそんなにいないはずなんだけどな…あまりにも魔王が倒されすぎだよね。それに、魔族の勇者も神授称号のときいたらしいし。数はノーマン種に負けるけど。


 ノーマン種は短命で数が多い。そのため、優れた人も多くいたのだろう。優れた種とかでなく、絶対数でだ。

 エルフやドワーフの勇者と魔族の勇者。エルフはいまだに神授称号に強いこだわりを持っている。しかも、とても長命な彼らは、いまだに神から直接勇者に指名された人物が生きているそうだ。ドワーフは王の祖先が勇者だとかだいうし。うちも同じで魔族の勇者の末裔が魔王らしいけど、今じゃ勇者なんて争いの象徴みたいなもんで、王族とかに伝えられている話の一つだが、僕は信じてない。


「やっばいな。パニックになりすぎて、走馬灯のように色々思い出している…さてと、どうしよう…追ってきているだろうな」


 僕の足の速さはユニコーンよりは早いけど、スレイプニールよりは遅い。どちらも僕の愛馬で、よく追いかけっこをしたものだ。

 冒険者というのだから、体力とかはうちの兵士並だと仮定して、足の速さとかどうだろう?ユニコーンより早いのかもしれないな。もしくは、壁とか屋根とか跳んでくるとか?フロッグマンみたいな跳躍力があるかもしれないのか。

 うちに戦争をふっかけてくる兵士がそれぐらいできるとかをお爺様も仰っていたからな。もう少し、本気で走るべきか。


「な、なんだぁ!」

「あの坊主はえええ!」

「きゃぁぁ!」

「見えたぁぁ!」


 道行く通行人や、買い物帰りの荷物を持つ客などの人が驚いている。とりあえず、スカートの中をのぞいてしまった男性は見事な拳を受けていた。一般女性とみえたのに、あの腰の入り方…冒険者かな?


 少し入り組んだところに入りながら、どうにか人がいない路地に入って、辺りを見回す。誰もいない。

 落ち着いてどうするか考える。時間がくれば、魔道具が使える。それまでは街で隠れているか…魔物がどれほどの強さかわからないが、最悪、街の外にでよう。

 そう考えていると、目の前の扉が開いた。


「ちょっと!ルーフェちゃん!なに逃げようとしてんのよ!」

「ヴァルさん!なんで!」


 目の前の民家の扉から、まいたはずのヴァルさんがでてきた。


「初対面だから知らなかったでしょうけど、あたし街の中じゃ、転移魔法は得意なのよぉ」


 鍵束の鍵をたたきながら片目をつぶった。

 魔道具ではなく、魔術媒体か!契約をするときにも使っていたが、杖代わりに使っているようだ。しかも、扉を仲介に鍵を媒介にした転移魔法。魔法は想像しやすい方が、魔力の伝わりがいい。簡単に連想できる組み合わせであれば、魔力の消費は抑えられる。


 転移魔法はそこそこ魔力を使う。連発するようなものではないが、ヴァルの様子からあと何回か使えそうだ。

 あと何発かはわからないが、まだ逃げれる!まけばこっちのもんだ!


「それに、さっき書いてもらった契約書を持っているのよ?追跡すれば、署名者がどこにいるのかもわかるのよぉ」


 あ!契約書が原因か!

 直筆で書かずに代筆でも頼むんだった!解除するにしても、一度それ用の陣を描かないと、僕には解除ができない。


「さぁて…あのじじいが来るまでに洗いざらい吐いて」

「その小僧か」


 空から、風にのってゲル爺がおりてきた。

 飛行魔法で飛んできたようだ。なかなか使える人なのは間違いない…こういうときは、使えない人の方が助かるんだけど…


「うわぁ、きやがったわ」


 僕も同じように思う。

 さらに嫌なことに、ゲル爺が、よだれをちょろりとたらしているのが、見えたのだ。そしてあの目。あれは研究対象を見つけた目だ。

 心当たりはある。素材が届いたときに鏡でみた自分の目が似たような輝きだったからだ。


「ふん!お前が転移魔法を使うのがわかかったからの。転移先のお前の魔力を探すなぞ、簡単じゃ!して…小僧。先ほどの魔力の揺らぎはおぬしの仕業か?どうなんだ?」

「えっと…その…」


 ふわっと着地させながら、杖を小刻みにつきながらこちらに近づいてくる。


「ほれ、話してみろ。お前がどの程度の術式を覚えているとかの。なんなら、わしの部屋に行こう。何も痛いことはせん。なに、床の血痕を数えておればすぐに済むか」

「それをやめなさいっていってんでしょ!くそじじぃ!」


 血痕ってなんだよぉ!

 ヴァルがどこからか取り出した空き瓶をゲル爺に投げつける。ひょいっ簡単に避けて見せたあと、またも二人はお互いの額を凄い音をださせてぶつけ合う。そうやって話さなければならないのかな。


「何をするんじゃ!ヴァルヘイム!」

「あたしはヴァルって名前に改名したって何度もいったでしょ!両親の許可もとって正式なんだからね!」

「なんじゃとぉ!名づけ親のわしは許可などしていないぞ!」

「だ!か!ら!何度も手紙書いたってっていうのに、どっかに行ってるあんたが悪いでしょうが!」


 名付け親?二人は近しい関係なのか?


「あの、お二人の関係は?」


 それとなく、後ずさりながら、二人に尋ねる。


「わしはこやつの叔父じゃ。まったく、末の弟の末っ子がこのような軟弱者になるなど…」

「あんたみたいな変質者よりはましよ!」


 とても血縁関係を感じます。


「そうですか、親族で色々積る話もあるでしょう。僕は失礼しますねぇ!」


 気をわずかでもそらせば、こちらの勝ちだ!解除は街のどこかでして、それから街の外に行こう!一刻も早く!


「待たぬか!風よ、戒めとなりて塞げ!『ウインドブロック』」


 暴風の壁が突如僕の目の前にそびえたった。

 近づけば、ズタズタに引き裂かれる。広域戦術魔法でもある『ウインドブロック』効果範囲もだが、抜け出そうと上空を飛べば、その分縦に伸び、切り裂かれる。同等の風か、転移魔法などで逃げるのが得策である。

 僕、どっちもできないけど!しかも、短縮詠唱とか、この人本当に使える人じゃないか!


「ちょっとぉ!街中で戦術魔法なんて使ってんじゃないわよ!苦情がまたくるじゃないのぉ!」

「そうですよ!さっさと解除してくださいよ!」


 何も知らない人とか、ひき肉になるぞ!


「そんなの知るか!苦情なんぞ、とぉぉっくに聞きなれたわ!」


 最低なことを自慢げにされてもな。

 冷や汗がじとりとあふれる。


「これで逃げるのは難しくなったであろう?さぁ!大人しく、わしのもとにくればいいのじゃ!わははははは!」

「あんたどこの魔王よ」


 魔王はそんな邪悪に笑わないから!人聞き悪いから!いい魔王の方が多いから!


「申し訳ありませんが…せっかく自由になったんで、僕は全力で逃げださせてもらいます!」


 正直、媒体がない空中に直接描くのかなり疲れるんだけど、仕方ないだろう。逃げるにはこの手しかない。

 僕は、指で空中をなぞる。金と銀の色が指先から空中へと流れていく。


「空中に陣を引くじゃと!…じゃが、風の陣ぐらいではのぉ…」


 ゲル爺は酷く驚いたようだが、すぐに破れないと思ったのか鼻をならした。 

 先ほど描いたときよりもさらに早く、その陣を描き上げた。


始祖神(しそしん)の陣展開!魔力を抽出せよ!」


 発動させたら、あとは簡単だった。

『ウインドブロック』は、魔力の壁。そこから魔力を抽出すればいい。そうしたら、どうなるか。


「なんじゃとぉ!わしの障壁を破るじゃとぉ!」


 暴風の壁は消失していた。

 抜き出した魔力だが、形に残すための創世の陣もないので、そのまま空中に散らした。

 風の(ことわり)の解除の陣では時間も魔力も必要だが、崩すだけなら、医術の陣の方が早い。


「なんじゃ…あの術式は風の陣ではないのか。どのような術式か…知りたい…欲しいんじゃぁぁ!!」

「うわぁ。目がキラキラしてますねぇ…」


 思わずぞっとして足がすくんだ。


「よし、足ぐらいなら斬り飛ばして構わんな」

「はい?」


 凄い不穏なこといいませんでしたか?


「風よ、死を運びし鎌となりて、我が敵を刈り取れ!『ウインドリッパー』!」


 ひゅばっと魔力の塊が飛んでくる。


「ひぃぃぃ!あぶないぃぃ!」


 全力でその場で飛び上がった。地上から二メートほど飛んだ。そうでなければ、両足がふともも、下手すれば腰から下が風の鎌で狩られていた。

 証拠に、僕の横にあったゴミ入れにでもしていたタルは僕の腰の位置ですぱっと切れている。

 あれ、戦術魔法(オーバーマジック)でも殺傷力高めだよな!なんてもの使うんだ!


「よけるでない!足ぐらいあとでくっつけてやるでわないか!」

「子供に何するのよ!この馬鹿爺ぃ!」


 ヴァルが思いっきり首をしめて持ち上げている。

 いまだ!


「土よ、戒めとなりて歩みをとどめさせよ『ロックアース』」


 走り出した瞬間聞こえてきた声とともに放たれた魔法は、僕の足元を溶かして、足を地面に埋めていた。


「オリエさん…」

「とりあえず、話しましょう。それがお互いのためになるでしょうから」


 ヒューブに背負われながら、魔法を使うのはずるいです。歩く砲台は卑怯だ!

用事で八時半ごろまで書けれず、今十一時…日曜に一度全部編集します。

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