森へと入ります!
僕たちは試しにその任務を受けてみることにした。前も採取したことがあるというテシアが火月草の群生地を知っているというのが受けた大きな理由だ。小さい苔に生えているような花だから、探すのは土地勘とかがないと大変なんだよね。
あとは、純粋に少しでも任務の流れを知っている人たちと組む方が、ことが上手くいくと思ったからだ。それに、正直そこまで強くないノーマン種と組んでいる方が、こっちとしても気が抜けてありがたい。どこかで監視されているような感じはまだしているけど、気分的にね。
「装備品は大丈夫?一応私たちが護衛するけど…武器は?」
ギルドから出てすぐにテシアが僕たちに聞いてくる。まぁ、何も武器を持っていないからね。
「えーと…ああ、こういう短刀なら持ち合わせていますよ」
鞄の中を漁って、素材を剝ぐときに使うように持ってきていた使い込んでちょっと…いやかなり汚れた短刀を出す。
「短刀?」
「もーお兄ちゃん。おじいちゃん言葉になってるよぉー!ここじゃナイフ!わかった?」
テシアが不思議そうにするが、ゲールが横から注意してくる。短刀はナイフね。わかった。
一応、武器は持っているということで、魔法鞄にミスリルのナイフをしまう。
「弟君はどうするのかな?でてもスライムだけどね」
「俺?そうだねぇー…適当に石でも投げるよ!」
「おー!かっこいいね!じゃあ、もし見つけても、近づかないで、私たちに声をかけてから、石を投げてね!」
スライム相手には打撃が一番効果的だからね。ゲールなら、石で核を砕くなり、衝撃で核だけくり抜くことも可能だろう。
空間内に所持している武器は色々あるだろうけど…あ、魔剣は一応あげたけど、結局寝る前に毎晩、僕が磨くことにした。ゲールが魔力を込めるのを嫌がって、僕にさせるんだけど、あげたものの整備を僕にさせるってなんでだろうか。
魔剣も僕より上手く使える人の方が喜ぶと思うんだけどなぁ。
「それで、近くに生えているような場所があるんですか?」
武器は僕が一応持っているし、目的地も安全だから、そこまで咎められることもなく、そのまま出発となった。時間もそんなにないし、お金もないし…朝から労働者向けなのか屋台が出ているのを、ちらちら見ているのが、一人いるもので資金は早急に必要だ。
ちょっとあの果物は僕も食べたい。
「南門を抜けて、左手に小川が流れているんだけど、その流れに沿って少し歩くと、森に入れるの。あ、でも危険はないからね。森って言ってもこの街より少しだけ大きいだけだし、定期的に人が入っているから魔物は少ないの」
そういって、人の流れに身を任せてみると、確かに南門の人は多い。ということは、南には脅威は少ないのだろう。
ギルドが中央広場というところにあり、川も近くに流れているので、その流れに合流するようにいくつかの支流が近くを流れているようだ。
水には事欠かないのはいいな。トイレも水洗だったから、下水道もどこかに完備しているんだろうけど。場所によっては、そのまま溜まったら埋めて新しくとか、スライムとか使ったりだけど。スライムは大繁殖した時が厄介だからなぁ。うちでもスライムだけど、下水の処理で増えすぎたら適度に駆除をしている。この時のスライムの核が、畑にとてもいいので、城下の野菜は美味しい。
「それじゃ、昼までに済ませますか」
散歩の気分になっているには、僕だけではない。すでにゲールはあくびをしながら退屈そうだ。
テシアは苦笑している。
「まぁ、上手く見つかればなんだけどねぇ」
森について早々、僕は半目になってしまった。
「はい、テシアさん。手袋せずに、野草を採取しないようにしてください。毒草も依頼にはあるんですから。トリィ君。こっそり野イチゴ食べてますけど、そのまま採取させませんよ?唾液で成分が壊れるんですから。そこの小川で手を洗って、手袋を…ゲール!それはキツネノボタンじゃなくセリだ!いつも食用のばかり採取しない!」
まさかの素人集団…いや、ゲールは野営の経験から食用の素材とかは詳しいんだったな。野営のときはそんなに食べないときいてるけど、僕がいるときばかりたくさん食べるから、見ているだけでお腹いっぱいになるよ、本当。
テシアは、毒草があるっていうのに、そのままつもうとしているし、トリィは、唾液がついた手で採取しようとしているし…かぶれて痛い思いや、もう一度採取をやり直すことになってもしらないぞ?
とりあえず、革の手袋をゲールに投げる。
「え、ルーフェ君…え?」
「…わかった、洗う」
テシアが驚いたようにしている。トリィも神妙に頷いているが、人の顔を何度も確認するように見ないで欲しい。
顔色はいつもの三倍いいはずだからな!主に自由にしているそこの食いしん坊のせいでね!
「おー。さすが兄上。薬草関係だと人が変わる」
関心したように、うんうんと頷いている頭をはたきたくなった。本当に、思春期になってから、小生意気なんだけど、もう少し、僕を敬おう?
とにかく、僕の得意分野でもあるから、説明だけでも聞いてもらおう。
「三人ともいいですか?ここに書いてある依頼の品は、どれも採取の指定部位が書いてません。葉か根か、そのままの川虫か、蛹なのか…こういうときは野草は効能のあるところだけを持ってこれるかという知識があるかの確認でもあるのです!いいですね、僕の指示には従ってもらいます!」
しかも、腹が立つことに、依頼書の内容だ。受付で詳しい内容が書いたものをもらったが、詳しいとはいっても…
『春泣き草 手提げの籠に入るぐらい。セージ 拳分ぐらい。 川虫 コップ半分。 ゴブリンハート 一本とか? キツネノボタン スープ皿に乗るぐらい。 百日花 スプーン四杯ぐらい。 火月草 持って帰れるぐらい』
と、適当この上ない。書いた奴がだれか問い合わせたかった。
しかもこの詳しい内容を僕が見たのが森についてからだった。テシアにいくつ必要なのか尋ねたときに、確認で発覚したのだ。
せめて、本数や量をきちんと書いて!
思い出しただけで、血行がよくなっていくね。
そこ、ケラケラ笑うな。昼飯なしにするよ?
「今回の依頼で、一番面倒なのはゴブリンハートです。どこに依頼品があるかの確認のあと、採取とします」
「でも、キツネノボタンとか、川虫は今採れるよね?採らないの?」
テシアがそう提案してくる。そりゃ、目の前に依頼品があるのだから、採取したいだろう。
この以来の意地が悪いのは、依頼の順番にもある。
普通、こういった素材は入手が困難なものや、採取が近場にあるものを並べて頼むものだ。僕やビフレストの医術者たちはそうして頼んでいる。
この書き方では、難易度を知らない人間が見つけては採取していくしかしないだろう。
「水辺に生えているものは、乾燥に弱いんです。それに、ゴブリンハートはゴブリンの死体があったところに、たまにしか生えてきません。正直、今日で見つかればいい方ですが…根気よく探せば指定されている一本ぐらいは採取可能でしょう」
午後からは僕はガーディ老のところいに行きたい。いざとなったら。手持ちのゴブリンハートを出してもいい。魔法鞄の中に入っている。『保存』がきちんとかけてあるから、新鮮なままだ。
僕が欲しいのは火月草だけだからね。
「へぇー…ゴブリンハートっていうから、ゴブリンの心臓かと思っていたわ…死体探しをするのかと思ってたんだけど」
「ゴブリンの血管に侵入して、ゴブリンの死後、その心臓から生えてくる真っ赤な花です」
ゴブリンが他の動物に襲われて怪我をしたりして、その傷が治る前に森などを走り回っていると、時折、種が入り込む。この種はゴブリンの体内でしか芽吹かない。植物型の魔物だ。
発芽さえしたらただの毒草になるだけだから安心だけどね。
「それってどんな薬になるの?」
テシアが効能を知りたそうにする。
正直いいにくい。しかも、まだ僕らからすれば子供のような年齢の子にはいいにくい。
「えーと…ちょっと女性にはいいにくい薬なのですが…」
「え?そんな風にいわれると逆に聞きたいんだけど!」
教えてよーと、ローブの袖をひくので、仕方なく教える。
「えー…商売をされている女性とか、子供が欲しくないときに、お腹に入れておく薬の材料によくされています…」
そういうと真っ赤にするテシア。服用が口からではないとはさすがにいえないかな。
「ねぇ…キツネノボタンってのとか、火月草っていうのは?何に使うの?」
トリィが自ら尋ねてくる。道中も思ったが、かなり無口な子だから、こういう意思表示をするのには、少し驚く。
「キツネノボタンは、元々は初夏に生えていた原種が、魔物の瘴気を含んでいくことで、収穫が今のような時期になったんです。元々、皮膚にぬるとかぶれたりしていたんですが、瘴気によって、皮膚を腐らせる効果がでています」
「え…それって大丈夫なの?」
「加工前なら、そのまま触っても酷いかぶれで済みます。薬にすることで、火傷のあととか、古傷の治療のために、皮膚を溶かして新しくするという治療に使われますね。あとは、かなり薄めて川虫と混ぜて…水虫の薬とかにします」
兵士御用達なんだよね。水虫とか。足じゃないところにも使えるけど、それ用のを処方できるから、恥ずかしがらずに申告してほしいけどね。かぶれたら男としてつらいのはわからるからね。
「火月草は血の流れを少し鈍くします。止血などに重宝しますし、暴れている人間にも効きます。精製すれば、少量で意識を失わせることも可能なので」
「血の流れを鈍くするので、意識が失うの?」
医術者からすれば、酸素が人体に必要なのはわかっていることがら、テシアをみると、酸素を知らないのかもね。知っていれば、魔法とかにも影響がでるから、教えるのは難しいけどね。どこかで魔法使いの耳にはいって、強くなられも迷惑だ。
「息が吸えなくなったような感じになるんですよ。で、意識を失う」
「…酸欠か」
簡単にいえばいいかと説明すると、トリィがぼそっと呟く。
「ええ…ご存じだったんですか?」
意外だなと思ってトリィをみると、口を押えて酷く焦っている。
声をかけようかと思っていると、僕の体をふいに引っ張る力に負ける。
「じゃ、とりあえず、ゴブリンハートを探すのが第一目標ね!何かこつとかあるの?ルーフェ君!」
テシアが僕を引っ張って森の中へと進んでいくようだ。
ゲールが空間から大剣の方を抜こうとしていたのを目で抑えた自分をほめてあげたい。探り合いはなしにしとこう。
「そうですね…とりあえず、腐臭があれば行ってみるのがいいですね。ゴブリンの腐臭は残っている場合が多いので」
ゴブリンは死んでからの方が強烈な臭いを発生させる。討伐すれば人里近くであれば燃やすが、離れていればそのままにする。そうすることで、ゴブリンがこなくなるのと、嗅覚が強い魔物は寄ってこなくなるからだ。
嗅覚がない魔物は関係なくくるから、あくまで予防だけどね。
「うぇー腐臭って…」
「…どんな臭いなんだ?」
トリィがテシアに尋ねている。どうやら、腐臭を知らないようだ。
「あれよ、甘い腐った臭いに、トイレの臭いと生ごみが混ざったあとに、雨の日の畑みたいな臭いがほどよく乗っかってくるの」
「臭そう…」
「臭いの」
二人して顔をしかめている。さすがにそこまで強烈な臭いは、目の前にされないと感じないだろう。ゴブリンハートが採取できそうなくらいなら、少し生ごみ臭いぐらいだ。
「まぁ、そこまできついのではないですよ…テシアさんはなれているんですか?」
こういってはいけないが、テシアくらいの少女が腐臭を知っているなど、よほど田舎の出身で、しかも多くの猟をしているか、ついていっているのは、似合わない。そこまで純朴そうな雰囲気ではないからね。
「え?ええ、ほら、狩人って獲物を狩るじゃない?いらない部位を捨てる場所があるんだけど、そこに持っていくときに、何度も嗅いだことがあるのよ…いやだなぁー」
「そうですか」
駆除ではなく、いらない部位を捨てに行く場所ね。腐るまで置いておくような場所でもあると。
どうも、二人とも色々あるようだが、しばらくは仲間として行動するのだし、黙って見守るか。この中じゃ、僕が一番の年長者だし。
「で、お前はいつまで野イチゴ食べてるんだ?」
「ん?もう動く?まだなら、もう少しつまんでるけど?」
殺すのはなしって合図を送ってから、また、自由にしているゲールは、トリィがつまんでいた野イチゴの所へいって、ぱくぱくと食べている。
綺麗に食べているけど、食べ過ぎだからな。あと、こっそり空間魔法で収納しているけど、僕にも残しておいて。
執筆しようとしたら、仕様がかわっていて焦りました。ルビは楽になったんですけどね。
アクセス、ブックマークありがとうございます!執筆の励みになっております。時間つぶしに、また読みにきていただけると幸いです。




