服を買います!
ゲールもギルドに入るという『契約』を結んだあと、ヴァルにそのまま買い物へと連れて行ってもらうことにした。とはいっても、ヴァルの持っている『鍵』を使って転移をしたので、時間はかからなかった。
ついた先は、どこかの部屋だろうか?棚には赤、青、緑といった文字が書いてある箱がある。中が見えるが、糸のようだ。他にも、四角に着られている服の一部や、ボタンと書かれた箱にはこれでもかというほど、ボタンが入っている。
城にある針子の部屋がこういう感じだったような思い出がある。かくれんぼで入ったことがあるが、こういうごちゃごちゃとした部屋だったように思う。
場所がわからないが、ゲールが特に何もいわないし、肩の力が抜けきっているので、何があるということもないだろう。仮に何かあっても、今のゲールの状態ならば得意の一撃で、状況を打破できるだろう。
「やっほぉー。お元気ぃ?」
ヴァルが声をかけると、奥の扉が開く音。そして、こちらをのぞく人影がみえた。
「んあぁ?ヴァルさんじゃないかぁー。久しぶりぃ」
顔をだしたのは、もじゃもじゃの髭を生やした、僕ぐらいの…少年?
その少年は、パタパタと足音をたてて、ヴァルに近づく。
髪の色は僕の髪よりもさらに赤みの強い色で、瞳は真っ青だった。髭があって見えづらいが、顔立ちはかわいいだろう。僕よりも少しだけ背が低いのと、その隠しきれない顔立ちで、髭に違和感しか感じれない。
「んもぉう!相変わらず、なんなの!そのおヒゲ!似合わないのよぉ!さっさと取っちゃいなさい!」
「そうかなぁ?男前の店主にみえるって、思ったんだけどなぁ」
いうなり、ヴァルが髭をむしりとる。「いったぁぁぁい!」といって見えた素顔は少しそばかすがあるが、整った顔立ちの少年だった。
「ほら、新しい子を連れてきたから、服を見せてねぇん」
「どうも」
「ちわー!」
僕とゲールが挨拶をすると、少年はとても慌てている。ゲールの顔がかなり整っているからな…僕が並ぶと引き立つんじゃないかな。
つらい。
「ふえええ。すっごいかわいいねぇぇ。それにかっこいい人ぉぉ…ヴァルさん、この子ら役者ぁ?それとも、受付にいるのぉ?」
「残念だけど、違うわよ…冒険者なの!新しい子たちよぉ」
どこか間延びしたように話すし少年と、疲れたように話すヴァル。ヴァルが負けているなんて、この少年ただものじゃないかも。
少年は、服で軽く手を拭くと、僕に右手を差し出してくる。
「初めましてぇーおいら、ハーフリングのバーゼル・ウイキッドっていうんだぁーよろしくぅ。これでも、二十五歳なんだよぉ!」
そういって、バーゼルの自己紹介を聞く。
ハーフリング。旅する派閥と、村から外にはでない派閥にわかれるが、彼らが共通しているのは一つだ。
常に子供のような好奇心で生きている。音楽や芸術にもすぐれて、どこへでも一座を率いて旅をする。ビフレストにも何度か来たことがある。護衛をつけて秘密の公演をしてもらうのだ。演目もだが、彼らが楽しんでやっているのを見るのは、観客としても楽しめる。
そんな彼らは子どのような好奇心を強く持ちすぎているのか、成人は三十歳をこえるまでかかる。精神が子供のままなのだ。そして、肉体も晩年に急激に老いるが、それまでは若々しいままだ。
ハーフリングはどこにも属さないが、彼らが定住を求める国は平和であるため、国が安定している証拠にもなる種族なのだ。
まぁ、僕やゲールも似たようなもんだしね。色んな意味で。
「どうもバーゼルさん。僕はルーフェといいます」
「俺はゲール…ねぇ、もしかして半分だったりする?」
ゲールがバーゼルに聞く。
純粋のハーフリングは、もっと落ち着きがない。それに、目の色が青色なのはおかしい。ハーフリングは赤に少しの茶色い髪の毛、草原のような明るい緑色の目、ほどよく焼けた肌。その身体的特徴ですぐにわかる
バーゼルは髪の色こそ、ハーフリングだが、他の特徴はノーマン種であるといえるのだ。
「おーわかちゃう?父ちゃんはノーマンで冒険者だったんだ。母ちゃんがハーフリングなんだぁ…半端者は嫌いだったりするぅ?」
「ううん。そんなことはないよ…あんたとは仲良くしてもいいね」
「ほんとにぃ?じゃ、ゲール君、仲良くしてねぇ!」
そういって、ゲールがバーゼルに握手を求める。
珍しいというか、まぁ、僕たちの生い立ちと似ているから親近感がわくのも事実だ。にこにこしている二人をみていて、なんだか、僕だけ仲間外れにされたようで、悔しいんだけど。
「僕はいれてくれないの?」
「ルーフェ君もぉ!えへへー嬉しいなぁ!」
僕がそういうと、空いている左手で握手をされる。赤面症もあるのか、恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに笑う。僕より年上だけど、もともとの性格もあってか、少し幼い感じがする。
「母性がくすぐられるわぁ…母乳出てないかしら?」
そういって、ヴァルが胸を確認している。生物の構造上ないとはいわないが、ヴァルのはたぶん枯れているんじゃないかな、うん。
バーゼルが、ヴァルの方へと歩き、不思議そうに首をかしげる。
「でもぉ、ヴァルさんなら、こんな綺麗な子たちには、別の仕事すすめるのに、珍しいですねぇー」
「前の子たちが来て二か月も新規がいないなんて、大変なことなのよぉ」
どうもギルドの支部には、月間で新規を確保するのるぅま?ノルマか?があるようだ。そのノルマが達成できれば、なんらかの得点が貰えるとのことだ。
なるほどな。だから、新人獲得に必死だったのか。
「別な仕事って?」
ゲールが興味があるようにみせつつも尋ねる。実際はこれっぽっちも興味はないだろうが、こういうときの情報は後で必要になるかもしれないからな。
「うーん、おいらは、あのねぇ、前役者だったんだぁ。子役専門のねぇ!でも、おいらより上手くて綺麗な子が入ったし、おいらも二十五歳だからねぇ!手に職が欲しくて、古着屋さんをしようと思ったんだぁ」
バーゼルがそういって教えてくれたが、要点がつかめない。バーゼルが子役専門の役者だったことは、驚かない。ハーフリングの血筋で、役者をしていない方が逆に変だ。子役専門というのも大人には見えないからな。それで、辞めて手に職を…で?古着?どういうことだ?
「あんた、まぁた頭の抜けた話になってるわよ。聞いててわかったと思うけど…この子、中身がまだ子供なのよ。両親も他界しちゃってるんだけど、成人しているでしょ?…役者は向いていたんだけど、世知辛い世界なのよぇ…人気者に役を取られたら、死活問題じゃない。あたしも父親を知っていたから、伝手でどこかの劇団でもと思っていたんだけど…本人も手に職を探しているようだったし…で、古着屋をすすめたの。手直しは衣装を縫ったりしてたらしくて、上手いから安心だしねぇ」
補足をヴァルがする。
それをニコニコとうなづくバーゼル。んー…ヴァルが保護者みたいに見えてきた。
「ここのお店も、前の店主夫婦が高齢だったから、この子に譲ってもらったのよ…あ、安心してね。別に非合法な手なんか使ってないわよ。この子が気に入られて、ちゃんとその前の店主のご婦人からも仕込まれているから、腕は確かよ」
「オーナーさんの養子なんだぁ、おいらぁ!」
つまり、養子に任せて自分たちは引退したということか。ならば、バーゼルが一人で経営していても不思議ではないかもな。いざとなったら、前の店主がいるし、店の付き合いも引継ぎしやすいだろう。
「で、この子がいいたかったことね。あたし、ギルドの受付で古株でしょ…あとは実家の関係で、顔が利くの。だから、その子に合う仕事を紹介するのが得意なのよ。伝手もたんまりあるしねぇん。だから、冒険者じゃないところに紹介しなかったのが、不思議なんでしょうね」
そうか。確かに、普通の子供がきたなら、安全な仕事先を探して紹介する方がいいだろう。残念ながら、僕たちは子供じゃないし、普通でもない。
下手に仕事先を紹介されても困るところだ。
「それで、どんな服がいいの?冒険者用?下着は新品もちゃーんとあるよぉ!」
バーゼルはそう尋ねるが、僕はあんまり服は必要がない。一応何枚か持ってきている。あーでも下着…ゲールは持っていないだろうから、新品で何枚か…色々あるだろうけど、本人が選んでくれるだろう。だが、紐はやめておいてくれよ。貴族で流行っているらしけど、僕ははくのも、見るのも遠慮したい。
「下着とかは適当に…冒険者用の服は…ええと戦闘は僕は苦手で、後衛かな?」
「俺は前衛!そんで、獲物は剣。あー片手剣が今は主軸かな?」
大剣は討伐のときに使うだろうからね。ここらじゃ、あの魔剣で充分だろう。名剣らしいし。
「ふんふん…じゃあ、表のコーナーに行こう…んんっ?ルーフェ君は体調悪いのかなぁ?お熱あるのぉ?」
「いや、これ生まれつきだから、ほんと心配はありがたいけど、うん」
光が当たって僕の顔色がよく見えるようになって、心配そうにバーゼルが聞いてくる。もう、それはお腹いっぱいなんだ。
「バーゼル。安心してよ。お兄ちゃんは病気もそんなにしないから」
にやにや笑うので、遠心力の研究をかねて、手首を軽くふって、ゲールの頭をたたいておく。
兄をからかうんじゃない。
「ここにあるのが新人さん向けだよぉ!あ、ゲール君、気に入ったのあったら持ってきてねぇー裾とか直してあげるからぁ」
「うん。よろしく頼む」
表の店は、男物が八、九割ほどだ。店の入り口側が、背丈のある者、バーゼルいわくサイズ?が大きな人たち用。僕ぐらいのノーマン種や数は少ないがハーフリングの服は、先ほど出てきた扉のすぐ近くにあるようだ。
ゲールはバーゼルと連れ立って服を選ぶようだ。
「あ、そうだ。ヴァルさん」
「はーい。なに?あたしの好みの服装が知りたいの?」
「ははは。あの…お金なんですけどその、まだ換金していなくて」
うっかり忘れていたが、この国の通貨は持っていない。一応、どこでも使える共通の通貨は持ってきているが、金貨と銀貨だ。換金していないと、損をするかもしれないし、なにより、ここで、換金率がわからない。
「あ、もしかして手持ちを気にしているの?だったら平気よ。新人は銀貨二枚までなら準備金として使っていいことになってるの」
そういって、ヴァルが銀貨四枚を懐から出す。
僕とゲールの二人分か…多いのか少ないのかわからないな。
「武器とかで銀貨一枚。残りでポーションとかの道具を買って、簡単な任務をしていってお金を作っていくのよぉ。この店なら。どう頑張っても、一人頭で…銅貨三十枚ぐらいが限界じゃないかしらねぇ」
「古着ってそんなに安いんですか?」
いまいち物価がわからなかったが、ヴァルの言葉には驚いた、服が思ったより安い。
「そりゃ、今ルーフェちゃんが手に持っているのは、普通のシャツをカットして、綺麗にみせてるの。でも、カットすれば短くなるでしょ?そうすると安くしか売れないの。買い取りも布切れは使うこともあるから、してくれるでしょうけど、よほど状態が良くないと何枚も出して銅貨一枚とかになるぐらいかしらねぇ。あとは、壊れた装備もついでに買ってもらうとかね。屑鉄屋よりも古着屋の方が安定して買ってくれるのよ」
なるほどと、納得した。冒険者用の古着屋とは、回転率がいいのだろう。安く仕入れて、安く売っても回転率がよければ、売り上げは安定する。それに、鉄も積もればそこそこの値段になるだろう。悪くない商売だ。
「兄上、これどうだ?」
ヴァルと話していたが、ヴァルが「あたしの好み教えてあげるわぁ」といって、服を探しにいった瞬間に、ゲールが話しかけてきた。
手に持っているのは、灰色の麻のシャツだ。ズボンは紺色で、裾を直すのか、少しおられている。シャツには胸ポケットがある。
「へぇー。稽古着に似ているな…バーゼルさん、これは?」
「バーゼルでいいよぉー…これは、ゲールが着やすいっていうから、選んでみたんだぁ」
「僕のこともルーフェでいいよ、バーゼル。しかし…似合っているな。これでいくらなんだ?」
バーゼルが選んだのはゲールに合っている。まぁ、こういう落ち着いた色合いの方が似合うというか、目の色や髪の色には合うだろう。冷たい目だとかいわれるから、余計にな。
呼び捨てを許可するとバーゼルが照れたように、頬をかいた。
「えへへへ…なんだか、恥ずかしいなぁ…あ、これで銅貨四枚!ちょっと高いよぉ?」
いや、安いよ。
とは思ったが、おそらく普通なら銅貨二枚とかなんだろうな。
「お兄ちゃーん!買って?」
「ははは、頭突きをしてやろうか」
軽口をいいあってみるが、普段のゲールとは思えないような品物だな。
「しかし、お前のセンスにしてはいいものを選んだな」
基本、黒か僕の着ていたような服ばかりだ。いかにも市民の服なんて選ぶとは思わなかった。
「いや、素材で通気性がいいのといったら、バーゼルが全部持ってきてな。俺の紋章をみてすぐ縫ってくれた…ちょっと部下に欲しい」
「あの短時間でか!…城の針子に欲しいかもな…」
胸ポケットをあけると、留めて見えなかったところに、きちんとゲールの紋章が縫われていた。少しの間に翼と乳鉢をきちんと刺繍できるなんて、どんな腕だ。
「ルーフェはどんなのがいいのぉ?」
「今の服みたいなので、ローブ…あと、僕のにも刺繍をしてくれる?これで」
そういって、鞄から、印章を取り出して見せる。翼と薬研と杖だから大きくなってもいい。
「おー…二人とも、ちゃんとお守りをもらっているんだねぇー」
「うん。できれば刺繍がある方が落ち着くんだ」
「了解ぃー!エルフとか魔法使いの新人さんぐらいしか、お守り縫わないから、おいらも退屈だったんだぁー」
紋章を服に縫うのは、身分を表すだけでなく、親が子供を守れるように祈りをこめるという伝統がある。魔法使いはおそらく、エルフの伝統を真似たのだろう。
快く引き受けてもらえて、大満足だ。
ヴァルの服はなんというか、派手と露出が酷すぎてみなかったことにした。
部屋に戻る前に、晩御飯を購入することにした。
大通りに面した店だったようで、すぐに買って帰れた。
「さーて…現在の残金だが…」
「少ないが、大丈夫なのか?兄上?」
「二人で銀貨一枚と銅貨二十三枚だぞ?充分だよ…食品が思ったより高いみたいだけど」
服はヴァルの予想通り、二人で銅貨六十枚で服を購入した。下着が高かった。
ゲールはいまいち物価がわかっていない。
「換金すればいいだろ?俺も持っているし」
「…ビフレスト金貨以外で?」
「銀貨もあるし!…ビフレストだけど…」
ああ、金貨以外も持っていたのか。まぁ、銅貨はもっていないだろうな。銀貨は何かの商品を買った時のお釣りだろうな。
やはり、買い物ぐらいさせればよかったかもしれない。銅貨ぐらいは持っていた方がいいんだが…使わなくてもね。
「うち以外では共通らしい、シヴ金貨とかシヴ銀貨は?」
馬が描かれた金貨と、顔の潰れた女神の銀貨を見せる。
ドワーフが作るシヴ金貨とシヴ銀貨は質が良いため、他国との大口の商売では使われる。うちにも、この金貨が流れてくる。あの商会、本当に稼ぎすぎてるんだよな。
「持っていない…なんで、兄上が持っているんだ?」
「魔王には色々仕事があるんだよ…まぁ、これは僕もお爺様が持っていたものを頂いただけなんだけど」
お爺様のへそくりの中にあったものだ。それにしても、一度きちんと教えないとな。
「だいたい、金貨なんてあれば街で一か月ほど宿に泊まれるぐらいだぞ?しかも食事つきで」
「そうなのか?もっといるだろ?」
「…そういや、お前、結構食べるよな…」
僕が屋台で購入したのは、串や、野菜などを挟んだパンや果実など全部で銅貨十枚ほどだ。葡萄酒も込なので、普通だろう。
それに対して銀貨二枚と銅貨七枚分を、さくさく買っては亜空間にこっそりしまっていたのがゲールだ。テーブルを持ち込んで部屋で食べるといってよかった。
「まぁ、何でも食うから、いいんだけどな…味が少し濃ゆいけど、なかなかいけるぜ、この肉」
「トカゲのあんかけ?ちょっともらうよ?…あ、甘酸っぱいけど、美味しいな。肉も弾力がある」
上品ではないけど、うちでも最近になって流行りだした揚げとかいう調理法で、トカゲ…確かこの辺の沼にいる犬程度のモーアリザードとかいう魔物の肉を使っているらしい。
沼にいるから、肉が臭いのかと思ったが、香草の香りや、筋肉質で弾力のある肉、甘いが柑橘系の酸っぱさのあるタレがかかっていて、美味しい。オレガノとか使っているのかな?ちょっと気になる。
「この魔物はうちじゃみかけないが…狩っておくのもありだな。宰相に食わそうぜ」
お土産になるかもね。でも、宰相がワニ系の魔族なんだけど、そこはいいのかな。
「まぁ、明日はさっそく任務というのをやろう」
何事も先立つものが必要だ。といっても、ほとんどゲールの食費だ。
物価は安いが、職に対しては少し高い。耕作地が少ないのかもしれない。
「兄上、新人とか若いやつらはクエストっていうらしいぜ?」
「くえ?すと?」
「そういう任務をクエストっていって、達成させていけば、難度の高いクエストが解放されて、ギルドランク?ああ、階級があがっていくんだとよ」
言葉を訳してくれながら教えてくれるが、いつそんな情報を仕入れたんだろうか。
「よく知ってるな」
「いや、カードの裏にちっさく書いてあるぜ?あとは…受付の女が教えてくれた」
「あ、本当だ」
ゲールが言う通り、カードの裏に説明がちゃんとある。いや、誰も教えてくれなかったんだけど。
「まぁ、任務の方が俺らには合っているんだけどさ、なるべく溶け込まないといけないだろ?」
「んー…僕は地味だけど、ゲールは派手だからな…女の人も囲むんだからな」
溶け込むに関しては、僕はゲールより上手い自信がある。
「やめてくれ。発情期もまだなのに…女、しかもノーマンに囲まれるのは勘弁してほしい…何にも感じないんだぜ?」
僕たち魔族は発情期がある。ノーマン種やドワーフのようないつでも発情できる者たちと、魔族やエルフ、竜族という決まった周期しか発情期がない者たちがこの世界にはいる。魔族も多種族だが、ほとんど発情期がある。一度の出産が多い種族か、僕らのように一人、しかも出生率が低いという種族の方がビフレストには多い。
個人差はあるが、だいたい成人を迎えて数年後に発情期がくる。こう、恋がしたい!って気分と胸の高鳴りだ。僕も一度はなったけど、忙しすぎて気づいたら発情期が終わってしまっていた。発情期にはだいたい、相手を見つけるらしいんだけど…まぁ、僕の同世代で結婚した貴族もいるらしいからね。
そもそも、家柄をのぞいたら、僕はモテる要素が少ないんだけどな!剣とか、筋肉とか、魔法とか…ビフレストでモテる要素は全部ゲールがもっているんだよなぁ。羨ましい。
「いやーモテる人間の言葉はいい教訓になりますなー。発情期を経験しても誰ともないという切なさをお前は味合わないんだろうなぁー」
僕よりも先に経験しちゃうんだろうか…いや、まだゲールの発情期はこないはずだから、僕にも一縷の望み…ないよね、わかってる!
「また、口から出てるぞ?ってか…なんだよぉ…兄上だって、モテてるじゃないか。さっきも、バーゼルがちらちらとみてたぜ?いいよなぁー。俺はああいう子の方がいいぜ。純粋じゃないか。抜けてるとこも愛嬌があっていいと思うし…兄上の立場なら、妾とかなら俺も賛成してもいいぜ?」
そんなモテ男が、変なことをいいだした。確かに、目が合うたびにバーゼルは赤面していたが…赤面症ではなく、そっちの人間か。
僕に好意もつやつ、みんなそっちってどういうこと?泣くよ?
「いやいや、なにいってんだよ、ゲール。僕は男を好きにはならないし、男にモテても嬉しくないよ」
恋愛で結婚をするような王族だから、どんな種族でもいいんだけど…理想をいえば、優しくて、研究に理解があって…僕より背が低いといいな。
「はぁ?兄上、本気でいってんのか?」
「本気も何も、男に興味はないぞ?」
興味がある貴族もいるらしが、僕はまったく興味がない。
むしろ、バーゼルがそういう趣味なのかと思っていたら、ゲールが目を細めていう。
「あのさぁ…バーゼルは女だぞ?」
「はぁぁぁぁぁぁぁ?嘘だぁぁぁぁぁ!髭つけてたしぃ!」
絶対に嘘だ!
二十五歳でも、まったく胸がでていなかったし、そこそこ筋肉あったぞ!僕より!確かに、ちょっと雰囲気がほわほわしてたし、髪の毛は手入れしてあって、顔もかわいいけど、男の人だろ!
「いや…女店主が一人じゃ危ないから、付け髭してたんだろ?あとハーフリングは兄上より筋肉あるだろ…役者だしな…それに兵士でも男の格好するじゃねぇか…兄上、医術者としてはいい腕を持っていても、男として修業が足りないなぁ」
そうしみじみいわれて、僕の何かが崩れた気がした。
どこで修行をしよう、本当。
遅くなりました。書きすぎたかな?ってなりましたが、中途半端になってしまいますので。
アクセスが凄くて驚きました。ブックマークもありがとうございます。また、よかったら、評価もしてもらえるとありがたいです。
それでは、時間つぶしになれば幸いです。