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手錠をかける時。  作者: うみつき海月[Kurage Umituki]
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1,ストリートチルドレン

三月。この辺りではまだ寒さが残る時期だ。日によってはコートやマフラーが欠かせない。

今月の後半にもなれば巷で桜の開花をまだかまだかと待つ声が上がってくる変わり目の季節だ。しかし、それは残念なことにもう、今年で5年も前のこととなってしまったが…。今では桜が裕福な人々のみの楽しみとなってしまった。オレらに桜を楽しむ余裕は全くもってなくなってしまった。家を持たないオレらがまだかまだかと待つのは食料だ。特に、木の実が朽ち落ち、やがて木の枝に何もなくなり、その裸になった木に嫌がらせをするかのような冷たく鋭く痛い風が吹き始める季節から、桜の花が咲き、新たな若草が生え始める季節の間、オレらは年で一番食料に困る。もちろん、暮らすのもとても大変な季節ではあるのだが…。

国はオレらのような住居を持たない国民に、食料支援をするという公表をしているらしいが、実際のところは、支援どころか国の役人すら訪れない。外国から支援金を受けているらしいが、そのほとんどがお偉いさん方のお給料に回っているだとか。そんなことをしている間に、いつしか国民の半分以上は国が手をつけられない状態になってしまったのだ。

五年前に国が大不況に陥ってからというもの、今現在まで日本の経済は低迷したままだ。回復の兆しはない。きっと、この先もこのままなのであろう。大不況をきっかけに大幅な人員の削減を強いられた企業は、無職者の増加に拍車をかけた。さらに、人員の削減のみで済む企業は9割9分大企業で、中小企業は、すべての企業と言っても過言ではない数の企業が、倒産に追い込まれた。これによって、無職者を増やすだけでなく、さらに日本の伝統技術産業をほぼ消滅させてしまう事態となってしまった。

無職ともなると、最終的には今まで普通と呼ばれてきた生活を送ることは不可能となる。つまり、住居を持つことは不可能となり、食料を得ることも困難となる。そんな国民が増えて、日本は今、こんな馬鹿みたいな状態に限界がきているのだ。国が何をしたいのか。オレには全くわからない。


人間の本脳なのだろうか、危機に陥るとどうやら子作りをするらしい。それによって、産み落とされた子供たちは、増え続ける一方である。五年前に騒いでいた少子高齢化が嘘のようだ。親がしっかり育てるケースはほとんど無く、その子供たち同士で、義理の家族を形成していくケースが多い。この不況前に生まれてきた子供も、親に捨てられるケースが多い。きっと、親たちは自分たちの生活でめいっぱいなのだろう。オレも捨てられたうちのその1人だ。このような子供たちを、どうやらストリートチルドレンと言うらしい。五年前の日本からすれば「ストリートチルドレン」がいるような外国は経済状況が悪く、治安も悪い。というイメージであったらしいが、今となっては日本がその当国となってしまった。


ストリートチルドレンが幸せだと、俺は思わない。毎日死と隣合わせの生活である。だが、俺が迎える未来は違った。おそらく、俺の人生の中で最盛期であったことに違いない…。

電気椅子に座る僕は目を瞑って、熟そう思った。


「ヨシノブ、感謝してるよ。」

そう言うと、俺の体にものすごい量の電流が流れた。



第二話に続く

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