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手錠をかける時。  作者: うみつき海月[Kurage Umituki]
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プロローグ

プロローグ


いつもと変わらぬ水曜日。

三月に入ったということもあり、卒業式が行われる学校も少なくないようだ。

卒業する生徒達はきっと、ひとりひとり様々な感情を持っているに違いない。見事、受験という難関を突破して喜びに満ち溢れる者、春からの新生活に心踊らせる者。

しかし、この世の中では、残念なことに決して"プラスな出来事"のみで生成されている訳では無い。"マイナスな出来事"も、生成しうるのである。卒業式だけを取ってみても、残念なことに受験を突破できなかった者、自分の好意を相手に伝えられず、後悔する者。他にも様々な"マイナスな出来事"があった者は少なからずいる。

この世の中は、"プラス"と"マイナス"によって、平均が保たれているのだ。

そんな風に平均が保たれている今日も、約73億ものストーリーが生成される。これから起こる出来事も73億のうちの一部に過ぎない。

午前11時を回った頃、突然、事件は起きた。

今日も多くの観光客が行き交う横浜、山下公園に、一人の女性のただならぬ悲鳴で、周りを行き交う人々が注目する。

地面には飛び散った血。その近くにいた男性の白いスニーカーにもシミを作る。

その直後、犯行に使われた包丁が金属音をあげる。その包丁の鋒にはドロっとした血液が付着している。

犯人は、犯行に使った包丁をその場に捨てて逃走した。

周囲には、悲鳴をあげる者、他にも、逃げまとう者、立ち尽くしてしまう者、泣き崩れる者、その他の行動をとるものもいたが、誰ひとりとして犯人を追う者、止める者はいなかった。いや、止めることが出来なかったのだろう。

被害者の女性は血を流し、ぐったりと地面に倒れている。どうやら呼びかけにも反応が無いようで、ビクリとも動かない。

おそらく、女性は死んでしまったのだろう。

救急車とパトカーのサイレン音が近づいてくる。

ここ、横浜では"マイナス"なことが起きてしまった。少なくとも、女性の家族、そして、彼女が不幸に見舞われるまで、楽しそうに話していた彼にとっては。

世の中では、無関係な人々がこの"マイナスな出来事"によって、無関係な"プラスな出来事"を得ることとなるだろう。そして、"プラス"と"マイナス"の平均が保たれるのだろう。


これは今から五年前のお話。犯人は今も捕まっていない…。


第1話へつづく。

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