第一話 というわけで大塚高校バレンタインチョコ大セールを開催しようと思うんだ!
もうすぐバレンタインデーだなぁと思ったらふと書きたくなりました……
「というわけで、大塚高校バレンタインチョコ大セールを開催しようと思うんだ!」
2月7日。バレンタインデーまであと一週間。女子達の話題にもバレンタインデーの話がチラホラと登場するようになった時、私はふと思いついたのだ。
「何が『というわけで』だ……」お弁当のエビフライをもぐもぐしながら隣に座っている司が呆れたように聞いてくる。
「だいたいバレンタインデーってなんの日か知ってる?バレンティヌスが処刑された日なんだよ!自分の命を犠牲にしてまで神の愛を伝え続けたバレンティヌス……まあ、詳しいことは私、よくわからないんだけどねあまりその辺あやふやで……とりあえず、愛の偉大さを伝えたバレンティヌスが処刑された日なの。これがのちにバレンタインデーになったわけ。欧米では恋人や友達、家族などにカードなどを送るんだけど、女の子から男の子にチョコレートを送るのは日本だけ。おかしいと思わない?」
私は司とミナホの顔を見渡す。うんうん、二人とも聞き入っている。
「ちょっと調べてみたんだけどね、1958年に東京のデパートで開かれたセールでチョコレート会社が行なったキャンペーンが始まりなんだって。で、今ではすっかりバレンタインデーといえばチョコレート!カップルいちゃいちゃ!リア充爆発!みたいになってるわけよ。私、この話知った時は泣きそうになったの。死んでまで本当の愛を伝えたバレンティヌスを侮辱しているじゃない、このチョコレート会社!日本は聖なる日の本来の意味が忘れられてセールスに利用されすぎなのよ!」
机に足をかけて力説する私。
「で、それがなんでバレンタインチョコ大セールになるわけ?」ミナホが首を傾げながら言う。
「いや、実はバレンティヌスに同情の念を送ると共に、日本のチョコレート会社に称賛の拍手を送ったの。少し、キャンペーンをしただけで、バレンタインデーといえばチョコレート!になって、毎年2月14日にはチョコがバカ売れ。さぞかしお金がたまるでしょうね……」
お金の話になって、よだれを垂らしてしまう私。おっと危ない危ない…慌ててよだれを拭う。
「もしかしてそれでお金を巻き上げようと?また今月ヤバイの?」司が大きなため息と共に怪訝そうに私を見上げる。
私、柊佳乃は親と仲がよろしくなく、家を出てきたというような感じだ。と言っても、まだ高校生。学校近くのボロアパートに親が毎月送ってくる4万円で生活している。食費などはバイトでなんとかしなくてはいけないのだが、最近あまりいいバイトが見つからない。今も私が食べているのはミニクリームパン(150円)のみだ。
「仕方ないじゃない……お腹空くんだから…今日だって朝ごはん食べてないの。板チョコを買うための資金がなくって……」お金がないとは辛すぎる。
「マジでやるつもりなのか?!高校で商売とかしていいのか?ってかそれよりも誰が買うんだ?!」
大丈夫。そのことについては校長先生と話をつけてきた。私の今の状態を盛って盛って盛りまくり、泣ける話に仕立て上げ、今年69歳になるおじいちゃん校長先生を号泣させた。もちろん許可をもらえた。もし売れなかったらその時は校長先生が買収してくれるそうだ。
司とミナホの視線が痛い。仕方がないではないか!校長先生を騙すのは少し躊躇ったが、人間、食べないと生きていけないのだ。
「そこでミナホにお願いっ!可愛いミナホが売ったら絶対たくさん売れるに決まってる!私が売ったのなんか誰も買ってくれないし、せいぜい校長先生に買収されて終わりだよ〜できるだけたくさん売りたいの!目標は50個!だから手伝って下さい!」私はミナホに手を合わせる。ミナホは色白でサラサラの黒い髪、大きな目とワンポイントの涙ボクロでものすごく可愛いしモテる。一週間に少なくとも10回は告白される私の自慢の親友だ。
「ええ〜私?可愛くなんてないし!佳乃の方が可愛いじゃない!チョコ作るのとかは手伝ってもいいけど、売るのは佳乃がやってよ!恥ずかしいし………」
チョコ作りは手伝ってくれるんだ!やった〜
私は昨夜徹夜で作成してきたセールのポスターをミナホの前にドンと置く。コピー機なんてないので一枚一枚手書きだ。
「これ、作ってきたの。私の力作!1階から3階の掲示板の空いているところに貼っといて下さい!余ったのは校庭とかにばらまいといていいですから!私は板チョコを買い出しに行きます。」
50枚はある私のポスターを呆気にとられて見つめているミナホと司。
「司!司!買ってくれるよね?」私は司の顔を覗き込んで聞く。ここで彼が断ったら今日が彼の命日だ。
「そりゃあ、まあ、買うけど……だからそんな怖い顔で見つめないで!断ったらコロスみたいな雰囲気かもし出さないで!」
良かった良かった……一人目の客ゲットだぜ!
こうして、私のバレンタインチョコ大セール(戦い)が幕を開けたのだった………




