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九話「初めての力」

九話「初めての協力」

「何とかしてトラックを破壊するしかないな」

 武彦は舌打ちしていた。トラックを攻撃してもファントム

 の群れの一部がそれを止めてしまう。何とかしてファント

 ムの群れごとトラックを破壊せねばならない。

「デュフォンと俺のシンクロで破壊しても良いが・・」

『最低でも数日は校庭が使えなくなるな』

 シンクロ(同調)。精霊と契約主の心を一つにし強大な魔法

 弾を放つ技。精霊と契約主の心が完全に一致しなければい

 けないが、長年共に戦ってきたデュフォンと武彦ならば造 

 作の無い事だ。だが問題は威力だった。この二人のシンク

 ロだと数日の間校庭が使用不可となってしまう。それだけ

 の威力が出てしまうのだ。

「他にシンクロが出来るのは・・あいつらか」

『だが・・あの二人にとっては初めての協同作業となるのだ』

「・・本当にあの精霊を憎んでるのならとっくにあの精霊は

 この世にいないさ」

 結局カズキはリンを憎んでいるのではない。怒りの矛先をど

 こへ向けていいのか分からないうちに、リンと契約してしまった

 ために、リンを殺そうとしているのだ。やり場の無い怒りを

 リンにぶつけているだけに過ぎない。そうでなければ今日ま

 でリンが生きてきた事に説明が行かない。カズキほどの力の

 持ち主ならばリンを消す程度は出来るはずだ。

『そう上手く行くとは限らんが・・』

「賭けてみるしかない」

 そのころカズキは校舎の外に出ようとしていた。その少し後

 ろにはリンの姿もある。輝彦達は学院長が治癒している。

「俺はお前の力を借りるつもりなどない」

『それは・・分かっています』

 カズキは後ろを見ようとは思わなかった。学院長はファント

 ムの群れごとトラックを破壊するためには二人が協力するこ

 とが必要不可欠だと言っていたが、一人でもやってみせると

 カズキは思っていた。精霊の力を借りるなど絶対に嫌だ。こ

 こでリンの力を借りてしまえばそれはリンの存在を肯定する

 ことにもなる。カズキは魔力の塊をトラックに向けて飛ばし

 た。ファントムの群れの一部が盾となる。カズキはすぐに魔

 法弾を数発放つ。だが、全てファントムの群れにより止めら

 れた。何度か同じ事を繰り返すカズキに呆れたように誰かが

 言う。

「ただの力の浪費だ。そこまで馬鹿とは思わなかったが・・」

『結局ただの子供だという事だ』

 武彦とデュフォンであった。カズキは二人の言葉を無視して

 攻撃を続ける。だが成果が出る事はない。ファントムの群れ

 は増え続けている。武彦はカズキの前に立った。

「無駄だと言っているのがまだ分からんのか?」

「俺一人でこれくらいはやってみせる」

「お前・・自分が騙されているのは知ってるのか?」

 カズキの動きが止まる。武彦は更に言葉を続ける。

「お前の爺さんの本当の目的・・教えてやってもいいぜ」

 カズキが動揺する。カズキの祖父は精霊使いとしては一流

 の腕前だった。精霊戦争以降精霊と人の共存を訴えており

 カズキとリンの契約を押し付けた張本人だ。そんな人物の

 本当の目的とは一体何なのか。カズキは武彦に尋ねた。武

 彦は少しだけ笑うと、こう言った。

「精霊を従順な兵士に仕立て上げる事だ」

「!?」

「あの爺さんの目的はその精霊を自らの手駒にすることさ」

 武彦は真剣な表情でカズキの祖父の目的を告げていく。

 教団と手を結び、この国を自分の物にするためにいろいろ

 と今までやってきた。カズキとリンの契約もその準備の一

 つに過ぎない。

「お前がそれでもあいつに従うって言うならそれでもいい。

 だが・・その時は死も覚悟しろ」

「・・俺は・・」

 カズキはリンの方を思わず見てしまった。命令に逆らわない

 兵士。それが自分の祖父の求めるものなのか。もうカズキの

 答えは決まった。

「そんなもの認めるわけにはいかない」

 カズキはリンの傍まで歩いていく。武彦とデュフォンは迫り

 来るファントムの群れから二人を守るために攻撃していく。

「・・今までの事を忘れてくれとは言わない・・だが・・」

『・・分かっています。・・今は・・』

 二人の意識が一つになり始める。互いの思いが一つになって

 はじめて成功する。カズキとリンは必死に互いの思いを一つ

 にしようとしていた。そして、カズキの腕から強大な魔法弾

 が放たれる。ファントムの群れが一瞬にして消え去り、そし

 てトラックが爆発する。

「後は残りの敵を片付ければ終わりだ。デュフォン!」

『任せておけ』

 こうして学院を襲った襲撃者達は全て片付けられた。だがまだ

 彼らは知らなかった。これがまだほんの始まりであることを。

 これから自分達が巻き込まれていくことになる戦いの事を。

 

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