七話「復讐」
七話「復讐」
「卜部、俺は左から攻める」
「分かった」
卜部と日下部の二人はアカツキの足止めのために
戦っていた。日下部が左から回りこみ、卜部は右
からアカツキを追い込む。二人は左右からの挟撃
を実行していた。
「ベルリン以来だな、アカツキっ」
「まさかこんな所で会うとはな・・。だがベルリン
での雪辱を晴らすチャンスでもある」
「我ら二人を相手に勝てると?笑わせてくれる」
日下部が刀を鞘から抜いた。アカツキは日下部の
足を止めるために炎弾を放つ。日下部がよろめい
た所をアカツキは攻める。だが、卜部の放った斬
撃がアカツキの足を捉えた。
「くっ・・」
「後の障害は取り除くべきだと俺は思うが・・」
「同感だ、卜部。ここで仕留めるぞ」
「承知」
二人がアカツキに斬りかかった頃、ルイと仙波の
二人はカズキの姿を捉えていた。リンは学院の一
号校舎の屋上に居る。現在カズキが居るのは一号
校舎の入り口付近だ。屋上付近には達彦達が待機
している。ルイと仙波の目的はカズキを屋上まで
追いやることだ。
「・・まずは私が仕掛けましょう」
「頼んだぞ、仙波」
「承知」
仙波が刀を構えカズキに近づく。カズキもすぐそ
れに気づいた。
「小僧、お主にう恨みはないが・・これもあの方の
ため・・。ここで死んでもらうっ」
仙波が襲いかかった。カズキはそれを回避し階段
を駆け上がる。仙波はその後を追う。その様子を
見てルイも別の入り口から校舎の中に入る。カズ
キは走りながら考えていた。リンの居場所は校舎
の屋上。達彦達は恐らくそこにいる。仙波達はあ
くまで囮だろう。本命は達彦達に違いない。それ
を知りながら、カズキは輝彦達の所へと向かって
いた。
「・・あんな連中まで呼ぶとは・・驚きだ」
「これくらいやらないとお前を話し合いの場に連れて
いくのは無理だろうからな」
輝彦達とカズキが睨みあう。互いに殺しあうつも
りなどなかった。カズキにしても輝彦達を力ずく
で黙らせるなんてことはしたくない。
「・・どうしてそこまでこだわる?」
「学院内に精霊が彷徨っているという状況を解決し
たい」
カズキは笑った。本当はそんな理由ではないだろ
う。もっとちゃんとした理由があるはずだ。ただ
それを言いたくないだけか。輝彦が叫ぶ。
「信雄、左から回り込め」
「・・もう遅いっ」
カズキの姿が一瞬で消える。信雄は舌打ちした。
そこへルイと仙波が到着する。二人は様子を見
てすぐに事態を察知した。
「今あの精霊は一人だ。・・まずいな」
「仙波、貴方は卜部と日下部の支援を、私達はす
ぐに精霊の所へ向かうわ」
仙波が頷く。最悪の状況だ。今リンは一人だ。
そこへ向かわれたらまずい。とりあえず今出
来ることは可能な限り早くリンの所へと向か
うことだ。だが走り出そうとしていたその時ルイ
は異変に気づく。校庭に何台かのトラックが入って
くる。
「・・あの紋章・・」
「ルイ・・さん?」
「二人は先に行って。私は・・あれを破壊する」
ルイが屋上から飛び降りる。途中でルイの背中に翼が
生えた。そしてトラックへと向かう。信雄と輝彦は顔
を見合わせ頷き走り出す。仙波達もその異変に気づい
ていた。
「結局俺はただの予備でしかなかったか・・」
アカツキは武器をしまう。仙波達が驚く。アカツキは
行けと言った。
「俺の出番はここまでのようだ」
「・・行くぞ、日下部、仙波」
「おう」
三人の男もトラックへと向かう。そして学院長もその様
子を見ていた。学院の校庭に侵入してくるトラック。そ
の車体には一つの紋章が刻まれていた。
「・・欧州魔法教団所有のトラック?・・まさか・・」
アカツキすら知らなかった欧州魔法教団の非道な作戦が
始まろうとしていた・・