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六話「顔合わせ」

六話「顔合わせ」

「今日の放課後、公安部メンバーは生徒会室に集まって

 くれ」

 達彦は公安部メンバー全員にメールを送信した。今日

 の夕方三好武彦率いる協力者達がやってくる。何のト

 ラブルもなければだが。学院長が言うには最近ヨー

 ロッパの状況が劇的に変化しつつあるらしい。現在世界

 には二つの大きな組織が存在する。一つは魔法社会の

 形成に大きく関与した国際魔法機関。そしてもう一つ

 はヨーロッパの魔術師達が国際魔法機関に反旗を翻す

 形で作られた魔術教団(欧州教団)である。この二つが

 ヨーロッパを舞台に激突したのが欧州戦争である。魔

 法教団にはヨーロッパの全ての国が加盟している。ア

 ジアでも数国が参加している。ただこの教団が分裂の

 危機を迎えているらしい。いろいろな事情からドイツ

 を中心とした少数の国が国際魔法機関に参加しようと

 しているらしい。ドイツは魔術教団の創立に大きく関

 与しており内部機密も保持している。そこで他の国か

 らすればそんな国を敵側に行かすけにはいかないのだ。

 力ずくで止めることになったとしても。

(・・三好さん達は来れないって事も十分にありうるな)

 あまり考えたくはないがその可能性は十分にある。武

 彦もドイツにいるのだから。そんなことを考えながら

 輝彦は授業を受けていた。そのころ学院長は一本の電

 話を受けていた。

『武彦の代わりに私が行く事になった』

「・・教団の分裂・・なんてことじゃなさそうですね」

『ああ。武彦が保護している娘が熱を出してな』

「彼らしい理由ですね・・」

 学院長は苦笑していた。ベルリンの悪魔と呼ばれ敵

 からも味方からも恐れられていた戦士だと言うのに

 戦場以外では意外に心配性だったりする。責任感が

 強いのもあるだろう。一度保護したのだから最後ま

 で面倒をみなければいけないと思っているかもしれ

 ない。

『ではよろしく頼むぞ』

 そして放課後。生徒会室に公安部メンバーは集まって

 いた。事情を知っている二人を除いて他全員が驚い

 ている。刀を持った数人の見知らぬ男と、明らかに

 教職員ではない女がいるからだ。まずは自己紹介を

 行う事にした。公安部のメンバーからはじめていく。

「坂本信雄。学年は四年。公安部副部長です」

 達彦の隣に座っている男子が言った。公安部副部長。

 普段は事務仕事全般を引き受けているためここに来る

 ことは滅多にない信雄の横の生徒から順番に自己紹介

 をしていく。そして今度は彼らの番となった。まず

 一番左端に立っている男が名前を言う。

「日下部修一だ。よろしく」

 そして次にその横の男が発言する。

「卜部亮だ、よろしくな」

「仙波小五郎だ。よろしく頼む」

 そして最後に右端に立っている女が発言する。

「ルイだ。今日は武彦の代わりとしてやってきた」

 これで一通り自己紹介は終わった。ただ輝彦は少し妙

 に思っていることがある。ルイはともかく、日下部と

 卜部と仙波の三人は軍人に見えて仕方がない。それに

 彼ら三人が持っているのは日本刀だ。とても普通の人

 には見えない。だがそんなことを気にしても仕方のな

 いことだった。むしろそれならそれで頼もしい。

「一つ聞きたいんですけど・・ドイツで何かあったんで

 すか?」

「そんなことじゃない。ただ個人的な理由で来れないだ

 けだ。そんなことより、具体的にどうやって捕まえる

 んだ?」

 輝彦は自分の考えた作戦を話す。ルイや日下部達四人

 がまずカズキを追い込む。そして後は輝彦達がカズキ

 を完全に包囲しこちらの要求に従わせる。口で言うの

 は簡単だが、カズキに輝彦達が待っているのを悟られ

 てはお終いだ。出来るだけ伏兵の存在に気づかれない

 ようにしないといけない。

「一つ確認したい。捕まえるのは生徒一人だな?」

「そうだけど・・」

「質問を変えよう。この学院に教団の人間はいるか?」

 輝彦はすぐに一人の人物を思い浮かべる。アカツキだ。

 アカツキはまだここにいるはずだ。アカツキの名を口

 にすると卜部達が異様な反応を見せた。

「まさか・・こんな所で奴と会うことになるとは・・」

「アカツキ・・か。厄介な男だよ」

 アカツキの精霊嫌いは有名らしい。ルイはアカツキの

 介入も十分にありうると言った。

「卜部と日下部の二人がアカツキを抑えるしかないな」

 アカツキに邪魔されればどうなるか分からない。カズ

 キを追い込むのにはルイと仙波の二人がいるだけでも

 足りるだろう。

「二人とも頼んだぞ」

「承知」

 そのころカズキはアカツキと共に屋上にいた。アカツ

 キは仙波達が来ているのに気づいていた。

「俺が囮を務めよう。お前のような子供にあの四人の相

 手はきついだろう」

「・・あんたなら出来るのか?」

「何度か戦ったことはあるが・・勝ったことはないな」

 カズキは舌打ちした。明らかに不利だ。まだベルリン

 の悪魔が来ていないだけましとは思うがそれでもきつ

 い。カズキも学生としては優秀であるが、あくまで学

 生としては、だ。大人相手、それも元軍人相手に互角

 に戦えるはずもない。だからといって諦めるわけには

 いかない。

「・・どうにかしてその四人を足止めしなければいけな

 いか・・」

「お前はどうしてそこまであの精霊を消したいんだ?」

「仇を討つためだ」

 カズキの心の中にあるのは復讐心だけだった・・

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