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二話「彷徨う精霊」

二話「彷徨う精霊」

「学院内に精霊?それも上級精霊が?」

「目撃情報は一つや二つじゃないんです。・・多数の生徒がいろんな場所

 で見ています」

 東京魔学院生徒会公安部は現在一つの問題を抱えていた。最近学院内で

 精霊が目撃されるのだ。下級精霊であれば問題はない。ただその目撃さ

 れている精霊はまず間違いなく契約制霊なのだ。教職員の一部も目撃し

 ているが、その精霊を捕獲するには至っていない。

「契約主と喧嘩でもしてるんじゃないか?」

「初めて確認されたのは・・入学式の頃ですよ」

「一週間前・・か」

 契約制霊と契約主の関係は主従関係だ。それでも契約制霊が反発するこ

 とはよくある。種族の違いなどもあり互いに言い争い、出来てしまった

 溝を埋めることが出来ずに契約を解除するというケースも少なくはない。

 ただ、輝彦は一週間という長さに疑問を抱いていた。

「・・とりあえずその精霊を捕まえるしかないな・・」

「ですが・・先生達でさえ捕まえれなかったのですよ」

「このまま放っておくってわけにもいかないだろ」

 公安部は臨時に全員が集まることとなった。といってもすでに放課後。用事

 で来れない者もいるのは当然だった。十五分後、生徒会室に集まったのは輝

 彦と先ほどから生徒会室にいた者を除き五人。

「急なことだ。仕方ないが・・この人数じゃきついな」

 輝彦がそういった時、生徒会室のドアが開いた。入ってきたのは黒い服を着

 た一人の男だった。輝彦が立ち上がる。

「部外者は立ち入らないで欲しいのですが・・」

「学院長の許可は取っている。文句はあるまい?」

 男は一つの紙を提示した。それに見覚えがある輝彦は呆然とした。その紙に

 はその男の素性が書かれていた。欧州魔術教団所属の魔術騎士、アカツキ。

 それが男の名前だった。欧州魔術教団というのは、欧州大戦と呼ばれる初の

 人類同士の魔法戦争で国際魔法機関から独立を果たした組織だ。ちなみに日

 本は国際魔法機関に参加しておらず、魔術教団に入っている。だから魔術教

 団の騎士が日本に来ていても不思議ではない。ただ問題はアカツキの所属し

 ているのが欧州魔術教団ということだ。アジアには魔術教団の支部として東

 洋魔術教団がある。魔術教団が介入しなければならないような事件が発生し

 た場合そこから人が動かされるのが普通である。

「この学院内に彷徨っている精霊を保護しに来た。出来れば協力していただき

 たい」

「私達はその精霊と話し合ってみるつもりですが・・」

「話し合い?・・そんなものは不要だ」

 男の表情が一変する。かつて起きた人と精霊との戦争。一般に精霊戦争と呼

 ばれる戦争のこともあり、精霊を憎む人は少なくはない。精霊を無差別に殺

 していくという輩も存在する。国際魔法機関や魔術教団もそれを容認してい

 る節すらある。教団内に精霊を憎む者がいたとしても不思議ではない。ただ

 輝彦はこの男は異常だと思っていた。

「外部の人間に頼る前に私達も努力をしてみたいのです」

「・・そういうことであれば私は待とう。だが、君達が失敗した時は・・」

「分かっています」

 アカツキは部屋から出て行った。確かにアカツキは教団からは保護を命じら

 れているかもしれない。だが、監視役が誰もいない状況であれば事故に見せ

 かけてその精霊を殺すことも可能だ。教団の魔術騎士と言えば位はかなり上。

 それも単独行動を許されているほどの男だ。そんなことくらいで咎める者は

 誰もいないだろう。何としても精霊を公安部で保護せねばなるまい。

「さて・・早速捜索するか・・」

 公安部のメンバーはその精霊が目撃されたいくつかの場所を重点的にその周

 囲を捜すことにした。輝彦はポケットから携帯を取り出し弟の健太を呼び出

 す。少しでも人数は多いほうがいい。

「お前・・カズキ君と同じクラスだったな?」

「ああ。でも今日は休んでた」

「そうか・・。・・手伝う気があるなら生徒会室まで来い」

 もちろん健太が断れるはずはなかった。輝彦は健太と共に一階の実習室付近

 を捜す。この場所は一番初めに精霊が目撃された場所だ。その後もここが一

 番多く目撃されている。

「・・一つ思ったんだけど・・精霊って確か姿消せるよな?」

「ああ、そのはずだ」

「ならその精霊はどうして姿を見せてるんだ?」

 輝彦は足を止める。精霊は霊体に近い存在だ。元々は実体は持たない。ただ

 魔力で物質化しているだけ。普段は物質化をしていないことが多い。だが学

 院内で目撃されている精霊は姿を消していない。

「その理由は・・私からお答えしましょう」

 廊下の先から聞きなれない声が聞えてきた。健太と輝彦が警戒する。そこか

 ら姿を見せたのは一人の精霊だった・・

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