レッドゾーン
動けぬ亀はその身を守ろうと甲羅に閉じこもり続ける。
狩人はそんな亀を一方的に嬲りつづける。
そうしてひたらすら打たれ続け、耐え続ける男にペインターは言う。
「へぇ、よく耐えるね。じゃあゲームの強度をあげようか」
ペインターの指先から射出される新たな塗料。
機動力を封じられたレンゴクがそれを回避できるわけもなく、塗料は彼の両腕にこびりつく。
それは青でも紫でもない、シンメイの報告にはなかった新色『赤』。
その効果をレンゴクが推察するより先にペインターが動く。
「いくぜ」
ガード上でもお構いなしに放つペインターのその一撃は、レンゴクの脳と意識を揺らした。
別に攻撃が頭部に命中したわけじゃない。
ガードするために固めたレンゴクの両腕にヒットしたにも関わらず、頭を殴り飛ばされたかのような激痛に彼は襲われたのだ。
「こいつは効くだろ? おっさん」
挑発的で惨忍な笑みを浮かべる少年を見て、赤の塗料の効果をレンゴクは直感する。
――なるほど……、赤は痛覚の感度を高めるってわけか……。
物理的なダメージは変わらなくとも、激痛は精神を疲弊させる。
精神力と気力は密接な関係にある。
ペインターのこの一手は気晴らしの拷問としても戦術としても有効な攻撃であることは間違いなかった。
「さて、おっさんはこの状態で何発受けられるかな?」




