判断
レンゴクは思考する。
これが待ち伏せの罠であるのなら、前提としてペインターが自身に付けられた発信機の存在に気付いていなければならない。
何故ならそうでなければ、こんなところで座り込んでいたって追っ手がくるかどうかなど彼にはわからないのだから。
その点において、まずシンメイほどの男がそこをしくじるのかという疑念が残る。
もう一つ、そもそも彼がここで待ち伏せるメリットとは何かという事。
当然こんなところで待ち伏せをするなら、その目的は追っ手を返り討ちにする事にあるだろう。
何の為に……。
その手の依頼でも無ければ、犯罪者側には掃除屋を返り討ちにしたからといって直接的なメリットは生じない。
能力者とは言ってもケチな強盗犯にそんな依頼をする人間がいるとも思えない。
ペインターに掃除屋と戦うメリットがあるとするならば、裏の世界で名を上げる為ぐらいだろうか。
しかしそんな為にわざわざヤスダ・シンメイやその仲間を待ち伏せるなど……。
シンメイの強さは彼との戦いから逃げ出したペインター自身がよく知っているはず。
そんな男をわざわざ待ち伏せるなどよほどの馬鹿でもやりはしまい。
――待ち伏せは考えすぎか……。
レンゴクは待ち伏せの可能性は低いと判断、様子見をやめ廃倉庫の中へと入っていく。