通信
「もしもし、レンゴク君ですか。今、犯人との接触に成功しました」
「やっとですか。待ちくたびれましたよ」
シンメイ達とは別の場所で待機していたレンゴクが茶化すようにして言う。
「待つのも仕事のうちの世界です」
「まぁ、そうっすけどね。それで……」
「無事、発信機を仕込めました。シシー君の計測データと共に、そちらに今から送りますよ」
「……おお、犯人結構飛ばしてるなぁ」
レンゴクが送られてきたペインターの現在地情報を目にしながら言った。
「事前データにあった例の能力です」
「ペイント能力ですか」
「色によって効果が異なるのは間違いなさそうですが、青色はどうやらペインターの気に反応して強い反発作用を生み出すみたいです」
「それを上手く利用して逃走してるわけですか」
「ええ」
「ペイントは犯人の気にだけ反応するって感じっすか」
「そうでもないみたいですよ。紫の塗料も残していったので、そちらも調べてみましたが青色と違い、私の気にも反応を見せていました」
「紫ですか」
「私の気を相殺するように蒸発していきました。使い方は気の操作の妨害といったところでしょうか」
「それはまた厄介な」
「ええ、一つ一つの能力もそうですが。一体何種類の色を持っているのやら、十分に注意して下さい」
「能力を使わせる前に仕留めるのが一番なんでしょうけど」
「もちろんそれはそうです。ですが、今回は昇格試験を兼ねた依頼。この程度の相手ならば不意をつくのではなく、正面から戦って処理して欲しいものです」
「この程度ですか。751って数値がさっき送られてきたんですけど、これを正面から叩けって、Cの昇格判定、随分と厳しくないっすかね」
「それだけあなたには期待しているって事です」
「嬉しいお言葉ですけど、こないだ彼女に見て貰った時、俺600ほどだったんですけど」
「ええ、ですがあれはあなたの本気ではなかったでしょう」
「いやいや、遵心会入る時も正確な測定されましたけど似たようなもんでしたよ」
「私の指導を受けて入会当初よりも能力者として成長しているでしょうし、何よりあなたは機械測定で力の出るタイプには見えませんからね」
「まぁ実戦派なのは否定しませんけど」
「ではその実戦、期待していますよ」
――化け物が気楽に言ってくれる。けど、やるしかねぇな。
シンメイからの通話を切り、レンゴクはペインターのもとへと急いだ。