Liars
初めての投稿です
自作小説には自信がないのですが、伝えたい想いがあり……書いてみました。
主人公のK(女です)は、後半少し自分に重ねている部分があります。
わかりにくい部分も多々あると思いますが話を進めるごとに全ての真実が明かされる予定です。
まだまだ序章ですが…読んでいただければと思います。
…な!
「…え?」
意識が朦朧としている中、だれかの声が聞こえた。
…………くな!
「だれ、なの…?」
声の主が知りたくて、
何度も、何度も耳を澄ませるが…もう何も聞こえない。
唯一分かったのは、その声が自分の敵じゃないということ。
むしろ…どこか安心するような…
…暗闇の中で、1つの大きい背中が見えた。
猫背で頼りない、けれど大きい、大きい背中だ。
「……あ」
「おーい?やっと起きたか」
「ん……ここは…?」
「何寝ぼけてんだよ。ここがふかふかベッドのある天国に見えるか?」
揺れる車内の隅で、私は寝ていたようだった。
「あ、そうか…ふあーぁ………眠い」
「そんなこと言ってっと永眠すっぞ?」
「Eの言う通りだな。ハハハッ」
「…あんたら2人、いつか殺ってやる。」
その言葉に、若干身を引く仲間のE、そしてRを睨みつつ、私は腰にぶら下げた銃をさりげなくチェックした。
仲間を疑うわけでも、本当に殺るわけでもないが…
敵に銃を奪われては身の終わりだ。
「…にしても、まだ着いてなかったの?ヘーゲルの家まであと何時間このくっさい車にいなきゃいけないのよ。」
「わりぃわりぃ。さっきお前が寝ている間に警察が検問やっててよ?危うく首切られるとこだったぜ」
「はいはい。…で?ほんとの理由は何。」
そう言ってDを睨みつける私に、Eが笑いながらDの肩を叩いた。
「おーっと。やっぱ察しがいいようだな。おいどうする?D!」
「…コンビニに寄ったんだよ!わりぃか!バカ野郎!」
「またタバコ、ね。」
「まぁまぁ。そのぐらいにしておけよ。」
苦笑しながらRがそう言った。
気の優しいRは、いつも誰かを庇う。
まあその行動は、情の無い戦場に降り注ぐ一粒の涙のようなものなのだが。
「…」
そんなRから視線を外し、車窓から空を眺めた。
ちなみにさっきから仲間同士をEとか、Rとか呼んでいるが…
これは、私達「Liars」(サンフランシスコに本拠地をおく組織、具体的には要らない政府の役人、政治家、時には大企業の社長などを排除している…つまりは、殺し屋。)のルールだ。
ルールの1つ目。「名前は明かさない。」
だから私達は、お互いに自分で決めたイニシャルで呼び合う。それが本当にその人のイニシャルなのかどうかも分からない。
長年この組織にいる人の中には、ずっとイニシャルで呼びあっていたため自分の本名を忘れてしまった人もいるようで…
そんなことにはなりたくない。
だが、あまりにも長い間(といっても10年あまり)ここにいたので、私も危ないかもしれない。
「…はぁ。」
「ん?どうした?」
「いや。なんでもない。」
「そうか、おっもうすぐだぞ!」
車内の雰囲気が、一気に変わった。
ある者は銃を構えある者はナイフを撫でた。
「…皆、分かっているな?我がLiarsのルール…」
これが2つ目のルール。
「父さんに、命を。」
…バンッ!
ドタドタドタ………バンッ
「おいおい、どうなってるんだ!」
「ヘーゲル様!こちらへお逃げ下さい!」
「くっそ…なんでこんな事に!」
バンッ
「うわぁぁぁ!」
「きたぞ!奴らだ!」
「ヘーゲル様!お逃げ下さ……うっ」
政治家であるヘーゲルの秘書らしきその男は、Eの弾丸を受けあっけなく崩れ落ちていった。
「ッ!!」
「…こいつがヘーゲルか。」
倒れた秘書に駆け寄るヘーゲルを、鋭い目で見るP。
Pは、残虐極まりない殺し屋として有名だった。
Liars内でも随一の腕をもち幹部への昇格も期待されたが、本人は「そんなの意味が無いだろ。俺はただ、父さんに命を捧げるのみ…」とクールに言っていた。
そんな性格の反面、Pはそのイニシャルから陰で「Pちゃん」と呼ばれており、その陰のあだ名を思い出すたびに私はついニヤついてしまう。
「…たったすけてくれ!俺はなにもしていない!」
殺し屋5人に囲まれ必死の説得を試みようとするヘーゲルに、Pの銃口が向けられる。
「悪いな。」
…バンッ
「あー疲れた。」
「皆よくやった。これで今月の任務は終わりだ。」
「おっしゃー!やっとか!」
「報酬はたっぷり頂くとしよう」
「じゃあ今夜は隊長のおごりだな!」
そう言って場を盛り上げるEに、してやられた…と頭を掻きながら隊長が笑っていた。
隊長、イニシャルGはベレッタM92(小型の銃)を愛用し、それでいてかなりの銃オタクだ。
「隊長ー。今日の戦利品良いものあるみたいっすよー?」
「おーぜひ見せてくれ。どれどれ…」
ガチャガチャ…
「私も見るわ。新しい銃が欲しかったのよ。」
私は、無造作に置いてある20程の銃を散策した。
「今日のお前は凄かったよなぁ、銃の弾が切れたその3秒後にはその銃で相手を滅多打ちにしてたもんな」
「あれは痛そうだったな…って、おお!?これはもしかして!」
そう言いGが掲げたのは、ドイツ製のPSG1だった。
「お、隊長それPSG1じゃないっすか」
「これは嬉しいぞ!!欲しかったんだよ!」
銃を片手に大喜びの隊長を横に、私も自分に合うものを、と探していた。
すると、1つの銃が目に入った。
「…M40か。」
「お前には合うんじゃないか?あいつで試してみたらどうだ。おい、E!」
「いや隊長何言ってるんですか?」
「そうだな、撃ってみよ」
「いやちょ、お前何言って…!」
「大丈夫。」
「何がだ!?」
「じゃあGでいいぞ」
そうして急なとばっちりを受けたGは、絶望的な表情だった。
任務が終わりLiarsの隠れ家に戻った私達は、任務完了の報告をし、自分達の部屋に戻った。
ドアを開けるといつもの風景が広がる。
壁、床、天井…家具までもが黒と白で覆われてる部屋。
だが1つだけ、違う色彩が混ざっていた。
私が大事にしている赤の椅子…
座ると毛皮の感触が心地よく、昔の温かい思い出が蘇ってくる。
今日はこのまま寝てしまおうか…
この後予定していたいつもの訓練がどうでもよくなり、私はウトウトしていた。
その矢先、ドアをノックする音が聞こえた。
「訓練のお時間です。」
「…分かってるわ。すぐ行くと父さんに伝えて。」
今の今まで忘れていたが…
今日の訓練には父さんも参加するらしく、皆の腕がおちていないか視察するそうだ。
珍しい事なので、参加するべきか…
正直面倒だ。と心で思いつつ戦闘用の服に着なおした。
…ガッ
カンッカンッ
訓練場にはもうすでに父さんの前で戦ってる仲間がいた。
「父さん、遅れました。」
「やっと来たか。今やってるのはOとIだぞ」
OとIか…
訓練は小型ナイフを寸止め方式で行っていた。
正直、新人のIとベテランのOでは訓練にもならないんじゃないかと思ったが、意外にもIが先手をとっていた。
「I…どう思いますか?」
「あいつは良い筋をしている。だが力の使い方がまだ餓鬼だ。ほら見ろ…もう体力が切れ始めている。」
父さんのIに向けた冷たい視線に、幼い頃…自分が組織に入って間もない頃を思い出した。
カンッ…………
ガッ…カンッカンッ…
なかなか決まらない両者の戦闘に、見ていた他の仲間が野次を飛ばす。
「おいおい、さっさと倒しちまえ!」
「O、そんな餓鬼すぐ終わらしちまえよ!」
それが頭にきたのか、Oがスピードを上げた。
ガッ…………カンカンッ
…………シュッ
Iは対抗しきれず、Oのナイフが喉元で止まった。
「お、俺の負けだ…!」
オォーーーー!と、周りから歓声が上がる。
そしてOが満足気に観衆の元へ戻っていった。
「次は誰がやるんだ?」
ザワザワと皆が辺りを見回す。
父さんの手前、負けると幹部への昇格が消える不安があるためか、なかなかやる者がでてこない。
「…次はお前だ。」
父さんが私を見て言ったその一言で、皆が私を見た。
負けるのを望んでいるかのようにニヤニヤして私を見る者、キラキラした目で私の技術を期待する者、沢山の殺し屋の視線を浴び、私は訓練場の中心に立った。
「私の相手をする者はいるか。」
再び皆がザワザワと辺りを見回す中、Oの隣にいた男が前に出てきた。
「俺が相手してやるよ、お嬢さん?」
190はあるその身長に、ボディービルダーにでもなりたいのかと思うくらいの筋肉。そして自信に満ち溢れた顔。
普通の女ならビビるだろうな…と私はひそかに笑みを零した。
「…なに笑ってんだ」
私はナイフを握り直し、構えた。
…私は、負けない。
「くれば?早くしなよ」
「くそ…女のクセに調子乗るなよ!」
ナイフを振り上げたその男は、一気にかかってきた。
カンッ
ナイフのぶつかる音…
観衆が飛ばす野次…
すべてが昔の私にはありえないことだった。
だが今は、こうして誰かと戦う日々。
訓練であってもこんな仲間など信用できないのだから敵と代わりはない。
「あの男馬鹿だよなー」
「は?相手は女だぞ?楽勝だろ!」
「いやいやあの女は…」
カンッ…ガッ………
「ハァッ…ハァッ」
「このくらいでもう根をあげるつもり?…つまらない男。」
「ハァッ…く、くそ!……ハァッ」
やけくそになり始めたその男の胸元に、私のナイフを突きつけた。
「降参…する?」
「…ハァッハァッ」
男は少し俯いて、笑った。
お前になんか負けるか、そう言って。
そしてナイフを突きつけていた私の手を掴み反撃を試みた。
だがこの大きい体…私にとっては、動きが鈍すぎた。
ナイフを振りかざす男の腕を掴み引き寄せ、喉元にナイフを当てる。
「あの女は…父さんの娘という噂だぞ。」
寸止めしたにも関わらず男は怯んで息を止めた。
つまらない…
あまり乗り気じゃなかったため、父さんの満足そうな顔も煩わしく思えた。
オォーーー!!
そして、訓練場が揺れるほどの賞賛の雄叫びがあがった。
「負けたよ…お前、イニシャルは?」
「…K」