第三楽章
お金が無い…
防具、買いすぎたかな。
鉄で出来た硬く重い鎧を装備しながら、魔王城を走り回る。
走るだけじゃ見つからなさそうだな…どうしよう。
何か策を立てようと立ち止まり考えてみると、脳天に突き抜けそうな嫌な音が城内に響いた。
「ビィイィィィイィ‼︎
ビィイィィイィイィィ‼︎」
「なっ…うるさっ⁉︎」
「侵入者発見!侵入者発見!直ちに排除せよ!」
「……チ………くそッ……!バレたのか……仕方ねぇっ!」
すぅっと息を吸うと、腹から声を出した。
「魔王はどこだ!!」
息を切らしながら叫んだ。
「俺は勇者だ!魔王の首を取りに来た!十年前の恨み、味わせてやるから今すぐ出てこい!」
俺の声がこだまして響く。
堪らず肩で息をした。
「っは、はぁ…はぁ……ナメやがって!!」
当たり前のように魔王は出てこない。
「お前が侵入者か?」
「…!?」
後ろには悪魔が仁王立ちしていた。
いつの間に…
「…なんだ、殺すつもりか?」
「今すぐはしないさ。まずは魔王様のとこに連れてって魔王様直々にその首を切り落としてやるよ。」
「下劣な……」
見る者すべてを凍らせるような冷血な目を向け、睨みつけた。
「まー…まずは気絶させないとな」
「やれるもんならやってみ………………っ!?」
踏ん張ろうと足を地面に着けたら、地面が抜けた。
いや、正確にいうと地面が無かった。
重力に逆らえぬままバランスを崩し奈落へ吸い込まれる。
「残念だったなぁ」
最後に聞いたのは悪魔の一言だった。
あれ?
俺
落ちてる?