第二楽章
暇だ。
実に暇だ。
魔王という役所は特に忙しい訳でもなく、ただただ暇を持て余すだけのようだ。
__この世界は面白くない。
………思い出でも振り返ってみるか
自分に征服心が宿ったのは、十年前だったか…
確かあの時、二人程殺めたと思う。
男性と女性だった気がする。
…あまり覚えていない。
あの二人には子供がいたようで、自分が放火した五分後くらいに家から走って出て行った。
男の子、だったか?
どうして征服心が芽生えたのかは分からないが、人の頂点に立ちたかったのは確かだ。
この世界は全て『人間』が支配していて、政治も仕事も人間が権力を持っていた。
人間は悪魔を差別し、闇雲に殺したり様々な拷問を行った。
次々と矢を刺し続けたり、
張り付けて身体のパーツを切り離したり、
口に水を入れ続け溺死させたり…
考えるだけで、虫唾が走る。
自分の事しか考えてない。
だから人間は嫌いなんだ。
ふぅと溜息をつき、窓の外を見る。
魔王城の城下町の眺めは、案外好きである。
空は鳥が飛んでいるし
買い物客で賑やかだし
人間はいないし
__…なんだかスッキリする
「魔王様っ!!」
「魔王様、大変です!」
眺めを楽しんでいたのに悪魔に邪魔をされ少々腹を立てたので、
低いトーンで
「何だ、騒々しいぞ」
と一喝した。
「は、はっ!!申し訳ありません!…そ、それより魔王様!大変です!」
「騒々しいと言ったろ……早く要件を言え」
「はい、この魔王城に……」
「勇者が潜入しました!」