1/4
序奏
『魔王』
自分を知らない者はいなかった。
虐殺を繰り返し、人間を踏みにじり、悪魔の頂点に登りつめた自分が魔王と呼ばれるようになったのはつい半年前。
全ての悪魔から尊敬の目を受け、「魔王様」と呼ばれるのはあながち悪い気はしない。
少々鬱陶しい時もあるが、そんな時は一言命令すればすぐ引き下がってくれる。
悪魔なんてただの駒だ。
自分は人間が大嫌いだった。
理不尽だし、何よりも私利私欲を優先する。
人間達の中で「仕事」というものがあるらしいのだが、悪魔によると
「客と呼ばれる人間に誠心誠意を尽くしもてなしをする」という行為を言うらしい。
しかしそれをする事によって、紙幣や硬貨を貰えるらしいのだ。
客の為に尽くすなんてただの上辺だけじゃないか。
最終的に自分の為じゃないか。
自分は人間のそういうところが大嫌いなんだ。
だから自分が
人間を好きになる時が来るなんて
思いもしなかった