(3)AR-18・セミオート
「これは…、どうすっかなぁ…。」
そう呟いてみるが返事はない。
ふとギアの方を見てみると、口をしっかり閉じている。
「これは毒煙だが…。大丈夫なのか?ギア」
そう尋ねると、ギアの口が動いたのが見えた。
推測だが、“大丈夫だ”という風に読めた。
“突破するぞ”そう口が動いた気がした。
そのとたん、ギアがいきなりこっちに向かって来る。
「え…、ってあ?」
混乱するクーにお構いなしである。
何をするかと思ったときにはギアの足が肩に乗っていた。
方に衝撃が走った。
そう思った瞬間、上で鈍い音が聞こえた。
そして太陽の光がクーを照らした。
「強引なやつだな…。」
人間だからしょうがないというのは置いとき、クーもそれに続き屋根へと上がる。
「さて…どうする?」
「決まっている。こいつの撃破。それだけだ。」
そう言って指名手配の紙を指さしそのままダッシュで走り出す。
慌ててそれにクーも続く。
踝のあたりの部分を押し、かかとから圧縮された空気を一気に噴出する。
「待てって。」
そう言い、ギアの肩をつかむ。
「…サイボーグか?」
突然の出来事にギアが尋ねる。
だがその顔には返答を求めているようには見えなかった。
「って今更!?さっき思いっきり毒煙吸ってたし…。」
そんなクーの突っ込みには無視をして、腕をふりほどきクーの背中に乗る。
「早く行け、ここから目的地の『ガガサゴ』まで数10kmある」
はぁ、と言うため息を漏らしクーはスピードを上げる。
「振り落とされんなよ!!」
それだけ言って、後はバランスを取るのにだけ集中した。
「ここが目的地か?」
『ガガサゴ』に数時間でついたモノの、ソコにはもう街というモノではなかった。
「荒れ果てすぎだろ。なぁ、どういうこと?ギア」
そう言ってギアにふったものの、俺に聞くなとでも言うように歩き出す。
するといきなり銃音がした。
発射されて0.2秒で反応する。
その弾丸の先はギアに向かっていることを確認すると、
そのことにギアも察知し、紙一重でよける。
「久しぶりに骨のある客が来たようだな…。」
どこからか不適な笑いと共に声が聞こえた。
が、その声の最後の方まで聞き取る前にもう一度銃音がした。
足下の砂が舞い上がる。
ゆっくりと砂が落ちてきて辺りを見回すと…。
「…囲まれているな。」
ギアの問いに返答はせず、クーはゆっくりと構える。
指先を銃に変換させて、いつでも弾丸が発射できるようにする。
そして念のためにと、右太股にナイフを用意する。
一方ギアの方は、特に何もせず、ゆっくりクーの方へ近づく。
「分散しろ…。」
ソレを聞き振り向くと、飛びゆくギアの後ろ姿だけ見えた。
ついでに飛びざまに2・3人ほど倒していくのも見えた。
一人残されたクーだが、特に気にすることもなく、
周りの敵に立ち向かう。
指銃で5人ほど倒したところで、相手の出方が変わる。
あいても銃がきかないと分かったようで、今度はナイフを取り出す。
間合いはある。とおもって油断していたら、
ナイフを投げてきた。
慌ててソレをよけるが微妙にかすっていたらしく、指の1本が切れる。
「青銅製ナイフ…。今時あるんだね〜こういうの。」
全く、最近のモノは…などと言いつつ手のひらを上に上げる。
そう言い指銃を撃つが敵の目の前ではじけ飛ぶ。
「何だよ?今のは?」
思わず口にするがもちろん返答はない。
ふと敵の後ろの方を見ると、遠くで敵が何かしているのが見えた。
すぐに眼を望遠モードに切り替える。
ソコには口を動かしている黒い衣装を着た人がいた。
「魔法使い…か。」
そう呟いた後、圧縮空気を出し空から魔法使いへと向かう。
「んじゃぁ、いつまでも雑魚の相手ばっかしてられないから。」
じゃあな、馬鹿共よ。っと言って右手を挙げて手を振る。
敵を見下すように言ったその言葉はしっかりと届いていたようだ。
その言葉に過剰反応したかのように『そいつ等』も空に浮く。
「何だよ、おい。」
訳の分からない状況に思わずスピードを上げる。
「まぁ、種は分かってんだけどね…。」
そう言った後はひたすら魔法使いだけを見る。
こんなこともあろうと、左足太股から銃を取り出す。
何処にソレがあったのかは謎である。
取り出したのはアーマーライトM-18。
「目には目を…とは違うけど、魔法には魔法ってね。」
体の電気を銃へと送る。
多少プラズマ現象が起こり銃が悲鳴を上げる。
元々普通の銃なのだから当然と言えば当然の現象。
「…ッ……オラァ!!」
ためていた電気を一気に噴出することで、電気の塊をとばす。
波状ではなく、塊としてとばすことで速さと威力を上げる。
一気にバリアを破壊する。
「貴様…。」
そんなことをいってる間に指弾をとばす。
ついでに後ろから追っていた奴らは地面へとたたきつけられたショックで気絶していた。
「まぁ、所詮こんなもんでしょ。」
さーてっと言ったものの特にすることがない。
「ギアを追うか…。」
風が砂を巻き上げ、荒れた建物に吹き付ける…。