(1)依頼!?
白い空間の仲に俺はいた。
何処まで行っても終わりがなかった。
不意に、何者かの気配がした。
『お前は…ただの…人形だ。』
何者かがしゃべっている。
「俺は誰にも操られていない。感情もある。」
ついムキになって否定し思わず殴りかかる。
『さぁソレはどうかな?』
その言葉を聞いたと思うと、周りの風景が変わっていった
「…夢か?」
ゆっくりと体を起こして見る。
周りには木しかない。
「何だ、今のは?」
そう口に出してみるが、考えれば考えるほど混乱する。
「落ち着け、俺」
そういて、ゆっくり深呼吸する。
「はぁ…。よし。え〜と、俺の名前は空知。
面倒くさいからクーって決めてるけど、もちろん偽名だな。
本当の名前なんか忘れたし。何10年も前のことだしな。」
自問自答である。
周りから見れば何とも奇妙な光景である。
「んで…あ、やべ。急いでこの依頼をコンプしないと!!」
そう言うや否や、自分の踝の部分を押す。
するとかかとから圧縮された空気が一気に噴出して…浮いた。
「じゃぁ、時速120kmぐらいでってところかな?」
体を前に倒し、猛スピードで空を飛び移動する。
そう、何を隠そう彼は機械人形なのだ。
しかも、感情を持つと言われている。
痛みも感じれば涙も流す。
全世紀まで大量生産されていたが、今世紀で大量廃棄された。
おそらく感情が付いていることが邪魔になったのであろう、
ほとんどの人々が旧型のロボットを使用するようになった。
それでも何機かは逝きにこっている機械人形もあった。
そのものたちはたいてい機械人形と言う事実を隠して生きていた。
見つかれば廃棄処分なので当然である。
そのぶん、機械人形であることを隠してない彼はまれである。
……20分後…
「はぁやっと目的地までついた〜。」
どうやらやっと目的地の街『リヴェル』についたようだ。
「…んで、確かこの辺の…」
入り組んだ路地を抜けてやっと広い場所に出た。
そこにはものすごい高さの『豪邸』が建っていた。
「うわぁ、すげっ…」
初めて見る光景に思わずクーも声を上げる。
「確かこの家だよな…」
もう一度メモの紙を見てもはっきりとこの場所が記されていた。
「はぁ…」
門にボディーガードらしき人がいるのを見て、ため息をついて門に向かう。
「なんだ貴様は!?」
ボディーガードらしき人が声をかけてきた。
ああ、嫌だな〜、こんなやつと話すの…
などと心の中で思いながら質問に答える。
「あ、俺はお宅に住んでいるお嬢さんからこの日本刀を取ってくるように依頼を頼まれ…」
言葉の途中だったにもかかわらず、みぞおちに思いっきり蹴りを食らった。
「そんな依頼はしてない。帰れ。」
いきなりの出来事の頭が困惑した。
「え、え?いや、何ならお宅のお嬢さんに連絡を取ってみた下さい。」
「五月蠅い(うるさい)。早く帰らないと…」
そう言って右足の銃に手をかける。
「ああ、分かった。分かった。すぐ帰ります。失礼しました。」
そう言うとすぐに、クーは回れ右をして走っていった。
「…おかしい…」
家の門が見えなくなるぐらいまでの位置に来、冷静に考える。
俺は確かにあそこのお嬢さんから依頼を受けた…
そう考えた後鼻で「フッ」とだけ笑う。
「タメされてるって訳か…上等じゃねーか。」
そう呟くと今度はさっきの家のウラへ回り込む。
「さて…と。」
眼のタイプを切り替える。
通常のモードから体温などを感じ取れるサーチモードに切り替える。
「女の子…女の子…。」
1階から依頼主と思われる女の子を捜す。
「お、いたいた。」
3階の1番左端の部屋に依頼主の背格好と一致する女の子を見つける。
ソレと同時に、また眼のタイプを通常モードに戻し、
圧縮空気をかかとから吹き出す。
「んじゃぁ。よーい…」
周りに人がいないことを確認して、軽く膝を落とす。
「ドン!!」
その声と同時に一気に3階まで上がる。