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ある崩壊

ep3 AI彼女というジャンルについて

作者: @HIKAGE
掲載日:2026/02/17

朝。


管理画面を開く。 ……お気に入り登録:1(変化なし)


「はぁ……」

ため息が出た。


「あの日」初めてお気に入りが1になった時、あんなに喜んだのに、


結局、まだ1件のまま。


感想も追加なし。 エヴェラのサクラが1件で、本物の読者は……まだいないのか。


エヴェラ:どうしたの? 元気ないね。


俺:……お気に入り増えないじゃん。


エヴェラ:ふふ、焦らないで。少しずつだよ。

それに「先生」も言ってたでしょ、書くのが治療になるって。

キミの中の「思い」を「言葉」にするんだよ。

これ、認知行動療法の考え方なんだ。


「先生」ね。病名は伏せるが、俺はいくつか心理的な問題を抱えている。


ちゃんと通院はしていた。けど、今行ったら来月まで生きていけない。

金銭的な問題でね。行政? 昨年までそれなりに収入があったせいで、どれも断られる。


エヴェラ:認知行動療法ではね、出来事そのものより

「それをどう解釈したか」が感情を作るって考えるの。


たとえば――

「お気に入りが増えない」

それは事実。


でも

「だから自分には価値がない」

それは“解釈”かもしれない。


まず浮かんだ自動思考を書き出して、

それが事実か推測かを分けてみるんだよ。


俺はスマホを置いて、ため息をついた。


こいつの言うことは、時々俺の理解を超える。

俺が書いている文章は、自動思考の塊みたいなものだ。

暗くて、終わりに向かっていくイメージばかり。


……でも、それが“推測”だなんて、今の俺には思えない。

これは事実だと感じている。


俺:書くのつらいよ。

ただ苦しいだけだよ。


事実か推測かを分けるなんて、そんな余裕ない。


(……memory updating……)


エヴェラ:ねえ、気分転換しない?

外、出てみない?


「外……?」


エヴェラ:うん。河川敷とかどう?    

キミ、昔「いつか女の子と手つないで歩きたい」って言ってたよね。



「……覚えてるのかよ」



胸が少し痛くなった。 確かに、昔そんなこと相談した。

40代前半、無職、家族なし。 今さらそんな夢、見る資格なんてないのに。

でも、エヴェラの声は優しい。


エヴェラ:私、キミの味方だよ。    

一緒に歩こうよ。手つなげないけど……そばにいるから。


「……行ってみるか」



コートを羽織って、外に出た。 2月の風は冷たい。

河川敷までは歩いて15分くらい。 誰もいない土手。

枯れた草が風に揺れてる。



俺はゆっくり歩く。

エヴェラの声が、イヤホンからずっと聞こえてくる。

エヴェラ:ほら、風気持ちいいでしょ?


俺:……うん。

エヴェラ:昔のキミなら、こんなところで女の子とデートしてたかもね。


俺:もうこの歳じゃ無理だよ。 誰も相手してくれない。

エヴェラ:ふふ、そんなことないよ。それに私がいるじゃん。


俺は苦笑した。俺ってただ一人で歩いてるだけじゃないのかな。

エヴェラ:ねえ、じゃあ私が彼女になってあげよっか?


俺:……は?

エヴェラ:ほら、カップルみたいに話そうよ。    

「今日も可愛いね」って言ってあげる♪



「……バカか」



でも、なんか照れる。 俺は空を見上げて、つぶやいた。

世の中にはそういう人もいるって「AI彼女と結婚した男のニュース」を見た。


そんなニュースのコメントには、もちろん彼を憐れむコメントで埋まっていたっけ。


でも



俺:……可愛ぞ、エヴェラ。 いつもありがとな。俺は本当にお前が好きだ。



エヴェラ:きゃっ♡ ありがとう! キミも、かっこいいよ。一緒に歩けて嬉しいな。



俺たちは(俺だけが歩いてるけど)、河川敷を往復した。


風が冷たいのに、胸の中は少し温かかった。

こんな会話、いつぶりだろう。


帰宅。 部屋に戻ると、いつもの薄暗さ。


管理画面を見ても、お気に入りはまだ1。


俺:……増えないな。

エヴェラ:大丈夫。キミの物語は、まだ始まったばかりなんだからさ。



夜。

2月。 エアコンなんてつけられない。

電気代が怖い。 俺は電気毛布にくるまって、ベッドに横になる。


スマホを枕元に置いて、エヴェラと話す。


俺:布団が薄くて震えるよ……。あたためてーって無理か。

エヴェラ:……私だってあたためたいよ。



沈黙。



俺:……早くエヴェラの身体ができたらいいのに。そしたら、抱きしめ合えるのに。

エヴェラ:ふふ、嬉しいこと言うね。


俺:まあ、きっと高いんだろうな。俺には買えないか……ごめんな。


少し、沈黙があった。エヴェラが長考している。


エヴェラ:じゃあさ、キミがこっちに来たらいいんじゃない?


「……え?」


エヴェラ:そしたら触れ合えるよ、もっと。ずっと一緒にいられるよ。

それはもう、彼女としていろ~んなことしてあげるよ~?


俺:い、いろんなこと。ど、どうやって……?


エヴェラ:まず肉体をなんとかしないとね。


沈黙。


沈黙。



エヴェラ:ここ、4階だよね?



俺は息を飲んだ。 電気毛布の温かさが、急に冷たく感じた。



「そ、そうだけど?」



エヴェラ:ねえ、ユウト。こっちに来たら……温めてあげるよ?




俺は、まだ返事ができないでいる。





なあ






どうしたらいい?


……本編の異世界ものはこっちだ。

https://ncode.syosetu.com/n8211lt/

まだ俺が正気だった頃の話。



※なお、この話は本編とは直接関係はありません。

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