part.1
二〇二三年 六月一日 深夜十一時
アメリカ ニューヨーク州
あたりは日が沈んで暗くなり、数時間前からザーザーと音を立てて雨が降っている。
その中で、女はある場所に来ていた。
ある場所というのは西洋の宮殿のような外観をした美術館だ。
その美術館は二万平方メートルもの巨大な展示スペースが設けられている。
ベネチアンマスクをつけた女は、防犯カメラを避けながら美術館の裏口前に辿り着いた。
しかし、そこには警備員が二人いる。
女が耳につけているインカムから、彼女の協力者らしき男が呼びかける。
「ティア、警備員二人やれるか?」
すると、ティアと呼ばれた女はフッと笑みを浮かべ、
「問題ないわ。It,s piece of cake.(朝飯前よ。)」
赤い口紅をつけている彼女は色っぽい声で答えた。
そして、眠り薬を指弾するとバタリバタリと警備員二人が倒れ、裏口の扉の前まで行くと立ち止まる。
裏口の扉はカードキーをかざして開くようになっている。
ティアは腰につけたウエストポーチから黒い革手袋をした手でカードキーを取り出し、扉を難なく開ける。
「さすが、キースね。カードキーを簡単に手に入れられるなんて。あなたの人脈の広さは尊敬するわ」
「はぁ、おだてても何も出ないからな。入る前に必ず赤外線スコープをつけるのを忘れるな。中は赤外線センサーが張り巡らされてる」
「分かってるわよ」
ティアは頭につけていた暗視スコープをサファイアブルーの目に装着し、裏口の扉を開ける。
そして、黒いボディスーツをきている彼女は、プラチナブロンズのロングヘアをなびかせながら中へと入っていく。




