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【ドラゴンライダー  ~飛べない竜と俺は必ず再起する】  作者: 霧笛の火魔人


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10/22

【第10話 初任務】

翌日の朝は、前日よりも静かに始まった。


走竜厩舎の空気は、夜の湿り気を残しつつも澄んでいる。

土の匂い、藁の乾いた感触、竜たちの低い呼吸音。




今日の訓練内容は、少し違っていた。


長距離走

それは、ゆっくりした歩調で、ひたすら距離を稼ぐ訓練だ。


野生の走竜は、本来そんな動作をしない。

獲物を狩る時は短距離の全力疾走。

歩くにしても、せいぜい一キロも進めば休む。


だが、軍の走竜は違う。

一気に五十キロ近く移動することもある。

それに耐える脚と肺を、意識的に作らなければならない。



班長が声をかけた


「カイル、お前らは別メニューだ」


呼ばれて、カイルは顔を上げた。


「ペースが合わん。先に実践訓練をやれ」


その言葉に、胸の奥がわずかに弾む。



実践訓練――


市街地や山岳地を想定した、障害物の間を走り抜けるコース走行だ。


--------------------------------------




ダダダダダダダタ。


ズザザァ。



マックスはポイントを曲がった出口で地面を蹴た。


「行くぞ」


声を掛けると、マックスは低く唸る。


直線では前傾姿勢になり、低く身体を沈めて突っ走る。




次のポイントに近づくと、動きが変わった。


外側の後足を大きく伸ばし、内側の後足を折りたたむ。

身体は内側へと傾斜する。


それに合わせて、カイルも自然に身体を倒していた。



グッ


曲がる瞬間、縦方向に荷重がかかる。


マックスの背中が沈み、次の瞬間、押し返されるような感覚。


だが、不快ではない。


飛竜は、着地のたびに縦方向の衝撃を受ける。

それに比べれば、この荷重はむしろ心地よかった。


速度が上がる。


急な方向変換では、路面が一瞬横滑りする。


ザッ、


土が散る。



それでも、マックスは踏み直す。


「……だいぶ、お前の走らせ方が分かってきたよ」


独り言のように言うと、マックスは鼻を鳴らした。



--------------------------------------


その日の午後、カイルは町はずれの関所に呼び出された。


石造りの関所の前に、騎馬隊が整列している。



騎馬隊の隊長が歩み寄ってきた。


「カイル殿、ご足労いただきありがとうございます」


「おはようございます。盗賊団討伐に参加するよう指示を受けました」


「討伐そのものは我々が行います」



隊長は地図を指し示す。


「盗賊団が走竜を持っている可能性がありましてな。念のための同行とご理解ください」


カイルは頷いた。


「向こうに飛竜が二頭いましたが……ご存じと思いますが、マックスは飛びません」


「了解しています。騎馬隊の後を歩いてください」



関所を出発し、いくつもの農村を横切る。

昼には、騎馬隊十名、飛竜の騎士二名、そしてカイルが並んで軽食を取った。


談笑しながらの時間は、どこか遠足のようでもあった。


その後、森へ入り、野営。


翌朝――


装備を整えた十三名が集まり、打ち合わせが行われた。




「諜報員の報告では、盗賊団は十名」


隊長の声は低い。


「先日のダレル伯の城襲撃で、警護剣士三名が死亡している」



場の空気が引き締まる。


「この後、騎馬隊でねぐらを急襲する。統領以外は生死を問わない」



「飛竜の方々は上空で逃亡者の有無を確認願う」



そして、カイルを見た。


「万が一、奴らが走竜を持っていた場合は、カイル殿が対峙して足を止めてください」


「制圧が終わり次第、打ち取ります」



打ち合わせを終え、カイルはマックスに跨った。


「さぁ、初任務だ」





森の奥。

巨大な峡谷の入口に、見張りが立っている。


騎兵が長弓を引き絞り、一射。


見張りは音もなく倒れた。


「おぉ、さすがだな」


思わず声が漏れる。




「いくぞ!」


騎馬隊が一斉に峡谷へ突入した。



カイルは入口で待機する。


上空では、飛竜二頭が音もなく旋回していた。




奥から、叫び声と剣戟の音。


やがて――


峡谷の奥から、盗賊たちが走って逃げてくる。


二十名近い。


「……なんか、多すぎないか?」


ぼやきながら、マックスを立たせる。




「わぁ、竜がいるぞ!」



盗賊の悲鳴。


足を止めた盗賊の後ろから、三頭の馬が駆けてきた。


「ち、ちくしょう!」盗賊は必死だった。



カイルは道を塞ぐように立ちはだかる。


さらに後ろから、味方の騎馬が三頭。


「カイル殿、かたじけない!」



だが、その隙を突いて、一頭が森へ逃げた。


「しまった、あれが統領だ!」



隊長が全力で追う。


マックスは一頭の馬を後足で押さえ込んでいたが、カイルは叫んだ。


「ここを離れても大丈夫か!?」



返事の代わりに、騎馬兵が手を上げた。



マックスは向きを変える。





森の曲がりくねった道。


盗賊と隊長の距離は、なかなか縮まらない。

「くそ、まずいな」


バカラ、バカラ、バカラ。


枝が流れるように後ろへ飛んでいく。




「ん?」


隊長が違和感に気づいた瞬間――


追い抜かれた。



「うおっ!」


ダダダダダダ。


土が舞い、隊長は片手で目を覆う。


それは、疾走するマックスだった。




「よし、あれが統領だ、追い抜いて止めるぞ!」


次の曲がった道の外側は、土手になっている。


カイルとマックスは、道を曲がらず、壁面を走った。


「この方が速く走れるんだな」



直線を駆け抜ける勢いで、盗賊の馬を追い越す。



カイルは手綱を斜め上に一気に引き上げる。


マックスは身体を倒し、横を向いたまま急制動。



「ぎゃーーーーーーなんだこいつは!」


盗賊の馬は身を捩り、転倒。

投げ出された盗賊は地面に叩きつけられ、動かなくなった。



隊長が追いついてきた。


「大金星ですぞ、カイル殿!」



フンッ、とマックスが鼻を鳴らす。



「それにしても……飛竜とは、こんなにも速く走れるのですか」


「いえ、普通の飛竜は走らずに飛びます。マックスが特殊個体なんですよ」


「いや、本当に凄まじい」


盗賊討伐は、こうして無事に完了した。


--------------------------------------


厩舎に戻ると、ミレイとアインが待っていた。


「初任務成功、おつかれさーん」


アインが笑う。


「騎馬隊の隊長さんが、マックスの脚力を絶賛してくれたよ」


カイルが手を上げ、アインが叩いた。


「よかったな」


ミレイは一言だけ言った。


「ほら、使える」


その言葉に、カイルは小さく笑った。






【あとがき】


この話で出てくる「荷重」ですが、表現に迷った末にこの様になりました。

「重力加速度」や「衝撃の大きさ」を指すのですが、分かりやすく書くと、ものすごく説明臭くなるんですよねwwww


次の話しは、親友のアインが活躍しカイルの劣等感が再燃します

第11話 空の英雄たち


アインの同僚をツバイにするつもりだけど、悩むなぁ


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