異世界系なんて書かないでさ
彼女は人気作家になりたかった。
「異世界系が流行ってる、書くしかねえ!」
「自分の好きなものを書きなよ、流行に乗らないで」
僕は呆れて口にする。
病室。
中3の僕と、入院している幼なじみの少女しかいない、個室。
彼女は水色のパジャマを着ている。僕は、学校帰りで制服。
「ちっちっち、流行に乗らないと人気作家にはなれないよー? わかってないねー」
「てか、何で人気作家になりたいの?」
「ちやほやされたいから」
当たり前のように言ってくる。
15歳にしてライトノベル作家になりたいらしい。しかも人気作家に。
その理由がちやほやされたいからってのは、どうかと思うけど。
―しかし、君は死んで。
『何がやりたかったの?』
式中、眠る君に、僕は言いたくて仕方なかった。
15歳で死んで、作家になれず。残ったものは、君の書いたノートのみ。
でも、それは異世界ものだけで、君の想いは全く載っていなくて。
家族に泣かれて、同級生たちにも泣かれ、君は満足だったかもしれない。
僕は、泣けなかった。胸にポッカリと穴が空いたようで、なんか、呆然、というか。
「毎日見舞いに来てくれて、喜んでたよ」
彼女の母親は笑顔で言う。
目は赤い。
「これ、あげる。大切にしてね」
と言われ、あの子の書いたノートをくれた。
下らない、本当に下らない作品たちが載った、それ。
「本当に下らないな」
と言い、閉じる。
高1になった今でも、毎日、それを読む。
だけど、僕は君の想いを知りたかった。
だから異世界系は書くなって言ったのに。
声だって忘れかけてるのにさ。
ありがとうございました。




