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異世界系なんて書かないでさ

作者: 薫納豆
掲載日:2026/01/23

彼女は人気作家になりたかった。

「異世界系が流行ってる、書くしかねえ!」

「自分の好きなものを書きなよ、流行に乗らないで」

僕は呆れて口にする。


病室。

中3の僕と、入院している幼なじみの少女しかいない、個室。

彼女は水色のパジャマを着ている。僕は、学校帰りで制服。


「ちっちっち、流行に乗らないと人気作家にはなれないよー? わかってないねー」

「てか、何で人気作家になりたいの?」

「ちやほやされたいから」

当たり前のように言ってくる。


15歳にしてライトノベル作家になりたいらしい。しかも人気作家に。

その理由がちやほやされたいからってのは、どうかと思うけど。




―しかし、君は死んで。


『何がやりたかったの?』

式中、眠る君に、僕は言いたくて仕方なかった。

15歳で死んで、作家になれず。残ったものは、君の書いたノートのみ。

でも、それは異世界ものだけで、君の想いは全く載っていなくて。


家族に泣かれて、同級生たちにも泣かれ、君は満足だったかもしれない。

僕は、泣けなかった。胸にポッカリと穴が空いたようで、なんか、呆然、というか。


「毎日見舞いに来てくれて、喜んでたよ」

彼女の母親は笑顔で言う。

目は赤い。

「これ、あげる。大切にしてね」

と言われ、あの子の書いたノートをくれた。

下らない、本当に下らない作品たちが載った、それ。




「本当に下らないな」

と言い、閉じる。


高1になった今でも、毎日、それを読む。

だけど、僕は君の想いを知りたかった。


だから異世界系は書くなって言ったのに。

声だって忘れかけてるのにさ。

ありがとうございました。

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