41 またしても、かよ
ドッペルに集中していた関心が、今度は一気にドクター三角に向かった。
しかし、手錠の電撃が止まると、みんなの視線をはね返すように、ドクター三角はギョロリと目を剥いた。
『ぼくがペラペラしゃべると思ったら、大間違いだぞ。黙秘する権利はあるからな』
確かにその宣言に対して、手錠は反応しなかった。人権に対する配慮だろう。
だが、ドッペルは笑って頷いた。
『もちろん、権利はあるさ。でも、だいたいの情報は掴んでるよ……』
……ドクター三角が四処博士の教え子だっていうことはみんな知ってるかな?
ああ、中野くんたちは知ってるよね。
でも、ドクター三角の教え子が誰かは知らないだろう?
え?
ああ、シャロンちゃんは博多産業大学の卒業生名簿を見たのか。
そう、村上忠次郎、つまり、宇宙海賊ロビンソン一味のボス、パパ・ロビンソンさ。
この博多産業大学というのは、歓楽街のド真ん中にある変な大学だけど、卒業生には有名なTV司会者なんかもいて、面白い大学だよ。
ああ、ごめん、話を戻そう。
で、ドクター三角がパパ・ロビンソンの一味に加わったのが、約十年前。当時、非常勤講師に過ぎなかったドクター三角が、准教授、教授、名誉教授と数年で昇進したのは、大学側に莫大な寄付をしたからだと噂されてる。そのお金がどこから出たかは言うまでもないだろう。
さあ、そして三年前の惑星ゴエイジャーの発見だ。
天体の命名権は第一発見者に与えられるのが通例だから、実は、ゴエイジャーという名前を付けたのもドクター三角なんだよ。当初はガーディアン、つまり、守護者と付けたかったらしいけど、同じ名前の天体があったので、護衛という日本語とゴレンジャーの語呂合わせにしたんだね。たぶんだけど、海賊ギルドの防衛拠点にしようという思惑だったんだろう。
ところがその直後、パパ・ロビンソンを始め、ロビンソン一味のほとんどがスターポールに逮捕されてしまった。そう、中野くんたちの活躍でね。
たまたまその場にいなかったため逮捕を免れたドクター三角は、いわば隠れ蓑として大学に残り、大学付属の天文台でゴエイジャーの観測を続けていた。
そして、あることに気づいたんだと思う。
惑星ゴエイジャーが急速に大きくなってることにね。
ただし、原因を調べるには、観測隊を送り込まなきゃならない。
その資金確保のため海賊活動に専念することにしたらしく、その頃大学を辞めている。
で、ドラードの黄金に目を付け、シャロンちゃんを誘拐したりした訳だけど、また中野くんたちの活躍で、彼もスターポールに捕まった。
おそらくその時、牢屋の中で出会った海賊ギルドの仲間にゴエイジャーのことを話したんだと思う。ドラードで元素転換機の話を聞いて、ゴエイジャーの急激な成長と結び付けたんだね。つまり、それに類するものがゴエイジャーの中にあるはずだ、と。まあ、半ば当たっていた訳だ。
で、牢屋にいるドクター三角の代わりに海賊ギルドが白羽の矢を立てたのが、四処博士だ。
当時すでに印税収入を使い果たしていた四処博士は、この話に飛びついた。
という辺りまでは、得られた情報を基に推測できたけど、実際の越冬隊の活動やそれによってもたらされる危険性、そして、当然もぐり込んでいるだろう海賊ギルドのスパイを調べるには、基地の内部に入ってみるしかない、と考えた。
そこでおれは、メンバーが基地から外に出るたびにそのメンバーになりすまし、基地の中に入り込んだんだ。当然、四処博士になることが多かったよ。彼なら、他のメンバーから急に話しかけられる危険も少なかったしね。
基地内でそれとなく無駄話に耳を傾けていると、クリキントン帝国のことが度々話題になり、攻撃されたら困ると心配していた。だから、おれが実際に行って探ってみることにし、一番怪しまれないだろうクルリンパ氏の姿で訪問した。まあ、当面武力行使はなさそうだったから、早々に滞在を切り上げて戻って来たよ。
が、円盤を着陸させる際、砕氷して内部海に潜り込むところを、ボーリング採掘中の四処博士に見られてしまった。
それを「御神渡り」だと表現したらしい。なかなかの詩人だね。
それから彼は、おれの円盤を探すために、あちらこちらにボーリングで穴を開けまくった。
おれとしては、あるかどうかわからないにしても、母船の言っていた生命の萌芽を守らなきゃならない。
直接話した方が早いだろうと、本人の姿で近づいたんだけど、イドの怪物だと思われ、逃げられてしまった。
それでもボーリンを止めるため本人に会おうと、ちょうど外へ出たクルリンパ氏の姿で基地の中にコッソリ侵入してみると、四処博士が通信室に立て籠もっていると騒ぎになってた。
博多産業大学の記録を調べた時、彼が学生に「日本勃然」の印税を自慢していたという記録があったから、超次元通信網を使って出版社のデータベースに侵入し、情報を入手した。
その後、みんなが通信室の前から居なくなるのを待ち、四処博士の姿で中に入った。
ちょうど通信中だった彼は、驚いて振り返った。
「やっぱりイドの怪物か!」
「そうじゃない。話せばわかる」
が、話す間もなく、近くにあった氷柱で心臓を一突きだ。
ちなみに、アバターは可塑性人工細胞だから、これぐらいで死にはしないんだけど、ショックで一時的に機能停止している間に、部屋の暖房を切って逃げられた……。
『……話が長くなってすまない。これが密室殺人事件の真相だよ』
おれは、ドッペルの話ですっかり納得したのだが、司会席のシャロンがバンとテーブルを叩いた。
『ちっとも事件は解決していないわ! あなたが四処博士のニセモノだとしたら、本物はどこへ行ったのよ?』
すると、またしても会議室の入口から声がした。
『わしならここにおる。海賊ギルドの仲間もな』
今度こそ、本当のご本人登場だよ~。
ってか、コブラ男も、カエル男も、その他大勢の武装した海賊もいるよ~。しかも、プライデーZも敵に混じってるよ~。また、逆転してるよ~。
作者註
パパ・ロビンソンこと村上忠次郎につきましては、この宇宙旅行シリーズの第一作『福引で宇宙旅行に~』のエピソード24『終わり良ければ総て良し、って本当かよ』をご参照ください。




