表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/43

34 ここに来て密室事件って、ありかよ

 人工冬眠コールドスリープ中のメンバーも全員起こそうということになり、見張り役としてコブラ男とカエル男だけ残し、おれたちは六人と一ロボットで通信室へ向かった。

 おれの前を歩きながら、マーロン大佐がストローハット教授に何か提案している。

『……つまり、われの光線銃ブラスターさえ使わせてくれれば、パスワードなどと面倒なことを言わずとも、扉を開けられると言っているのだ』

 しかし、ストローハット教授は激しく首を振った。

『とんでもないことです! 研究施設内で武器を使うことは禁じられています!』

『そんなキレイごとを言っている場合か! このままでは全員……』

 ドンというにぶい音がして、シャロンの正拳せいけんが大佐の背中に当たっていた。

『あ、ごめんなさい。ムシがとまってるのかと思ったら、錯覚だったみたい。さあ、急ぎましょう』

 おれの時といい、シャロンはおれたちも燃料がないことをできるだけせて置きたいのだろう。

 まあ、ストローハット教授のさっきの様子をみれば、真相がわかった時にはパニックになるのは目に見えているが、だったら、むしろ早めに言った方がいいんじゃないか。

 いや、よしとこう。シャロンには何か考えがあるのだろう。

 それよりも、おれは後ろから来ている二人、いや、一人と一ロボットの会話の方が気になっていた。

『まあ、そうなの?』

『そうなんです。何度も倫理アシモフ回路を反転されながらも、わたしは常に正義の味方みかたとして悪者わるものをやっつけて来たのですよ』

 どうしてプライデーZのインチキ武勇伝ぶゆうでんにアリエラさんが興味を持つのかわからないが、おかげでおれが話し掛けるタイミングがない。

 と、おれの横を歩いているドクター三角が、「ふん、ぼくは悪者あつかいなのか、あ、いや、今のは陰口かげぐちじゃない、感想だ」と日本語でつぶやいている。

 面倒なのか、三角形の藁帽子わらぼうしは脱ぎ、パーカーのフードのように背中側に倒したままだ。しかし、その下は雪ん子ふうの子供の着物だから、ちょっとカッコ悪い。

 あ、いや、それを言うなら、雪男イエティスーツをて、イエティマスクをかぶっているおれは、他人ひとからどう見えているんだ?

 救助隊で唯一スーツを着用していないマーロン大佐にいたっては、見た目は大型の雪男であるビッグフットみたいだ。

 一方、シャロンの雪女スーツはオシャレだし、プライデーZのサンタスーツも違和感いわかんがない。

 つまり、アリエラさんがシャロンの次に話しかけやすい相手は、サンタクロース姿のプライデーZということになる。

 おれは改めて、妖怪好ようかいずきの荒川氏のセンスをうらんだ。

 などと思っているうちに、通信室が見えて来た。

 人が近づいたことを感知したらしく、『ドアロックを解除する場合は、不朽ふきゅうの名作「日本勃然ぼつぜん」の印税総額を述べよ』という人工音声が聞こえて来た。

 シャロンが振り返り、『さあ、ドクター三角、出番よ』とうながすと、例によって分厚ぶあつくちびるゆがめて笑いながら、「日本語じゃ、ダメなんだろうな」と藁帽子を被ろうとした。

 ところが、人工音声が「日本語、わかります」と返事をした。

 ドクター三角は鼻で笑い、「ふふん、四処よんどころ博士らしい日本ファーストだな」とひとちたあと、改めて扉に向かって答えた。

「博多産業大学の学生だった頃、耳にタコができるほど聞かされたよ。当時の金額で一億二千三百五十二万六千二百円だ。開けゴマ!」

 プシュッと音がして扉が中央から左右にひらき、白いきりのようなものが流れ出て来た。

 シャロンが『みんな下がって! プライデーZ、分析して!』と叫びつつ、自分の電磁シールドヘルメットのスイッチを入れた。

 プライデーZが小走こばしりで白い霧に近づいたが、すぐに振り返り『心配いりませんよ』と笑った。

『普通の霧です。主成分は水で、空気中の水蒸気が凝結ぎょうけつしたものです。室内の気温が極端に低いため発生したもよう。なお、室温はおよそ摂氏せっしマイナス五十度。みなさん、防寒スーツ、防寒マスク等を着用してください』

 普通の白衣しかていないストローハット教授とアリエラさんにはその場に残ってもらい、おれたち四人と一ロボットで室内に入った。

『な、なんじゃ、こりゃ』

 おれが思わず声を上げたのは、足のみ場もないほど、ゆかにゴロゴロと氷のかたまりが転がっていたからだ。

『水がこおった普通の氷ですよ』とプライデーZ。

『わかってるよ!』

 シャロンがかがんで一個ひろい上げた。

『四処博士がボーリング採掘さいくつで集めたサンプルかしら?』

 マーロン大佐も『違いあるまい』とうなずいている。

 と、その時。

「あああーっ、四処博士! なんということだ!」

 日本語で叫んだのは、もちろんドクター三角だ。

 おれたちも急いで声がした方へ向かうと、通信機の操作盤コンソールの前に人が倒れており、その前でドクター三角が頭をかかえて突っ立っている。

 倒れているのは高齢の男性で、ちょうど心臓のあたりに太い氷柱つららが突き刺さっている。

 と、シャロンが大声で叫んだ。

『誰もさわっちゃダメよ! 現場の状況を保持ほじするのが、事件解決の第一歩だから!』

『いやいやいや、事件解決って、推理小説の探偵たんていじゃあるまいし』

 おれの反論はガン無視し、シャロンは腰に手を当てて宣言した。

『これは完全な密室殺人よ。必ずあたしが解決してみせるわ。おじいさま、おばあさまの名にけて!』

 おかしいだろ~。黒田さん夫妻は関係ねえし。ってか、どうなるんだ、これ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「じっちゃんの名にかけて!」って、シャロンちゃん、まるで金田一君みたい(笑) でも事件の線と、つららがタマタマ落ちて来た事故の線、それにまだ死亡が確認できていないのでフェイクの線も残っていますよね。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ