表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/46

30 ポツンと伏魔殿って、怖すぎるよ

 チャッピーに乗ったマーロン大佐の到着を待ち、全員で建物に向かった。

 実際に近づいてみると、もちろんぼうテレビ局よりは建物全体は小さく、それに比して銀色の球体はバカでかい。

 いみじくもプライデーZが伏魔殿ふくまでんと言ったように、何か不気味ぶきみ雰囲気ふんいきただよっている。

《まったく明かりが見えないわね》

 シャロンに言われて気が付いた。

 球体の宇宙船ビーグル二世号はもちろん、ビルの窓すべてが真っ暗である。それを地上からライトで照らしているのだから、何のことはない、よく子供が懐中電灯かいちゅうでんとうあごの下から当て、「お化けだぞう~」とやるのと一緒じゃないか。

 おれは少しこわさが薄らぎ、《プライデーZ、スピーカー音声で呼び掛けてみてくれ》と頼んだ。

《待って》

《待てよ》

《待つのだ》

 残る三人から同時にめられたが、おれの命令以外はガン無視して、プライデーZは大声で呼び掛けた。

「さあ、良い子のみんな、お待ちかねのサンタさんが来たよ~! 良い子にはプレゼントを、悪い子にはお仕置しおきを~! 悪い子はいねが~!」

《いやいやいや、それじゃ、なまはげだろ、ってか日本語かよ。みんなが止めたの聞こえなかったのか?》

《え? わたしに言われたんですか?》

《まあ、いいよ。どちらにしろ、もう遅いし。それで、みんなが止めた理由わけは?》

 シャロンが《今さらだけど、どんな危険があるかわかんないでしょ》と言うと、マーロン大佐も《われも同意見だ》とうなずいた。

 が、ドクター三角だけは《ぼくはそういう意味じゃない》と首を振った。

《危険かどうかは知らないが、四処よんどころ博士は気難きむずかしい人だから、呼び掛けるならぼくの方がいいと思ったのさ。まあ、いずれにせよ反応がないから、入ってみようじゃないか》

 基地の中へ入るしかないという点では全員の意見が一致したので、入口の扉の前に行った。

 当然施錠されていたが、人が近づいたのを検知したらしく、人工音声の標準宇宙語で『円周率の小数点以下第百位の数字を答えよ』と問うて来た。もちろん、自動翻訳機がなければ、とてもじゃないが、問いの内容自体がわからなかったろう。

 シャロンが外部スピーカーをオンにして『九よ』と即答すると、『どうぞお入りください』という声と共に扉が開いた。

《へえ。数学は不得意じゃなかったっけ?》

 相互通信機インカムでおれが聞くと《たまたま百位まで丸暗記してるだけ。サンテンイチヨンイチゴって、全部聞きたい?》と言われたので《いや、遠慮しとく。早く入ろう》と答えた。

(参考:3.1415926535897932384626433832795028841971693993751058209749445923078164062862089986280348253421170679)

 プライデーZが照明を消すと、扉の内部にほんのりと明かりがともっているのがわかった。

 扉を入ってすぐの風除室ふうじょしつに当たる部分を通り過ぎ、全員が次の二重ガラス扉の内側に入ったところで、シューッという音と共に空気が満たされた。

《プライデーZ、分析してちょうだい》

 今おれが言おうと思ったのにぃ、まあ、いいか。

《ホッホー、あ、いえ、もう普通にしゃべりますね。窒素七十八パーセント、酸素二十一パーセント、その他一パーセントの一気圧の気体、つまり地球の空気とほぼ同じです。室温は摂氏せっし十三度、湿度三十パーセントで、やや寒く乾燥していますが、まあ、冬と思えばたいしたことはありません。ちなみに、有害な微生物等は検知されませんでした》

《ってことは、呼吸しても大丈夫ってことね。じゃあ、やってみるわ》

《おいっ、ムチャすんなよ!》

 おれがめるもなく、シャロンは襟元えりもとのボタンを押した。

 見た目は変わらないが、電磁シールドヘルメットは解除されたらしく、「寒っ!」というシャロンの肉声が聞こえた。

「でも、まあ、呼吸はできるわ。変なニオイもしなし。ただ、すごく乾燥してるみたいだから、美容には悪いかも」

《いやいやいや。美容とかの問題じゃなくてさ……》

 ところが、おれ以外のメンバーは次々に空気を吸い、「おお、われにはちょうど良い」だの「ぼくは北国の生まれだから、むしろあたたかいよ」だのと言っている。

 チャッピーですら前面のカバーを開き、顔を出した。

 ああ、もう。おれもイエティマスクをはずすぞ。おれはあごの下側から外し、いだマスクをパーカーのフードのように背中側に倒した。

「ヘェ、ヘェ、ヘェックション! う~、さぶっ」

 サンタの白髭しろひげマスクを外したプライデーZが、外人のように手を広げて肩をすくめた。

「おお、人間って不思議ですねえ。マイナス八十七度に比べれば百度も高いのに、やっぱり寒いんですねえ。ロボットに生まれて良かったあ」

「何だよ、おまえだって防寒スーツ着てたくせに。ってか、そんな場合じゃないな。圧力調整が終わったから、もう内側のガラス扉が開いても良さそうなもんだけど……」

 向う側の照明がいていないため、ガラス扉は鏡のようにおれたちをうつすだけで、中の様子をうかがい知ることができない。

 と、入口で聞いたのと同じ人工音声が『もなく内扉うちとびらひらきますので、一歩下がってお持ちください。引き続き、室内の非常灯を点灯いたします』と案内した。まあ、これくらいは自動翻訳機なしでもわかる。

 ビーッ、ビーッという警告音と共に、内側のガラス扉が開き、オレンジの非常灯に照らされた室内が見えた。

 と、真正面に黒い人影が立っている。

 人影?

 いや、その頭部から首にかけて羽根はねつき餃子の羽根のようなでっぱりがあり、両目は赤く光り、薄い口の隙間すきまからチロチロと細い舌が出たり引っ込んだりしている。

『救助隊の諸君、ようこそわが越冬隊基地へ』

 えええっ、怖すぎるよ~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんだか怖そうな雰囲気だなって思っていたら、やっぱり最後に怖そうな人が出てきました(・_・;)  でもまあ、死体じゃなかったから良かったです。 エイリアンのような怪物でなく、チャンと話せばわかる人だっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ