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26 大岡越前の上を行ってやるよ

 いきなり責任者と言われて驚いたが、考えてみれば、確かにこのジュピター二世号はおれの船で、かつ船長キャプテンでもあるから、オーナー社長みたいなものだ。

 これでおれが責任者でなかったら、誰が責任者やねん、という話だが、だったらそれらしいあつかいをしてくれよ。などと言ってる場合ではないな。

「ええと、うーん、そうだな。やっぱり、あれだよ。うん、そうだよ」

 またシャロンがテーブルをたたいた。

「もう、じれったいわね! 船長なら船長らしく、ピシッと決断してよ。でないと、このままじゃ、ぐるぐる周回軌道を回ってるうちに燃料切れで墜落ついらくするか、船内で殺人事件が起きるか、どっちかよ。パッと『おまえは有罪だ』とか、『おまえは打首獄門うちくびごくもん』とか、決めちゃいなさいよ」

「はあ? そんな名判決とか、名裁めいさばきとかは、ドラマとか時代劇の話で、あ、そうか!」

 おれは一度頭の中を整理して、説明することにした。

「以前、テレビでたんだけど……」


 ……大岡越前おおおかえちぜん三方一両損さんぽういちりょうぞんってやっててさ。

 ああ、荒川さんはご存知ぞんじですよね。まあ、聞いてください。

 三両ひろった男が、落としぬしに返そうとするんだけど、相手が意地いじになって受け取らない。

 困って大岡越前に相談したら、大岡越前がポケットマネーから一両出して、拾った男と落とし主のそれぞれに二両渡して、各自が一両損してメデタシメデタシ、って話なんだけど、どう思う?

 だって、大岡越前は、絶対損してるよね。

 相談に乗ってやって、ポケットマネー出して、こんなこと言うとおこられるかもだけど、馬鹿ばかみたいじゃん。

 これで名裁きって、絶対変だよ。

 で、おれは考えた。どうしたら、損しないか、ってね。

 簡単なことじゃん。

 なかったことにすりゃいいじゃん。

 落とし主の男は、三両落とさなかったことにする。

 拾った男は、三両拾わなかったことにする。

 大岡越前は、相談されなかったことにする。

 つまり、初期状態に戻ったことにすればいい。

 これなら誰も損しない。だろ?

 で、今回の件。

 最初に乗船した時の状態に戻すんだよ。

 え? わかんない?

 つまりさ、ドクター三角は仮出獄かりしゅつごくで手錠をされてる。

 でも、一応、おれたちのチームの一員として、協力すると言ってる。

 な? わかるだろ?

 利害関係じゃなく、ドクター三角はメンバーとして進んでそのヒントを教えてくれる。

 はあ? なんだよ、事なかれ主義って。

 だって、誰も損しないんだぜ。

 ドクター三角は仮出獄を取り消されないし、おれたちは無駄足むだあしまなくていいし、マーロン大佐は無益むえき殺生せっしょうをしなくすむ……。


「……これぞ三方損なし、だよ」

 シャロンはあきれたような顔で黙ってしまったが、荒川氏はウンウンとうなずいた。

「わしはいいと思う。大佐はどうじゃ?」

「軍人にとって上官の命令は絶対だ。船長がそう決めたのなら、いなやはない」

 そう言った次の瞬間には、目にもまらぬ早技はやわざでブラスターをベルトのホルスターに落とし込んだ。

 そうなると、注目はドクター三角に集まった。

 口をへの字にゆがめている。

「それじゃ、ぼくは納得できないな。何のとくにもならんじゃないか。いや、まあ、この際だから、よくは言わん。本当なら、相当の礼金が欲しいところだが、そこまでは求めん。金がないなら、品物でもいいが、ないなら仕方ない。せめて、待遇たいぐうだけでも良くして……」

 三度みたびシャロンがテーブルをたたいた。

「もう、いい加減かげんにして! 本当なら、あんたは仮出獄を取り消され、何年も牢屋ろうやに入らなきゃならないのよ! それに目をつぶるのはどうかと思うけど、はらえられないから、こっちは妥協だきょうしてんのよ! ない頭をしぼってこいつがひねり出した解決策かいけつさくなんだから、少しは尊重そんちょうしなさいよ!」

 ちょっとおれに失礼な言い方だろうと思ったが、それより、自分の孫のようなとしのJKに頭ごなしにしかられたドクター三角は、への字になった口の両端りょうはじがくっ付くんじゃないかと思うほど曲げていたが、ついに不承不承ふしょうぶしょうながら首をたてに振った。

「仕方ない。それじゃあ、話してやろう。ただし、この旅の中でぼくがやったことすべてをなかったことにする、という話は確かだろうな?」

 実は、それでいいのか自信がなかったが、ここは演技でも自信たっぷりに答えるしかない。

「ああ、もちろんだとも。大船おおぶねに、いや、大宇宙船だいうちゅうせんに乗ったつもりで安心してくれ」

 ドクター三角はいつもの皮肉なみを浮かべたが、フッと息をいて、話し始めた。

「知ってると思うが、ぼくは越冬隊隊長の四処よんどころ博士の教え子だ……」


 ……だから、博士の考えそうなことは、まあ、だいたいわかる。

 彼の一番のこだわりは、当然、主著しゅちょである『日本勃然ぼつぜん』だ。

 その中に、富士山が世界一の山になるとの記述きじゅつがあったから、最初はその位置がヒントかと思ったが、彼の考え方からすると、ちょっと違う気がした。

 何故なぜなら、富士山は日本一高いが、日本の中心にあるわけじゃない。

 そこで、ハッと気づいた。

『日本勃然』のサブタイトルは、「日本の中心で危機を叫ぶ」だった。

 つまり、日本の中心に当たる場所がヒントになる。

 ところが、実は日本の中心を名乗る場所は、なんと三十か所もあるのだよ。

 だが、ぼくは四処博士の出身地が長野県であることを知っていた。

 と、なると、日本のゼロポイントである長野県辰野町たつのまちしかありない。

 辰野町は、北緯ほくい三十六度、東経とうけい百三十八度にある。

 知ってのとおり経度けいど恣意的しいてきなものだから、この際関係ないとして、自転する天体なら緯度いど一意的いちいてきに決まる。

 よって、ゴエイジャーの北緯三十六度とトワイライトゾーンがまじわる場所が候補地だ。

 当然、これは二か所ある訳だが、昼間の側に基地がない以上、夜明けの方ではなく、日没の方になる。その近辺に着陸すれば、そう遠くない場所に基地があるはずだ……。


「……以上が、ぼくの推理だ。どうかね、現代の大岡越前?」

「ああ、うん。途中よくわからないとこもあったけど、良さそうだ。よし、行こうぜ!」

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なるほど! 騙したり、脅したり、殺したり、罰したりしない、無かったことにする作戦! ドクター三角は罪を逃れ、中野くんたちは着陸点のヒントを得る。 心情的にはチョット、ドクター三角に利があると思うけど、…
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