25 闇夜にカラス、雪にサギって、それじゃ見つからないよ
マーロン大佐に平謝りして赦してもらい、とりあえず顔を洗ってシャッキリ目を醒ました。
指令室に行くと、人工冬眠カプセルに軟禁されているドクター三角は別にして、おれを除く全員が集まっていた。
いや、もう一人、じゃない、もう一匹いない。
「チャッピーは?」
おれの問いには荒川氏が答えてくれた。
「可哀想じゃが、またアーマースーツを嫌がって逃げ回るじゃろうから、ギリギリまで冬眠させて置くことにしたんじゃよ」
「ああ、お気遣いありがとうございます。で、着陸の場所を決めるという話ですが、越冬隊の基地の近くはダメなんですか?」
と、プライデーZが「はい!」と手を挙げた。その時気づいたが、ちゃんと両手とも普通の状態に戻っていた。
「わたしからご説明させていただきます……」
……惑星ゴエイジャーは、白色矮星の周りを離心率ゼロポイントゼロゼロナイン(=0.009)というほぼ真円に近い軌道で公転しています。
これは白色矮星から強い潮汐力を受けている結果でしょうが、そうなると徐々に地球と月のように小さいほうの天体の自転が公転と同期して、同じ面を向けるようになって来ます。
なので、後数億年もすれば、ゴエイジャーの半分は永遠に昼、残り半分は永遠に夜になるのです。
ですが、まだそこまでは行っておらず、公転よりわずかに自転が速いため、非常にゆっくりですが昼夜が交代します。
で、越冬隊の基地ですが、この昼夜の境目である薄明地帯に造られました。
薄明と言っても、美人薄命とは違いますよ。薄い明かりでございます。
閑話休題。ああ、これ一辺言ってみたかったんですよ~。あ、すみません、続けますね。
で、何故トワイライトゾーンが良いかというと、昼の側は白色矮星からの強い磁気嵐に晒されて電子機器がダメになるし、夜の側は本当の極寒地獄だからです。
本来、毎年基地を移転して、常にトワイライトゾーンに留まる予定でしたが、先程調査した限り、トワイライトゾーン内にはもちろん、昼の側にも発見できませんでした。
つまり、夜の側のどこかに、闇に紛れてしまったのです……
「……闇に隠れて生きる。おれたちゃ妖怪人間……」
「ストップ!」
突然歌い出したプライデーZを止めたのは、もちろんシャロンである。
「そこからはあたしが説明するわ。このジュピター二世号だって、真昼側に着陸するのは危険だし、闇夜のカラスみたいな状態の基地に、当てずっぽうで近づけるはずもないじゃない。一旦はトワイライトゾーンのどこかに降りるとしても、あんまり見当違いな場所だと、その後の捜索が大変なのよ」
「なるほど。で、何か当てはあるの?」
「ないから困ってるんじゃないの!」
と、腕組みして聞いていたマーロン大佐が、「ちょっといいか?」と口を開いた。
「あの男なら、何か情報を握っているのではないか?」
荒川氏もポンと膝を打った。
「なるほどのう。あやつが、当てもなくわしらに付いて来たとは思えん。きっと何か知っておるじゃろ。よし、起こしてみようかの」
ということで、ドクター三角を起こすことになった。
カプセルの中で目が開いた瞬間、「今は西暦何年だ?」と聞いて来た。
立ち会っていた荒川氏が笑って教えた。
「心配いらん。あれから一週間しか経っておらんよ」
ドクター三角はホッとした顔になったが、すぐに警戒心を顕わにおれたちを見回した。
「で、何の用だ?」
荒川氏は笑顔のまま、「まあまあ、起きてお茶でも飲みながら話そうではないか」と嬉しそうに助け起こした。
うーん、同世代が他にいないから仕方ないが、また騙されなきゃいいけど。
お茶を飲み、人心地ついたところで、おれたちから代わる代わる質問を受けたドクター三角は、唇を歪めて笑った。
「なるほど。それは困ったろう。ご想像どおり、ぼくは情報を持ってる。が、タダでは渡せないよ」
フッと殺気を感じて振り返ると、マーロン大佐が光線銃を構えていた。
「気にせんでくれ。われは、ちょっと銃の手入れをしているだけだ。まあ、手許が狂って暴発する可能性も、なくはないが」
荒川氏が「これこれ」と割って入った。
「脅しは宜しくないのう。まあ、お金をやる訳にはいかんが、わしらにできることなら、取り引きに応じても良い。何が望みじゃね?」
ドクター三角は狡そうに笑った。
「まず、この旅の間にぼくがやったことは、すべて不問にすること。従って、独房のような部屋に閉じ込めたり、強制的に人工冬眠カプセルに入れたりせぬこと。また、スターポールには一切報告せぬこと。それから、ぼくの待遇は、VIP扱いとし……」
シャロンがバンとミーティングテーブルを叩いた。
「いい加減にしてよ!」
ドクター三角の唇がへの字に曲がった。
「情報が要らないのなら、いいよ。さあ、人工冬眠カプセルに戻してくれ」
すると、マーロン大佐が「おっと、手が滑りそうだ」とブラスターの引き鉄に指を掛けた。
荒川氏が立ち上がり、「双方とも落ち着くんじゃ」と割って入った。
「ここは、責任者である中野船長に決めてもらうしかあるまいのう。中野くん、いや、船長、ご決断を」
「え? おれが決めるんですか?」
見ると、おれとドクター三角以外の全員が頷いている。
ど、どうすりゃいいのさ、このおれは~。




