第7話 五番目の形式だけの妻にされましたが、待遇が良すぎる気がします
アルヴィナ帝国の王宮で目を覚ますと、私はまさかの“五番目の妻”枠に入っていた。しかも“形式だけ”というおまけ付き。
部屋はおとぎ話みたいな豪華さ。天蓋付きベッドに、ふかふかの絨毯。部屋を出れば、迷子になりそうな広さの廊下。
「ルキ様、お気に召さない点があれば何なりと!」
侍女たちは、私の一挙手一投足に目を輝かせている。
お茶は三種類、ケーキも日替わり。
お風呂のお湯加減まで「少しでも冷めたらお取り換えします!」と本気だ。
(いや、気配りすごすぎて逆に緊張する……)
しかも“お妃仲間”の皆さまも、なぜか私にだけ距離が近い。
「ルキさん、帝国の空気は大丈夫?」「お肌つやつやね、なにか秘訣ある?」
――誰も意地悪してこない。むしろ可愛がられている。何これ、逆に怖い。ここの妃達はみんな仲良しっぽい。
そして夜――
ノイル皇太子殿下が、また部屋を覗きに来る。
「ルキさん、今日は快適でしたか?」
「はい……でも、ちょっと過保護すぎません?」
正直、追放されたばかりの身からすると、幸せすぎてソワソワする。
「だって、僕は君の味方ですから」
(いや、その一言で全て許されると思わないでほしい……!)
五番目の妻、しかも形式だけ。
どう考えても“その他大勢”ポジションなのに、なぜかVIP待遇。
もしかしてこれ、帝国独自の“新人歓迎ドッキリ”じゃないよね?
(……まあ、いいか。せっかくの待遇だし、しばらく甘えさせてもらおう)
――そう決意したものの、心のどこかでちょっぴり不安を感じているのだった。