第5話 私を捨てる運命を予言し助けてくれた大臣様に出会う日
重く冷たい扉の向こうから、静かな足音が近づいてくる。
ノイル皇太子に連れられ、ルキは緊張の面持ちで執務室の中へ足を踏み入れた。
そこに立っていたのは、深い皺の刻まれた威厳ある年配の男性――エルディン・ヴァルマー大臣だった。
「ルキ殿かね?」
柔らかな声で問いかけられ、ルキは軽く頭を下げる。
「はい。はじめまして、大臣様。」
エルディンはその瞳に、深い驚きと温かさをたたえていた。
「自動書記の力を持つ者が私以外にもいたとは……興味深い。」
ノイルが話を続けた。
「大臣、この娘を君に紹介したい。彼女は追放された身ながら、その力で国を支えようとしている。」
「確かに、その力は並大抵ではないと聞いている。」
エルディンの眼差しがルキを貫く。
「実は、ルキが危機に陥ったとき、私は未来を見据えこう予言した。『追放された巫女が森に現れ、運命を変える』と。」
ノイルは静かに頷いた。
「予言を頼りに、私は急いで彼女を探しに行った。もし大臣の言葉がなければ、今ここにルキは居なかっただろう。」
ルキは胸が熱くなり、目に熱いものがこみ上げてくる。
「大臣様の予言があったからこそ、私の命は救われました。ありがとうございます。」
エルディンは穏やかに笑みを浮かべた。
「礼を言うのは私の方だ。君の力がこの国の未来を照らす光であると信じている。」
ノイルが力強く言う。
「これからは共に、この国を守っていこう。」
ルキも力強く頷いた。
「はい、よろしくお願いします!」
深まる絆とともに、新たな物語の幕が静かに開いた。